販社同志の競争が激しくなる=トヨタの転換点

香川トヨタ自動車 代表取締役社長 灘波 順一さん

Interview

2009.01.08

少子化と市場の成熟、世界的な景気の低迷が基幹産業自動車業界にも押し寄せている。香川トヨタ自動車(株)は、戦前高松で外車販売を手掛け、1946年、トヨタの販売会社を設立した業界のパイオニアだ。
3代目社長 灘波順一さんは、ますます激しくなる競争に身を引き締める。「市場が狭い地方では販売系列の縮小もあり得ます。これからの自動車業界で生き残れる会社にするのが私の使命です」・・・トップの思いを社員が共有してはじめて会社は強くなるのだ。

トヨタが変わる・販売体制を見直す

品質が良くなって、使用期間が長くなった。社会環境の変化で若者が車に興味を持たなくなって、そのうえ不況が直撃した。自動車市場は1960年代に後戻りしたかのようだ。 トヨタは今年から販売体制を見直す。いまトヨタ店とトヨペット店で販売しているハイブリッド車プリウスを、フルモデルチェンジ(今春予定)と同時に、カローラ店とネッツ店でも販売する。 「2系列でも厳しい競争が4系列になりますから、各社のお客様にどうアプローチしていくかが重要になってきます。値段の競争もありますから、負けることもあるでしょう」。営業マンとお客さんとの人間関係が決め手になる。

※(トヨタの販売チャンネル)
都道府県単位でトヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店の4チャンネルがあり、それぞれ扱い車種が違う。

社員を会社の「顔」に

営業の新入社員に、研修期間中に整備の検定資格を取らせている。「営業マンは、お客さんとの人間関係を作るのは得意ですが、技術的な質問に答えられないことが多いんです。メカニックの知識があれば、お客様に信頼されて営業面でもプラスになります」
外部から講師を招くこともある。「学べば人は変わります。一人ひとりの社員が情報を共有してスキルアップすれば、会社の顔になれます」。平均年齢33歳、若い社員の成長が、3代続いたのれんを支える。

引退する社長の「寂しさ」

1929年、祖父の灘波清平さんがフォードやゼネラルモーターズの販売を始めた。まだ国産車は無かった。「米問屋の養子だった祖父は、養子先の信用で会社を興しました。家が買えるほどの車を1台売るのも大変で、そのうえ故障が多かったので苦労したと聞きました」
先代社長の灘波敬一郎さんは、右肩上がりの自動車事業成長期の経営者だった。「ワンマンで、タフで、いつも前向きで物事に動じない父でした。体調を崩して引退しましたが、仕事一筋で休みの日もあまり家にいませんでした」

2001年経営を引き継いだとき、先代は経営について何も言わなかった。「おれの背中を見ろ・・・というタイプでしたから」
そんな父が変わったと感じたことがあった。「意見を言ったら『文句を言う・・・』と受け止められました。社長であれば従業員の目が自分に向いていますが、身を退くと決まれば次の社長に向きますから、寂しかったのでしょう」

競争激化

トヨタは、他社が販売会社の再編成に追い込まれた1990年代以降も、4系列の販路を維持してきた。「トヨタの販売店は地元オーナーの世襲が多いので、代々のお付き合いで地元企業や個人需要に応えてきました」
そのトヨタが自動車業界の転換点で系列別販売を見直すのだ。ハイブリッド車の需要は増える。やがてガソリンエンジンに代わる次世代車も開発される。自動車はこれからも交通と産業の主役であり続けるが、競争はもっと激しくなる。
その競争に耐える灘波さんの手持ちカードは、若い社員の成長と3代続いたのれんだ。

飛び込み営業

(お話しするのは苦手です…インタビューで)。物静かでシックな印象の灘波さんは、若い頃トヨタ直営の東京トヨペットで、1年3カ月の営業研修中に、飛び込み営業で23台の車を売った。
「ある古物屋さんに飛び込んで、名刺を出したらご機嫌が悪い。『あんたのところは車を売りながら、ほったらかしでけしからん』と怒られました。その方は別会社で、マークIIを買っていました。同じトヨタなのでおわびをして、それがきっかけで通うようになりました。車の話になると、いまの車でいいと言われてあきらめかけましたが、十数回通ってクラウンを買っていただきました」
シャイだから営業に不利だと思ったことはなかった。誠意が伝われば信頼される。謙虚にお客様の声を聞いてスピーディーに対応する・・・香川トヨタの基本だ。

灘波 順一

香川トヨタ自動車株式会社

住所
香川県高松市番町2-5-14
代表電話番号
087-851-7151
設立
1946年
社員数
214人(2007年2月現在)
事業内容
◾新車・中古車ならびに部品・付属品の販売及び修理全般
◾レクサス車の販売ならびに整備
◾カーリース
◾損害保険、生命保険の販売・代理店業務
◾auの販売を主とした情報通信機器販売
資本金
4000万円
地図
確認日
2009.01.08

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