変化するニーズをとらえ、旅の新たな価値を提案

JTB四国エリア広域代表 高松支店長 西尾一輝さん

Interview

2021.11.04

不要不急という言葉が盛んにいわれたコロナ禍の中、旅行・観光に携わる人間として考えた。「旅は”不急”ではないかもしれないが、決して”不要”ではない」。

海外から訪れた人々との交流や、旅での様々な経験は感受性を刺激し、価値観を変える。「明治時代以降、旅は日本人の精神性にも大きな影響を与えたものの一つだと思います」

修学旅行に携わり19年

修学旅行に添乗中の西尾さん(右)

修学旅行に添乗中の西尾さん(右)

入社後19年間、修学旅行を中心に団体旅行の営業に携わった。何度も学校を訪問し、先生との信頼関係を築く。その上で、生徒たちにどんな経験をしてもらうか、どうすれば心に残る楽しい思い出をつくってもらうかを考え、企画を提案する。入札で採用されれば、1年以上かけ旅行の準備を進めていく。

「昨日食べたものは思い出せなくても、修学旅行で食べたあの料理はおしいかったと何年たっても話ができる。生徒たちの人生の中で、強烈に心に残る経験のお手伝いをしているんだと、身の引き締まる思いで仕事をしていました」。自身が添乗した修学旅行に参加していた生徒が、数年後に部下になった。「たぶんお世辞だと思いますが、西尾さんをみて入社しようと思ったという話を聞くと、やってきたことは間違っていなかったのかなと、少しほっとしました」

農家に民泊する修学旅行を企画したこともある。自分たちで収穫した野菜を料理し、住民といろりを囲んで話をする。去年までテーマパークだったのに、なぜ自分たちは民泊なんだと最初は乗り気ではない生徒たちが、離村式には涙を流して別れを惜しむ。「ここに来なければ一生しないであろう経験をし、感動する生徒たちの姿を見ると嬉しいですし、旅の持つ力を改めて実感しました」

地域の資源を発掘し、コンテンツに

SICSは様々なタイプの船が手配できる

SICSは様々なタイプの船が手配できる

今、観光を取り巻く状況は大きく変わっている。「10年前と違うのは、お客様がもつ情報量が圧倒的に多いこと。SNSで情報を集めネットで予約が完結する。私たちは、新たな付加価値を提案しなければなりません」

力を入れて取り組もうとしている一つが「リモートコンシェルジュ」だ。これまで、約9割が「高松発」の旅行だったところを、他地域から高松を訪れる旅行者を対象にリモートで地元の情報を提供し、旅を提案する。旅先で、交通機関やアクティビティの予約、手配といった「旅中(たびなか)」をサポートすることでストレスなく旅を満喫してもらう。

旅中のコンテンツづくりにも力を入れる。「瀬戸内アイランド・コンシェルジュ・サービス」(略称SICSシックス)は、瀬戸内の島々を回遊するチャーター船の手配、旅のコーディネートなどをワンストップで対応。定期船にはない独自のルートで、オーダーメイドの瀬戸内旅を提案するサービスだ。

「瀬戸内海の風景以外にも、素晴らしい資源が香川にはある。原石を掘り起こしてうまく組み合わせることで、魅力を2倍にも3倍にもしていきたい」。これからは、旅を売るのではなく”つくる”。「資源を生かしたコンテンツをつくり、地域の魅力を高めていく。私たちの存在意義はそこにあると思います」

石川恭子

西尾 一輝さん にしお | かずてる

略歴
1972年 鳥取県生まれ
1991年 鳥取県立米子東高校 卒業
1994年 立命館大学経済学部 卒業
    株式会社JTB入社
教育旅行広島支店、団体旅行広島支店、広島支店
(教育営業、一般団体、MICE営業)
2013年 中国四国本社(法人事業統括、営業企画・経営企画)
2017年 グループ本社国内事業本部
2019年 宮崎支店長
2021年 高松支店長

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