「古」の新化

くらしのテラス アールデザインYOSHIE 一級建築士 村上 良枝

column

2026.07.02

(左)広縁板の床板が小箪笥へ/(右)広縁の解体

(左)広縁板の床板が小箪笥へ/(右)広縁の解体

大正11年築。明治から昭和初期にかけて材木店兼住宅として使われていた古民家の解体現場で、「古材レスキュー」に携わったことがあります。

建物の歴史を聞き取り、内外部や屋根裏の小屋組等を調査したうえで、大工が手壊しで解体。それは、当時の職人による精緻な木組みや意匠に触れられる貴重な学びでもありました。二間一枚の床板(とこいた)や、目の詰まった美しいケヤキ材、ゆらぎのある和ガラス建具など、今ではなかなか出合えない素材も数多く残されていました。

その後、広縁の床板は小箪笥に、違い棚は文机に、書院戸は衝立へと姿を変え、施主様の新たな終の棲家へ。思い出とともに生き続ける家具として生まれ変わりました。

古民家は、かつては築80年以上の建物を指す時期もありましたが、最近は築50年以上とすることが多く、「古」の対象範囲は広がっています。現在の昭和レトロブームが示すように、かつての日常に『新しさ』や希少価値を見出す人が増えているのです。

一方で、全国的に空き家問題は深刻化しており、解体せざるを得ない物件も増加しています。しかし、単なる「スクラップ&ビルド」の時代は終わりつつあります。これからは、「次世代へ引き継ぐもの」「残す価値のあるもの」を、見極めていく必要があると感じています。

建物としての役目を終える瞬間は、その中に眠る価値を未来へバトンタッチするチャンス。古い建物の解体や処分を考える際は、身近な専門家へご相談ください。一見価値がないように思えるものの中にも、次の世代を豊かに彩る奇跡の財産が眠っているかもしれません。

くらしのテラス アールデザインYOSHIE 一級建築士 村上 良枝

写真
くらしのテラス アールデザインYOSHIE 一級建築士 村上 良枝

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
債務整理のとびら 離婚のカタチ 交通事故の羅針盤 メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ