心に残る黄金色の麦畑

讃岐はだか麦本舗 店主 高畑 実代子さん

Interview

2015.12.17

「夕日に照らされる穂の美しさに見とれて、毎日時間を忘れて眺めながら帰っていたのが始まりなんです」。高畑実代子さん(40)は、麦との出合いは感動的だったと話す。家から小学校まで約1キロの道のり。その道の両側が麦畑だった。
東京の大学に進学し、香川へ帰って来たのは10年ほど前だ。父が経営陣の一人である高畑精麦に入社し、梱包材を整理したり麦を計量したりといった仕事から始めた。同社は、みそや焼酎など食品の原料となる大麦を精麦加工するのが主な業務だ。品質管理などいろいろな仕事を覚えるうちに、自分がやるべきことは何なのかと考えるようになった。

麦畑の減少に危機感を覚え、何とかしなければとの思いがあった。子どもの頃に見た美しい風景は、はだか麦だったのだとも知った。大麦のうち、麦を包む皮がはがれやすいものをはだか麦と言う。香川県では、はだか麦の生産が盛んで収穫量は全国2位を誇る。生まれたまま、飾らない、ピュア、力強さ・・・。高畑さんは、はだか麦に何色にでも染まるような魅力を感じた。

昨年12月に会社の一事業として、県産はだか麦を専門に扱う「讃岐はだか麦本舗」を立ち上げた。今年5月に裸玄麦、裸丸麦、裸押麦の3種類の商品を発売。商談にも出向き、県内では栗林庵やまちのシューレ963、県外では東京の高級スーパー紀ノ国屋などで取り扱われている。裸玄麦は大麦の栄養素を出来る限り残したもので、香ばしさと面白い食感が特長だ。丸く削り込んだものが裸丸麦で、すっきりとした甘みがある。裸押麦は、麦ごはんでなじみのある平らな形をしている。

麦ごはんはもちろん、スープの具材として使ったり、もち米と一緒に炊いておはぎにしたりと、味わい方もいろいろと楽しめる。「香川のはだか麦を世に出して価値を高める。そして、生産者の方に作っているものがこんなに求められているんだと実感してもらう。どんどん作ろうじゃないかという良いサイクルが出来たら」。大麦には食物繊維が玄米の3倍、白米の20倍含まれていると言われており、健康食品として今後ますます注目を集めそうだ。

11月6日に1800本限定で発売した「裸祭」は、老舗酒造である西野金陵とのコラボレーションで誕生した麦焼酎。はだか麦と、2001年まで総本山善通寺で開催されていた「はだか祭り」の「はだか」を掛けたネーミングだ。「地元でも祭りの中止を惜しむ声が上がっていたので、違う形でなら復活させられると考えました。来年も引き続き製造・販売したいですね」
10月に大筋合意が成立した環太平洋パートナーシップ(TPP)協定も無関係ではない。輸入麦については、事実上の関税であるマークアップ(売買差益)が、発効後9年目までに45%削減される。国産麦の販売価格は影響を受ける可能性がある。「環境が変われば不安になると思います。でも、どこに向かおうとするのかを忘れなければ、大丈夫だと思うんですよ。麦のポテンシャルを信じて、ぶれずにやり続けるしかありません」

11月、3種類のはだか麦商品は大麦の認知度向上と消費拡大に貢献するとして「フード・アクション・ニッポンアワード2015」で、商品部門の優秀賞を受賞した。

「地域文化の継承は、そこで生まれた人間に責任があるように思います。今まで伝わってきたものを途切れさせちゃいけない。讃岐平野に、黄金色のじゅうたんを敷いたように麦畑が広がれば」。香川では麦を食べるのが当たり前。そんなふうに、はだか麦を暮らしに浸透させることが目標だ。高畑さんは、食べる人たちの心にも、輝く麦畑のような豊かさが広がってほしいと願う。

高畑 実代子 | たかばたけ みよこ

1975年6月 善通寺市生まれ
2000年3月 国立音楽大学 卒業
2004年3月 株式会社高畑精麦 入社
2014年12月 讃岐はだか麦本舗 立ち上げ
写真
高畑 実代子 | たかばたけ みよこ

株式会社高畑精麦

住所
香川県善通寺市吉原町2392-1
代表電話番号
0877-62-2323
設立
創業1888年2月15日
事業内容
精麦・飼料製造業、小麦粉・製麺販売業、倉庫業 他
資本金
4,000万円
従業員数
30人
地図
URL
http://www.takabatake.co.jp
確認日
2020.09.10

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ