水産物を独自加工 成長し、世界へ

FGROW JAPAN 社長 船田 裕亮 さん

Interview

2024.04.04

高松市庵治町のFGROW JAPAN

高松市庵治町のFGROW JAPAN

本当に美味しいものを届ける

船田裕亮さん(44)が率いるFGROW JAPANは、水産物を中心とする総菜メーカーだ。「主につくっているのは『寿司ネタ』です。ホタテの貝柱や魚卵、海老やタコなどを海外の産地から輸入。様々な加工を施して、全国の回転寿司チェーンやスーパーに卸しています」

日本の食文化としてすっかり定着した回転寿司。だが実は、“寿司ネタをつくる会社”は国内にあまりないそうだ。「低価格競争が激しく、大量生産でコストを抑えても採算が取れない。ほとんどの会社が海外にシフトしていきました」

“安さ”で挑んでも長続きはしない。デフレ下で生き残るために船田さんが重きを置いたのは、「付加価値」と「本当に美味しいものを届けること」、そして「安売りせず、ちゃんとした値段で販売すること」だった。

卸先の回転寿司店が省力化できるよう、寿司ネタを「シャリに“ただのせるだけ”」、「ご飯に“ただ混ぜるだけ”」の形まで加工したり、フードロスも減らせるよう、それぞれの店舗ごとに最適な分量で小分けにして納めたり、他社がやらないレベルでの小ロット生産をしたり……「お客さんの要望に最大限応えながら、『売れるものをつくる』という精神で商品を開発しています。特に海老の寿司ネタ加工では、おそらく国内シェアNo.1じゃないですかね」。船田さんは力強く語る。

“海老”に魅せられて

様々な水産物を扱うが、中でもお気に入りがある。「海老」だ。もちろん味も好きだが、「和でも洋でも中華でも何でもいけます。誰ともケンカしないし、みんなと仲良くできる。主役にも脇役にもなれる。これって、すごくないですか?」。古来から、長寿の象徴ともされる縁起の良い食材でもある。「知れば知るほど面白い。ハンバーガーやスナック菓子など、海老と名がつくものは全て食べてみないと気がすまないんです」と笑顔で話す。
海老乃家の「霜降り海老ステーキ+むき海老」ギフトパッケージ

海老乃家の「霜降り海老ステーキ+むき海老」ギフトパッケージ

その情熱から4年前、海老の加工品を販売する専門のECサイト「海老乃家(ルビ:えびのや)」を立ち上げた。「むき海老」や「海老ステーキ」など独自の加工を施した、船田さん曰く「海老の価値観を変える」ユニークな商品がずらりとラインナップされている。

昨年末には、海老乃家が「講談社」とコラボした。「海老と言えば海老フライが子どもに大人気。子育て中のママさんが読者のファッション誌と、狙いが一致したんです」

人気の女性誌「with class(ルビ:ウィズ クラス)」とのタッグで生まれたのは“揚げない天然海老フライ”。「油を使っての揚げものは大変です。そこで、オーブントースターで“焼く” 海老フライを開発。海老の殻から抽出した海老オイルを混ぜているのでカラッと“揚がり”ます。本当に揚げるとさらにおいしいので、2WAYで楽しんでほしいですね」
陸上養殖している車海老

陸上養殖している車海老

さらに、講談社が運営する女性向けウェブマガジン「mi-mollet(ルビ:ミモレ)」とは、霜降り海老ステーキ、海老チリソース、トリュフなどを詰め合わせた高級ギフトセット「大切なひとへ 美味しさのラブレター」を共同開発。これらのコラボ商品は、ともに大好評だ。「例えばチョコレートならゴディバ、カフェならスタバ……そういう風に、『海老なら海老乃家』と言われるような、海老のNo.1ブランドに育てたいと思っています」

一昨年からは、車海老を10㎡ほどのスペースで陸上養殖する、新たなシステムユニットの実証実験もスタートさせている。

“人が幸せになる仕組み”つくる

「世界的に見ると水産業は成長産業。水産物は、肉よりCO2の排出量が少なくヘルシーだと注目されていて、どんどん値上がりしています」

FGROW JAPANは一昨年、「ハラル認証」を取得した。「ハラル認証」とは、豚やアルコールなどイスラム教で禁じられているものが、製品やサービスに含まれていないことを保証する制度で、「ハラルマークがあれば、イスラム圏で『安全・安心な製品』だと認識され、購入する際の判断材料になります」。イスラム教徒は世界の人口の4分の1を占め、今後も増えていくと見られている。「海外では日本食が大人気で、寿司の認知度も高い。イスラム圏への輸出など、今後は“対世界”を目指していきます」
「海老なら海老乃家」!No.1ブランドに育てたい

「海老なら海老乃家」!No.1ブランドに育てたい

前身は、漁師だった義父が2001年に創業した「藪水産」。妻から「父を手伝ってほしい」と請われ、24歳で入社した。「最初は分からないことばかり。でも、商売は嫌いじゃなかったですね」

1年前、社名を変えた。食(Food)、将来(Future)、焦点(Focus)の頭文字「F」に、発展・成長を願って“GROW”を付け、さらに「世界を見据えて」“JAPAN”を加えた。

「私は、この会社を使って『人が幸せになる仕組み』をつくりたい。会社が儲かって給料が上がる。働き方が良くなる。ワクワクするような仕事がある。そして、私たちがつくったものを美味しいと思ってもらえる……そんな幸せを追求することが、一生の中で私がやりたいことなんです」

篠原 正樹

船田 裕亮 | せんだ ひろあき

略歴
1979年 善通寺市出身
1998年 高松北高校 卒業
2002年 山梨学院大学法学部 卒業
2003年 株式会社藪水産(現FGROW JAPAN)入社
2021年 FGROW JAPAN株式会社 代表取締役 CEO

FGROW JAPAN 株式会社

住所
香川県高松市庵治町6393番地45
代表電話番号
087-871-1910
設立
2001年6月(株式会社藪水産)
社員数
60人(グループ)
事業内容
①水産物を中心とした食品製造業
②食品販売業
関連会社
株式会社F&T COMPANY
株式会社FGROW
地図
URL
https://fgrowjapan.com/company/
確認日
2024.04.04

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