貴重品管理システムを構築 挑戦続ける技術者集団

宝田電産 常務取締役 岡田 博さん

Interview

2012.02.16

三豊市財田町の宝田電産株式会社は、配電盤の製作工場として創業。受注品製作で培った技術力を基礎に、1995年から自社製品の開発に乗り出した。

これまでに印刷物欠点検査のための装置や、バイオ苗生産装置などをつくり上げてきた。中でも鍵や宝石、書類など貴重品を一括管理するシステムは、個人情報の保護や防犯が重要視される今、注目を集めている。

下請けからの脱却

石田金属工業株式会社(現・石田エンジニアリング)の財田工場としてスタートした宝田電産は、83年に本社から独立。電力の分配を行う各種配電盤を製造し、技術力を高めてきた。配電盤は、事故が起きた場合でも作業員が感電などけがをしないような仕組みが求められる。電気は目に見えないという怖さがあるため、製品には高い安全性が必要だ。

「操業後、社員それぞれの心に、自社製品がほしいという気持ちがあり、『下請けからの脱却』を目指して、新製品開発に取り組んできました。基礎があるから開発もできるんです」と話すのは、常務取締役の岡田博さん。配電盤や制御盤といった受注品の製造に加えて、95年から自社のオリジナル製品の開発を始めた。

最初に取り掛かったのは、印刷物の不良箇所を検査するための「枚葉印刷欠点検査用搬送装置」だ。「エアー吸着ドラム」の開発で、1時間当たりの紙送り量を増やし、検査の効率化に成功。98年に初号機を出荷した。これを機に、機械の運転や制御などにコンピューターを導入し、高性能化や自動化、省力化を図る「メカトロニクス」の分野へ。

最大657点を一括管理

2002年に始まった貴重品管理システムの開発は、ビル管理会社の要望がきっかけだった。ビルの管理では、テナントなどのたくさんの鍵を扱う。この管理方法が悩みの種だった。  

宝田電産が考案したのは、貴重品管理システム「SPrison(スプリゾン)」。収納用の小箱を数列配置し、箱ごとに施錠・開錠機能を設けた。タッチパネル部分に個人番号と暗証番号を入力すると、制御部の個人データと照合され、必要な小箱の開け閉めができる。内部のシステムメモリーに取り出しと返却の記録が残るため、「いつ、誰が操作したか」の管理が可能に。

内蔵バッテリーの標準搭載で、停電時でも操作できる。52点から最大657点まで貴重品の一括管理ができ、鍵のみならず、宝石や薬品、文書などあらゆる種類のものに対応する。小箱の中にものが入っているかどうかは、機械が質量や厚みで感知。一般的にものを感知する仕組みには、センサーが使われることが多いが、機械であれば、同様のコストで寿命が長い。「薬品だと、残量まで分かりますよ」と岡田さん。

標準のシステムに加えて、オプション機能も充実している。本体とパソコンをLANで接続し、遠隔監視、管理。開錠・施錠の際の個人番号入力を、磁気カードや指紋での認証に変更することも。小箱の寸法や材質もユーザーの要望に応えられる。使用目的に合わせて、オーダーできるのが利点だ。

産学官でロボット開発

「環境に配慮して、製紙会社も原料を自社でまかなう流れに。原料となるユーカリを、培養する装置が必要になりました」。県内装置メーカーの誘いに応じ、香川大学と香川県産業技術センターとの産学官共同研究が始まった。

開発したのは「バイオ苗生産装置」。柔らかい新芽も機械でつかむことができる。成果が認められ、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」に採択された。

「柔らかいものを機械でつかむ技術は、布の取り扱いにも応用できそうです」。積み重ねてきた技術は、とどまることなく進化を続けていく。

宝田クオリティ

「昨日と同じことをするのは作業。昨日とは違うことをするのが仕事。人が仕事を育て、その仕事がさらに人を育てる。そう思って今までやってきました」と岡田さん。今後課題となるのは、ものづくりの神髄を次の世代にどう受け渡していくか。

トップの方針により現在、社内各部門の代表者が集まり、ISO9001からヒントを得てオリジナルの「TQMS(宝田クオリティマネジメントシステム)」を構築中だ。「生き残っていくには、変化に耐えられる会社づくりが必要です。30年間の技術を引き継ぎ『人財』を育てる。仕事がどれだけ社会に貢献できているかを、問い続けていきたいですね」

TQMSは、来年からの運用を目指す。宝田電産は、昨年末上海で新会社を設立した。グローバル化も視野に入れ、さらなる高みを目指して新たなスタートを切る。

岡田 博

宝田電産株式会社

住所
香川県三豊市財田町財田上1335番17
代表電話番号
0875-67-3125
設立
1940年
社員数
83人
事業内容
各種配電盤、制御盤製作及び現地調整、枚葉印刷物の欠点検査用搬送装置製作及び現地調整、貴重品管理システム製作及び現地調整、産業用ロボット部品製作・据付工事及び搬送システムの保守
沿革
1940年 石田金属工業所 創設
1950年 石田金属工業株式会社
    (現・石田エンジニアリング株式会社) 設立
1980年 丸亀出張所 開設
1981年 丸亀出張所を統合し、財田工場 発足
1983年 石田金属工業株式会社より分離独立
宝田電産株式会社 設立
2011年 上海に合弁会社 上海宝貴電気設備有限公司 設立
地図
確認日
2012.02.16

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