「賃上げ」実施、90.9%、最低賃金の上昇に「できる対策はない」が27.3%
2023年度香川県「賃上げに関するアンケート」調査

東京商工リサーチ

Research

2023.10.19

※本調査は、2023年8月1日~9日にインターネットによるアンケートを実施、有効回答55社を集計、分析した。
※賃上げ実体を把握するため「定期昇給」、「ベースアップ」、「賞与(一時金)の増額」、「新卒者の初任給の増額」、「再雇用者の賃金の増額」を賃上げと定義した。
※資本金1億円以上を「大企業」、1億円未満(個人企業等を含む)を「中小企業」と定義した。

賃上げ機運が実施率を押し上げた

2023年度の賃上げは、県内企業の90.9%が実施(予定含む)した。コロナ禍で実質賃金が目減りするなか、物価上昇に見舞われて高まった賃上げ機運が賃上げ実施率を押し上げたようだ。

賃上げの実施内容は、「定期昇給」74.0%の他、継続的な物価上昇を背景に「ベースアップ」が62.0%となった。

2023年春闘について、連合は賃上げ率5%程度(定昇含む)の方針を示していた。香川県内の企業で5%以上賃上げを達成した企業は27.3%だった。

コロナ禍初めの20年度の賃上げ実施率は、過去最低水準にまで落ち込んだ。経済活動の再開と物価高、人手不足が重なった23年度は、9割を超える水準となった。しかし、売上増と利益拡大を実現できないままの賃上げは、堅実経営とはかけ離れた行動で収益圧迫の諸刃の剣になりかねない。正常な価格転嫁による収益改善と賃上げ原資確保の実現が重要になっている。

Q1.今年度、賃上げを実施しましたか?(択一回答)

「実施した」は90.9%(55社中、50社)であった。物価高を背景に、企業も賃上げに取り組んだようだ。規模別の「実施率」は、大企業が100.0%(6社中、6社)に対し、中小企業は89.9%(49社中、44社)だった。

Q2. Q1で「賃上げを実施した」と回答した方にお聞きします。実施した内容は何ですか。 (複数回答)

最多は、「定期昇給」の74.0%(37社)。次いで、「ベースアップ」の62.0%(31社)、「賞与(一時金)の増額」の32.0%(16社)、「新卒者の初任給の増額」26.0%(13社)の順。規模別は、大企業は「定期昇給」(6社中、6社)が100%に対し、中小企業は70.5%(44社中、31社)。人材獲得が激化するなか、中小企業も安定して賃上げを実施できる環境整備が重要になっている。

Q3.賃上げ率(%)はどの程度ですか?年収換算ベース(100までの数値)でご回答ください。

Q1で「実施した」と回答した企業に賃上げ率を聞いた。33社から回答を得た。レンジ別の最多は「3%以上4%未満」の39.4%(13社)だった。次いで、「2%以上3%未満」と「5%以上6%未満」の15.2%(5社)の順。連合の23年春闘では、定昇相当分を含む5%程度の賃上げ方針が示されたが、賃上げ実施企業のうち、「5%以上」の賃上げ率を達成したのは27.3%(9社)だった。規模別では、賃上げ率「5%以上」は大企業が0.0%(3社中、0社)に対し、中小企業は30.0%(30社中、9社)だった。

即効性のある対策が急務

23年10月から最低賃金が引き上げになり、香川県ではこれまでの878円から40円引き上げられ918円になる(全国平均1,004円)。

企業の14.3%は来年度の最低賃金上昇を「許容できない」と回答し、27.3%の企業は最低賃金上昇に「できる対策はない」と回答している。

通常の賃上げと異なり、最低賃金を上回る賃金支払いは企業の義務だけに、人件費の捻出に向け「価格転嫁」(36.4%)や「設備投資による生産性向上」(25.5%)などが、現実的な対応策になっている。企業の自発的な賃金引き上げを促すには、価格転嫁に向けたサポートや各種税の引き下げ、収益力を高めるための投資支援など、即効性のある対策が急務になっている。

東京商工リサーチ四国地区本部長兼高松支社長 波田 博

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