時間と空間

公益財団法人イサム・ノグチ日本財団理事長 和泉 正敏

column

2018.04.05

タイム・アンド・スペース

タイム・アンド・スペース

彫刻家イサム・ノグチは、猪熊弦一郎画伯との交流もあり、1964年再度香川を訪れました。金子知事は石の産地を案内し、石のアトリエに立ち寄られ、ノグチ先生に紹介くださいました。

当時はプロペラ機で、羽田や伊丹から高松・林空港に降りる際、瀬戸内海の上空を低くゆっくり飛んできて、周囲の景色もよく見えました。

時折雨・霧などで欠航し、ニューヨークから来るには、連絡船も長い時間でした。

ノグチ先生は風のように現れ、四国の寄寓の地に灯りをともすように、住居として丸亀から入江邸を移築し、石積による円形のアトリエを作りましたが、与えられた牟礼の地を生かし、聖地として、周囲の環境が良くなることも願っていました。
イサム・ノグチ庭園美術館

イサム・ノグチ庭園美術館

各地からノグチ先生に選ばれた石が集まり、作品作りに没頭され「黒い太陽」「モモタロウ」「エナジー・ヴォイド」など世界でも珍しい、石による大作の抽象作品を創りました。また、生花・草月・ロビー・石庭、最高裁判所・噴水など初めて見る石の空間を生み、緊張した牟礼のアトリエ、マチュピチュの思いを馳せた庭が完成し、札幌に壮大なモエレ沼公園を残されたのです。イサム・ノグチの場として多くの人に感銘を与えていますが、ヨネ・ノグチ同様イサム・ノグチは芸術を通して日米の架け橋となりました。
88年イサム・ノグチに新高松空港前に作品を作る話が持ち上がり、11月17日の誕生日にあわせ模型が完成しました。「タイム・アンド・スペース」と名付けられたこの作品からは、瀬戸内海、讃岐平野、屋島、五剣山が見渡せ、地元の石と青い空とのコントラストが素晴らしく、まさに空海の世界でもあります。


建築家バックミンスター・フラーは、イサムは20世紀の初め、飛行機と共に生まれ育ったと書きました。空に興味を抱き、リンドバーグに憧れていたノグチは、パリで迎える奇縁を持ち、世界を旅し、各地に幸を届けたのです。

ハワイでリンドバーグの愛した地に立たれたイサム・ノグチは、人生の最期に新高松空港開港を迎え、世界への窓が開かれたプレゼントとなりました。

「20世紀の総合芸術家 イサム・ノグチ-彫刻から身体・庭へ-」展

【と き】4月7日(土)~6月3日(日)
【ところ】香川県立ミュージアム(高松市玉藻町5-5)
【入場料】一般1000円、高校生以下・65歳以上・身体障害者手帳等をお持ちの方無料

公益財団法人イサム・ノグチ日本財団理事長 和泉 正敏

略歴
1938年 牟礼町久通に生まれる
1953年 石の仕事を始める
1964年 「石のアトリエ」を設立
    イサム・ノグチと出会い、
    以後25年間石彫制作に協力
1969年 シアトル美術館 彫刻「黒い太陽」*
1974年 最高裁判所 彫刻「噴水」*
1984年 土門拳記念館 中庭*
1987年 メトロポリタン美術館 彫刻
    「つくばい」*
1989年 高松空港モニュメント 彫刻
    「タイム&スペース」*
1991年 カナダ大使館、丸亀市猪熊弦一郎現代
    美術館
1992年 札幌 彫刻「ブラックスライドマントラ」*、
    郡山市立美術館
1993年 播磨先端科学技術センター
1994年 東京都現代美術館、京都コンサートホール
1995年~ ジャポネクスピア9(サンフランシスコ)にて
     ギャラリー展を開催
     豊田市美術館
1996年 東京オペラシティ、札幌モエレ沼公園
    「プレイマウンテン」*
1997年 新国立劇場
    国営讃岐まんのう公園・昇竜の滝
2003年 ジャポネクスピア9(サンフランシスコ)にて
    4回目の特別展オープニング
2005年 京都迎賓館 大滝石工事
2007~08年 サラトガ
    台湾・国立故宮博物院 前庭石彫「無為・無不為」
2009年 東京・経団連会館、観音寺市斎場
*印は、イサム・ノグチの作品
写真
公益財団法人イサム・ノグチ日本財団理事長 和泉 正敏

公益財団法人イサム・ノグチ日本財団理事長 和泉 正敏

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