ものづくり支える「トータルエンジニアリング」

カワニシ 社長 川西 弘城さん

Interview

2023.11.02

さぬき市末のカワニシ営業本部・志度工場

さぬき市末のカワニシ営業本部・志度工場

“机上の空論”にしない

カワニシの事業の柱は二つある。一つは、香川が誇る世界有数のクレーンメーカー・タダノへの、200アイテムを超える高性能な部品の供給。もう一つは、ガスタンクや数百℃の鉄の塊など大きなものを運ぶ設備や、様々な業種・業界の製造ラインを自動化・省力化する設備の提供。つまりカワニシは、“日本のものづくり”を支える、縁の下の技術者集団だ。「重いものを運ぶなど人がやったら大変なことを手助けしたり、工場の製造ラインがスムーズに稼働するようサポートしたり。『コレをつくった』という成果物は説明しづらいですが、この国の産業を土台で支えているという強い自負があります」。社長の川西弘城さん(53)は胸を張る。

カワニシは、全国の産業機械メーカーやプラントメーカーから次々と声が掛かり、あらゆる製造設備を提供している。選ばれる最大の理由は「トータルエンジニアリング」にある。

「私たちは“設計するだけ”“つくるだけ”ではありません。お客さんが困っていることに対する提案から始まり、計画、製造、据付、試運転にアフターフォローまで全部やります」
昨年7月に稼働を始めた造田工場=さぬき市造田是弘

昨年7月に稼働を始めた造田工場=さぬき市造田是弘

昨年できた造田工場は、長さ87㍍、幅20㍍の広大な空間が特徴。川西さんの念願だった“組立専用”工場だ。

マレーシアの工場に納める、自動車部品の製造ライン設備をつくることになった。資材を運び、現地でラインを組み立てるのが一般的。だが一度、“組立専用工場”で設備を組み、「実物で試運転をしてみました」。結果、現地でのトラブルは一切なく、部品製造ラインはスムーズに稼働を始めた。「シミュレーションすることで様々な問題点を事前に解決できた。納入時には我が社の若手スタッフも現地に入り、据付までをフォロー。たくましく成長して戻ってきました」。win-winに終わった海外取引を川西さんは嬉しそうに振り返る。
「この図面で設備を組んでほしい」。取引先とのよくあるシーン。だが、「絵が描けるからモノになるわけではないんです」

図面上は成り立っていても、現場には様々な事情がある。このやり方だと遠回りになる。完成しても使い勝手が悪い……。「“机上の空論”にならないよう、本当にモノになるための提案や設計を行う。『使うまでを見据えたものづくり』が私たちの信条です」

「傍(はた)を楽(らく)に」

カワニシが手掛ける鋳造砂処理プラント

カワニシが手掛ける鋳造砂処理プラント

「ありがとう」が原動力―

 カワニシが掲げる企業理念だ。この『ありがとう』には決して忘れることのない、川西さんの強い思いが込められている。

 カワニシは、タダノの技術者だった父・裕さんが独立し1964年に創業。世界的企業のサプライヤーとして技術力を磨き、成長してきた。
「本当は継ぐ予定はなかったんですけど……」。川西さんは進学した東京で大手プラントメーカーに就職。大型プラント建設などを手掛け、順調に出世もし、そのまま骨を埋めるつもりだった。しかし、家庭の事情で急きょ帰郷することに。2006年、36歳で家業に入った。

「いろんな失敗をしてしまったんです」

社長になる直前、香川に戻って10年程が経った頃、川西さんはもがき苦しんでいた。「東京の第一線でやっていたという変な自信があったんですかね……」

業績を伸ばせば社員は幸せになる。理屈が通っていれば社員はついてくる。「考え方が凝り固まっていました」。スケジュールが厳しい仕事などを無理やり取ってくる。社員にきつくあたる。そして、一人カッカして怒る日々……。「利益を上げることばかり考えていました。フタを開けてみれば赤字の仕事になっていたり、社員も疲れ切って労災が起こったり。辞めていく人も出てきて……」

精神的にも追い詰められていたある日、父に聞いてみた。「親父はどんな会社にしたかったの?」。答えは明快だった。

「社員が周りの人に『一緒にうちの会社で働かないか?』と誘うような会社や」

川西さんは「自分に欠けていたのはコレだ」と気づかされたと振り返る。「もちろん利益や、会社を大きくすることも大事。でも私がやるべきは、社員が仕事にやりがいを持てる環境をつくることだったんです」
「ありがとう」を原動力に、傍(はた)を楽(らく)にしたい

「ありがとう」を原動力に、傍(はた)を楽(らく)にしたい

『働くこと』とは―

川西さんは「傍(はた)を楽(らく)にすること」だと話す。「決して仕事だけじゃない。友達、家族、道行く人……そばに困っている人がいれば手を差し伸べたいですよね」。そして、こう続ける。「困りごとが解決したら『ありがとう』と言ってもらえる。すべてが『ありがとう』に繋がるんです」

今後は、人手不足に悩む企業を支える自動化・省力化設備にも力を入れていきたいと口調を強める。「少子高齢化やコロナで社会には閉塞感が漂っている。でも、社員たちにはそれを吹き飛ばす積極的なチャレンジをどんどんしてほしい。失敗してもいい。その先にある『ありがとう』を力に、日本のものづくりに貢献していきたいですね」

篠原 正樹

川西 弘城 | かわにし ひろき

略歴
1970年 高松市出身
1989年 大手前高松高校 卒業
1995年 工学院大学大学院機械工学専攻修士課程 修了
     プラントメーカー勤務を経て
2006年 株式会社カワニシ 入社
2013年 専務取締役
2017年 代表取締役

株式会社カワニシ

住所
香川県さぬき市末1236-28
代表電話番号
087-894-9411
設立
1964年12月10日
社員数
73人
事業内容
移動式油圧クレーン部品製造、各種省力化機械設計制作
工場
志度工場、春日本社工場、春日第二工場、造田工場
地図
URL
https://www.kawanishi-st.co.jp/
確認日
2023.11.02

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