「生き物が好き」を原動力に
人と自然が共存する社会を模索

いであ株式会社 四国支店長 村手 達佳さん

Interview

2026.07.02

いであは「人と地球の未来のために」をスローガンに、建設・環境・情報を軸としてさまざまな事業を展開する総合コンサルタント企業。気象予報と海洋調査からスタートし、高度成長期の公害問題や環境破壊問題をはじめ、時代を先読みした社会課題解決に70年以上取り組んできた。化学・生物・土木からITまで多分野の専門家がそろい、村手さんも生物学のエキスパートとして、インフラと自然の共存を図る技術者の一人だ。

現地調査で生態系を守る

子どもの頃から生き物が好きで、生物を学びたいと早くから心に決めていた。大学ではウニを使って発生の仕組みを研究するかたわら、サークル活動の野鳥の会に熱中。「いろんな場所でいろんな鳥を見て、特に猛禽のかっこよさに魅了されました」。

周囲が教職に進む中、もっと深く生き物に関わる仕事がしたいと、新日本気象海洋(当時)に入社。折しも社会資本整備と環境のバランスに社会的な注目が高まっていた90年代、ダム・空港・道路の建設、干潟造成などのインフラ計画に先立って、現地の生態系、主に鳥類の調査を担当した。

「例えば、人がダムをつくりたい場所とクマタカの生息地は、しばしば重なるんです」と村手さん。食物連鎖の頂点であるクマタカの暮らしが維持できれば、生態系全体のバランスが維持できる目安となる。現地に足を運んでクマタカの営巣地や狩場などを調べ、行動圏内の利用の仕方を把握して「保全が必要な場所」と「人の手が入っても影響が少ない場所」を明らかにし、クマタカの生息と事業の両立を図る提案をするのが村手さんの仕事だ。

同社の報告は環境影響評価の手続きに活用され、計画を一部変更する、クマタカの暮らしを守れる環境を人工的に整えるなど、人と自然が最も調和する方法を模索していく。評価後も保全対策や工事前後の調査は継続し、技術者は長い時間をかけて現地の自然環境と向き合うことになる。「ダムが完成した後も変わらずクマタカが飛ぶ姿を見ると、心が躍ります。人と地球に役立つ仕事をしている実感があります」

生物の調査や解析の手法などは、時代とともに大きく進化している。クマタカの調査も、行動圏を統計的に解析して、「今の営巣地」だけでなく「今後巣をつくる可能性がある場所」まで含めたきめ細かい保全を目指せるようになった。このシステムも、村手さんの経験とアイデアに基づいて開発したものだ。

事業範囲の広さを生かし 四国でのニーズ拡大に意欲

全国の現場を飛び回りつつ、2020年に技術部長として四国支店に異動し、25年に支店長となった。高知にあった支店が今年5月から高松に移り、現在は高松市内に居を構えて、休日は日本野鳥の会香川県支部メンバーと鳥の観察を楽しむ日々だ。

「高校の修学旅行が岡山・香川で、瀬戸内の景色は当時から好きでした。さまざまな企業の支店が集まる香川で、新たなビジネスチャンスを広げたい」。村手さんの主軸は生物だが、企業としては社会基盤の形成と環境保全に関わる調査、分析、予測・評価から計画、設計まで、きわめて広いジャンルに対応できる。「深海」や「DNA」などの分野では最先端の技術開発にも取り組んでおり、産学官問わず四国での多角的なニーズ拡大を目指している。

いであ公式サイト
村手さんが高知市内で撮影したバライロムクドリ(左)と愛媛県で撮影したクマタカ

村手さんが高知市内で撮影したバライロムクドリ(左)と愛媛県で撮影したクマタカ

戸塚 愛野

村手 達佳 | むらて たつよし

略歴
1968年 愛知県生まれ
1992年 岡山大学理学部 卒
    新日本気象海洋株式会社 大阪支店 入社
2001年 国土環境株式会社(社名変更)大阪支店
2006年 いであ株式会社(社名変更)大阪支社
2020年 同 四国支店 技術部長
2025年 同 四国支店長

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