子どもたちの幸せを 一日一日積み重ねていく

チャイルドケア二四 社長 梶尾 裕子さん

Interview

2022.08.18

高松市林町の認可保育園「にこにこ保育園」

高松市林町の認可保育園「にこにこ保育園」

保育者ができる「4つ」

子どもたちの元気な声が絶え間なく響く。香川県内で保育園や学童保育など直営10カ所と、事業所内保育所3カ所の合わせて13施設を運営するチャイルドケア二四。先月、設立20年の節目を迎えた。「大変なことの連続だった。でも、大変だったことって、あまり思い出せないんですよね」と社長の梶尾裕子さん(57)は微笑む。「いい保育者仲間に恵まれ、ご縁のあった子どもたちや保護者さんと一緒に走り抜けてきた感覚です」

めざしてきたのは「目の前の子どもを幸せにする」こと、ただそれだけだ。そのために保育者ができるのは「4つしかない」と梶尾さんは話す。
「どろんこあそび」に夢中になる子どもたち

「どろんこあそび」に夢中になる子どもたち

1つ目は『待つ』。子ども一人一人の興味や能力はもちろん違う。「あれはダメ、これもダメ」と、大人が勝手にイメージした「いい子」の型にはめたり押しつけたりはしない。「桜の木に向かって『ヒマワリになれ』と言うのと同じですから」

2つ目はタイミングが来たら精一杯『協力する』。「愛情や関心を持って“待って”いれば、そのタイミングを逃すことはありません」

3つ目は子どもが達成できた時、一緒になって『本気で喜ぶ』

そして4つ目は『失敗を保証する』。「同い年の○○ちゃんはできるのに……」。親からそう言われて育った人も多いだろう。「他の子がどうかなんて関係ありません」。子どもは失敗を繰り返しながら楽しさや興味を見つけ、どういう人たちの中で、どう生きていくかを模索し、成長していく。「たとえ思い通りにいかなくても、残念な気持ちを味わった後に『まっ、いっか』と立ち上がる。その力が“幸せに生きる力”に繋がっていきます。私たちに求められているのは、子どもの失敗を『経験値の成長』と認めて共感することです」

「だから……私は産みたい」

自身も“思い通りにいかない”ことの連続だった。歌人で劇作家の寺山修司に憧れ、その道を志したものの志望大学には入れず、出版や編集の仕事をめざすも、志望する職には就けなかった。「親からは『教師になれ』と口うるさく言われ、『人の人生に責任なんて持てない』と大ゲンカしたこともあった。でもまさか、こんな人生が待っているとは、夢にも思いませんでした」

転機は2002年、出版関係の会社で営業職をしていた頃だった。シングルマザーの同僚が仕事をいくつも掛け持ちしながら必死で子育てをしていた。どんどん追い詰められていく姿を見て「これはひどい。何かしなければ」と、24時間体制の保育所を開設。保育をきちんと学び、資格を取ろうと香川短大にも入った。だが、「明らかに無謀でした」

すぐに資金繰りは悪化。人間関係にも苦しみ、スタッフと信頼関係が築けなかった。「私にマネジメントのスキルは無い……」。創業から4年余りで絶望の淵にいたところ、一本の電話が鳴った。ある妊婦からだった。「私の持病悪化から『子どもを産んでも育てられない』と、周りから第二子の出産を反対されている。でも、この電話番号が私のお守り。困った時は先生たちが助けてくれる。だから、私は産みたい」
のびのび遊べるよう園庭にも工夫を凝らした「にこにこ保育園」

のびのび遊べるよう園庭にも工夫を凝らした「にこにこ保育園」

必要としてくれる人がいる。この場所を失くすわけにはいかない。梶尾さんは経営を一から学び直した。「『良い保育をしたい』という理念だけではやっていけない。理念を実践するには適正利益も必要だし、経営計画も必要です」

チャイルドケア二四が掲げるコンセプトは“もう一つの実家”。「あえて住宅メーカーの『住宅』をベースに建てた園舎も多い。家庭的な安心感を大切にし、子どもたちは兄弟姉妹のように育っていきます」。24時間保育はその後断念したが、「仕事と子育ての両立を支え、『ここに来ればほっとする』『困ったらすぐ相談できる』。そんな存在でありたい」と梶尾さんは力を込める。

見栄を張らず、誠実に

スタッフは約150人。梶尾さんには絶対に譲れない“入社の条件”がある。「良いカッコをしないこと」だ。「『できないこと』があっても見栄を張らず、『できない』『ごめん』と誠実に言う。できなければ、できる人がカバーすればいい。等身大を認め合う大人の姿を、子どもたちにもちゃんと見せていきたい」

先日、うれしい出来事があった。全社員から賞状「おひさま賞」が贈られた。

―梶尾裕子殿、あなたはそこにいるだけで私たちに安心感を与えてくれました。これからも私たち社員と子どもたちを愛し抜いてください―

「あまりにもうれしすぎて、すぐに額を買いに行って自宅に飾りました。私の宝物です」
 いつか、保育士同士でのんびり語り合える“保育士カフェ”をつくりたいと夢を語る。

「この場所で育った子どもたちの一日一日の積み重ねが家族の幸せに繋がっていく。その家族を支えようと一生懸命頑張っているスタッフを、これからもしっかり支えていこうと思っています」

篠原 正樹

梶尾 裕子 | かじお ひろこ

略歴
1965年 高松市出身
1985年 高松高校 卒業
1990年 日本大学芸術学部文芸学科 卒業
2002年 株式会社チャイルドケア二四 設立
     代表取締役
2011年 香川短期大学幼児教育学科 卒業

株式会社 チャイルドケア二四

住所
香川県高松市林町2217-6
代表電話番号
087-880-0252
設立
2002年7月(有限会社チャイルドケア二四)
社員数
148人(2022年4月1日現在・非常勤含む)
事業内容
認可保育園・小規模認可保育園 運営
企業主導型保育園・保育業務請負
病院内保育所・保育業務請負
地図
URL
https://childcare-24.com/

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ