1966(昭和41)年「番の州の埋立て」瀬居島、沙弥島もまだ陸続きではない。[造成面積620ha](坂出市教育委員会提供)
石油の時代
そこへ石油の時代がやってきた。1960年代、日本は中東から大量の安価な石油を輸入し、重化学工業を軸に急成長していった。臨海コンビナートで石油を精製し、電力や素材を生み出し、それを基盤に工業製品を大量生産して輸出を伸ばした。地方の夢は「工場を誘致すること」だった。
国は「新産業都市」政策などで地方の工業化を進め、瀬戸内海沿岸でも水島(岡山)、東予(愛媛)、徳島などが指定された。しかし香川県は、その流れから取り残された。工業用水や用地不足が制約だった。
府中ダムの建設と坂出沖の番(ばん)の州(す)の埋立てには、「工業後進県から脱したい」という香川県の悲願が込められていた。
海が工場に
小学校の担任が、「都会から優秀な子どもが来るぞ。お前たちも頑張れ」と私たちを鼓舞した。当時、大企業の立地は地域の希望そのものだった。
中学生の頃、1970年代初頭には、石油精製、火力発電、造船、化学工場などが集積する臨海コンビナートが姿を現し、夜には無数の灯りが海面に映っていた。瀬戸内海は、漁や塩づくりの海から、豊かさや便利さを支える産業の海へ変わっていった。
海の悲鳴
しかし、高校生になる頃には、豊かさの陰で、全国各地で公害が相次ぎ、連日新聞を賑わせるようになった。そして1974年、高校3年の冬、対岸の水島で重油流出事故が起きた。大量の重油が香川沿岸にも押し寄せ、「瀬戸内海は終わった」と本気で思った。
誰もが豊かさを追い求めていた高度成長の時代。しかし、その足元で、海は静かに悲鳴を上げていたのである。
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