おかげ様で120年。引き継ぎ、受け継ぐもの

高畑精麦 代表取締役社長 高畑 光宏さん

Interview

2008.07.03

瀬戸内海沿岸は少雨と日照を好む麦の栽培が盛んだった。1888年(明治21年)、麦・米などを扱う食料卸問屋として善通寺で創業した。以来120年、(株)高畑精麦は大麦と共に歩み続けている西日本トップクラスの精麦メーカーだ。
1950年代後半、米の代用として消費されていた100万トンの大麦が、飽食の時代で30万トンに減った。香川県に40数社あった精麦業者が3社になった。3代目社長高畑皓一さんが、味噌や焼酎の醸造用原料に活路を開いて生き残った。そして120年継続、発展してきた会社は4代目の高畑光宏さんに引き継がれ。

120年続いた理由

光弘さんは申し訳なさそうに言った。「よく聞かれますが当たり前のことしかやっていない。その時々の社員に恵まれたんでしょうね。そうとしか言えないんですよ」。
時代の流れに少しだけ早く乗って、お客様ニーズに応じてきた。当たり前のことを、その時々に悩みながらやってきた。当たり前が積み重なって120年会社が続いた。
営業にノルマがない。目標は1年1社の新規開拓だ。「値段で取ると値段で取り返される。信頼、信用で得たお客様は長いおつき合いができる」。先代社長の信念は社風になった。
「何かの縁で会社に入った社員を大切にしたい。どうすればそれが出来るかいつも自問自答しています」。親子2世代社員が何人もいた。いま営業の若い社員はおばあちゃんも社員だった。
「地元にご愛顧を頂いて、今日まで会社が続けられたと思っています」。お客様と社員と、地元とも長いお付き合い。先代社長が育んだ伝統だ。

先代との経営スタイルの違い

先代社長は会議が嫌いだった。「必ず担当者と話して判断します。40年間経営にたずさわってきた先代に出来ても、私は会議なしで社員の考えや気持ちを一つにすることは出来ません」。
経営環境は変わる。人事評価制度や給与体系も変えた。ISOを取得し、生産システムを変え、工場や本社も移転した。懸案だった飼料事業から撤退もした。「前のやり方が良いという意見が必ずありますが、改革にトライします」。成否はその時点では解らない。間違っていたら元にもどせば良い。

オーダーメード精麦

「総売り上げの9割以上を占める焼酎・味噌メーカー様向け精麦は先代たちが開拓しました」。焼酎メーカーや味噌メーカーは品質や価格の競争で機械化が進む。「どのお客様の工場にも同じ機械が並んでいるわけではありません。焼酎・味噌の味が違うように規模も特徴も異なります」。だからメーカーごとに原料は独自で均一な品質が要求される。「水分含有率、表面加工、品種など出来るかぎりお客様のニーズに合わせます」。お客様ごとのオーダーメード精麦加工だ。

農家と組んで国産大麦を増やす

大麦の輸入価格が2倍近くになった。「安定確保が難しくなりました。国内生産を増やすために農家の方と一緒になって農業にかけてみたいと思います」。
企業は小さな努力を積み上げ、厳しい競争を勝ち抜いて今がある。その視点で見ると農業はまだ改善する余地がありそうだ。
「現在、弟には農家の方から麦づくりを学んでもらっています。農繁期を外せば労力は余りかからないので、暇なときは会社の仕事に戻ります」。担い手不足で放置された休耕田には雑草が生えている。
「農家の方は、暇な時期も労働力が固定化されるため生産コストが上がりがちです。企業と手を組めば労働力を工夫出来ると思います」。光宏さんの着想が国産の麦を増やすきっかけになりそうだ。

経営移譲のタイミング

先代社長と仕事をしてきた社員が多いと、新社長にとってやりたいことの阻害要因になるかもしれない。
「親父は28歳の時に、2代目社長が亡くなって社長になったんです。親子で面と向かってそんな話はしませんが、親父が社長になったときに困ったことがいっぱいあったんじゃないでしょうか」。
先代社長時代の社員がおおかた定年を迎える時期に、しかも事業の継承に必要な少数の人材は残るタイミングで、先代社長は4代目に経営を引継いだ。

高畑 光宏|たかばたけ みつひろ

略歴
1965年 善通寺市出身
1984年 丸亀高校 卒業
1988年 明治大学商学部 卒業
     株式会社J-オイルミルズ 入社
1994年 株式会社高畑精麦 入社
2006年 代表取締役社長

株式会社高畑精麦

住所
香川県善通寺市吉原町2392-1
代表電話番号
0877-62-2323
設立
創業1888年2月15日
事業内容
精麦・飼料製造業、小麦粉・製麺販売業、倉庫業 他
資本金
4,000万円
従業員数
30人
地図
URL
http://www.takabatake.co.jp
確認日
2020.09.10

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