博物図譜に見る讃岐の野菜 ~ダイコン~

野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸

column

2022.03.03

香川県指定有形文化財「写生画帖 菜蔬 表 35」 高松松平家歴史資料(香川県立ミュージアム保管)

香川県指定有形文化財「写生画帖 菜蔬 表 35」
高松松平家歴史資料(香川県立ミュージアム保管)

1年間にわたり、「高松松平家博物図譜」を芸術の視点ではなく、食文化の視点から読み解き、当時、香川県に暮らしていた人は、どのような野菜や果物を食べていたのかを考察させていただきました。

博物図譜を読み進めるに当たり、収録されている野菜や果物は、当時、一般的に利用されていたものだけではなく、国外から日本にもたらされた品目も漏らさず描写するなど、当時利用されていた品目を遍く掲載しよういう編集者の努力も垣間見ることができました。
また、大根の絵によく見られる、根(可食部)と花を合わせて描写することで、季節により姿を変える植物について、植物形態学的な視点から、植物の特徴を捉えようとする意図もうかがえます。

そして何より、当時利用されていた野菜や果物を遍く収集し描写することで、図らずも、当時の食文化を色濃く反映した図録となっていると感じます。

さて、香川県の食卓では「夏のナスビ、冬のダイコン」と言われるほど、この2つの野菜は重宝されてきました。特にダイコンについては、秋から春にかけて利用することが可能であることから、煮物、漬物、酢の物など、冬場の食卓には欠かすことのできない食材であったと伝わります。ダイコンについては収録されている点数も多く、当時、非常にたくさんの品種が栽培され、利用されていたことがわかります。ただダイコンと言っても、品種によって、漬物に適したもの、煮物に適したもの等、特徴があるのですが、これらダイコンをどのように調理していたのかまでは、慮ることができないのが残念なところです。


この1年間で取り上げられていない品目がまだまだありますので、今後、植物学や食文化の視点で掘り下げていくと、埋もれていた文化が浮き彫りになるかもしれません。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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