「一点特化」の開発力 タンパク質の可能性探る

プロテノバ株式会社 代表取締役社長 真島 英司さん

Interview

2013.10.17

「プロテ」はプロテインを指し、「ノバ」は英語で新星を意味する。社名のプロテノバには、「新しいタンパク質をつくる」という意味が込められている。いわゆるバイオベンチャーだ。開発するのは、抗体医薬品を製造するために必要なタンパク質。

「タンパク質は、20種類のアミノ酸が鎖状に連なってできています。その並び方を変えて、機能性を高めるんです」と、代表の真島英司さん(55)。ここでつくられたものが、製薬会社での医薬品開発に役立てられている。求められるのは、壊れにくく生産効率の高いタンパク質だ。

抗体医薬品とは、特定の抗原(細胞や組織)にだけ結合して効果を発揮する抗体を利用した医薬品。副作用の少ない薬として、がんやリウマチの治療で注目されており、世界中で開発が進んでいる。「エンドユーザーの声を聞くことは少ないですが、当社製品を採用した製薬会社の活躍を知るとうれしい」

現在販売している抗体医薬製造用抗体結合タンパク質「Protein A-R28」はアルカリで洗浄でき、繰り返し使える製品の製造コストを抑えたものだ。年内には、さらに機能を高めた改良型を発売する予定。「世界最高レベルだと自信を持っています。小さな会社ですが、大手に負けない技術があります。一点に特化しないとベンチャーは勝てません」

強みは、タンパク質をつくりかえる技術と解析する技術。製品開発以外にも、バイオマーカー探索やタンパク質の構造解析、糖分析など受託サービス事業を行っている。
真島さんがタンパク質に関する研究を始めて、30年以上になる。もともと製薬会社の社員で、新薬の開発に携わっていた。約10年勤めた後、知人の起業を手伝い、そのまま転職。理由は「面白そう」ただそれだけだった。ところが入社翌年にバブルが崩壊し、大変な時期を経験することになった。

「1990年代は、ちょうど遺伝子が注目され始めたころ。そのため、タンパク質の解析など受注ビジネスを展開することで難局を乗り越えられました」。転職から15年後、自分の会社を持ちたいと起業に至った。

香川県やかがわ産業支援財団の制度を活用し、「世の中で役に立つタンパク質」の研究を続けてきた。製品の製造は外部に委託し、社内で全てを抱えないことでリスクを分散している。自己資金で研究開発ができる企業になることが、今後の目標だ。

社員全員が研究者であり、営業マンでもある。「事業には、短期的な戦略と中長期的な戦略の両輪が必要です。受託サービスをこなしながら、地道な研究と開発を続けていきたい」

好きな言葉は、人事を尽くして天命を待つ。「自分ができることは100%やります。常に不安との戦いですが、前を向いて走っていかなければなりません」。経営者になってからは、会社員時代には無縁だった、キャッシュフローの心配が付いて回る。いつも1年先を考えて行動しているという。

「よく言われていることですが、二者択一を迫られたら、難しいほうを選ぶ。これに尽きると思います」。人のためになるかどうかが、企業の存在価値を決める。自分にそう言い聞かせ、さらに役立つタンパク質の開発を目指している。

真島 英司 | まじま えいじ

1958年2月23日 京都府生まれ
1980年3月 鹿児島大学理学部生物学科 卒業
1982年3月 鹿児島大学大学院理学研究科 修了
1982年4月 株式会社大塚製薬工場 入社
1990年9月 株式会社アプロサイエンス 入社
1994年3月 徳島大学大学院薬学研究科博士課程 修了
2005年9月 プロテノバ株式会社 設立
写真
真島 英司 | まじま えいじ

プロテノバ株式会社

所在地
高松市林町2217-44 ネクスト香川201
TEL
087-897-2073
資本金
1450万円
従業員数
5名
事業内容
受託サービス事業(バイオマーカー探索、タンパク質構造解析、糖分析)
研究支援製品の製造販売
産業用タンパク質のバルク製造販売
確認日
2018.01.04

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