5割が影響継続、コロナ破たんもジワリと増加

コロナ禍における建設業のアンケート調査/東京商工リサーチ

Research

2021.04.15

1年間の新型コロナウイルスに関するアンケート調査で、建設業の置かれた環境が見えてきた。2020年2月から2021年3月まで毎月(計14回)実施したアンケート調査を分析すると、2020年2月の建設業へのコロナ禍の影響は「すでに影響が出ている」が、5.8%だった。だが、感染拡大に伴い資材調達や工期遅れ、着工計画見直しなどが出始め、2021年3月は「影響が継続している」が47.1%に広がり、ほぼ半数の建設業者が影響を受けていることがわかった。

※2020年2月~2021年3月まで毎月1回実施してきたインターネットによるアンケート調査の全14回分を分析した。

2020年5月は8割が減収、2021年2月も7割以上の企業が減収に

コロナの影響を受けた企業の売上高を分析した。2020年2月の増減収は拮抗し、売上高が半減した企業は3.4%にとどまっていた。だが、翌3月は減収企業が65.0%に達し、緊急事態宣言が発令された4月にさらに79.3%、5月は84.6%に達した。5月は売上高が半減した企業が3割を占め、緊急事態宣言によるサプライチェーンの分断も業績悪化に拍車をかけた格好だ。

緊急事態宣言が解除された6月以降、減収企業は徐々に減少し、8月からは7割前後で推移した。2回目の緊急事態宣言が発令された2021年1月は72.0%、2月73.8%と1回目の緊急事態宣言下のような減収企業の急増はみられなかったが、約7割の設業者の売上減が1年続いており、経営体力の疲弊が懸念される。

支援策利用は約6割に

新型コロナ関連の支援策の利用率を分析した。支援策を「利用した」と回答したのは4月(3.2%)、5月(8.6%)は1割未満にとどまっていた。

だが、6月に22.0%、7月に40.2%と最初の緊急事態宣言が解除された後、支援策の利用企業が急増した。

その後も増加をたどり、2021年3月は57.9%と約6割に達した。

5%が廃業を検討

2020年8月から廃業検討率をアンケートの設問に加えた。建設業で8月に廃業を検討する可能性が「ある」と回答したのは6.2%。10月は最も高い6.6%を記録した。

2021年1月以降は3カ月連続で減少したが、3月に「ある」と回答したのは4.9%で、まだ約5%が廃業を検討している。

全産業と比べ、建設業の廃業検討率は低いが、社数の多い建設業は地域のサプライチェーンを形成しており、廃業動向は地域経済への影響も大きい。

コロナ関連破たんは、飲食業や宿泊業、アパレル関連などが目立つが、建設業も2020年12月に19件発生し、2021年も月間10件を上回るペースで推移している。これまでの累計件数は104件(2021年3月29日時点、負債1,000万円以上)に達する。

2021年3月のアンケート調査では、2回目の緊急事態宣言で投資意欲の減退、民間工事の計画見直しの影響を懸念する一方、公共工事の発注は変わらず影響はないとする声もある。これは景気対策の公共工事依存の裏返しとも言えるが、同調査では約7割が減収で、約3割は横ばい、もしくは増収で、コロナ禍で格差が広がっている。

コロナの影響はあらゆる業種に広がるが、当初影響が少なかった建設業も例外ではなく、その窮状が次第に顕在化してきた。回復の兆しが不透明ななか、コロナ禍で経営基盤が毀損した企業の休廃業・解散、倒産も現実味を帯びており、地域や雇用などの影響が懸念される。

東京商工リサーチ四国地区本部長兼高松支社長 立花 正伸

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