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「高松市美術館コレクション + (プラス) 木村忠太とこぼれる光のなかで」

高松市美術館 学芸員 毛利 直子

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2018.03.01

木村忠太《グラース郊外》1975 高松市美術館蔵

木村忠太《グラース郊外》1975 高松市美術館蔵

本展覧会は、高松市生まれの画家・木村忠太(1917-87)の生誕100年および没後30年を記念し、当館のコレクションから、木村はじめ「光」をモチーフにした作品約60点を厳選し、美術家たちの「光をめぐる冒険」を紹介するものです。

木村忠太は、戦後1953年にフランスに渡り、87年にパリで逝去するまで、ほとんど帰国することなく、フランスを舞台に自らを「魂の印象派」と称して画業に専心した画家です。今から60年ほど前の木村の洋行とは、船で横浜を出港し、2カ月かけてマルセイユに渡るというものでした。すぐさまパリに居を定めるも、「芸術の苦しみ、生活の苦しみ、貧乏のどん底と病気の苦しみ」に喘ぐ日々だったといいます。特に、渡仏して間もない1956年頃、木村は「中心の問題」に突き当たり、思うように絵が描けなくなります。はじめに絵の中に中心を決めてしまうと、それに縛られ自由が利かず、以後5年間の暗黒時代を過ごしたそうです。

しかし、1960年代後半、光降り注ぐ南仏のクロ=サン=ピエールにアトリエを持った木村は、夏の数カ月をそこで制作し、秋以降はパリに戻り南仏のモチーフを描くという生活のリズムによって、画風を大きく開花させました。木村はここでの出会いをこう語っています。「油絵で問題なのは光だと思う。美しさというのは陰と陽が隣り合うと、そこがピカッと光る。それが光の原理ということであり、そこに絵具の置き方の問題が出てくる」と。本作《グラース郊外》もまた南仏の町。自然と深く交感することにより、木村は魂に焼きついた光を画面に現出させることになりました。
曽谷朝絵《bathtub no.15》2001 高松市美術館蔵 ©Asae Soya,Courtesy of Nishimura Gallery

曽谷朝絵《bathtub no.15》2001 高松市美術館蔵
©Asae Soya,Courtesy of Nishimura Gallery

さて、本展では、木村の「絵画や光に対する深遠なる問い」を、現代を生きる美術家たちがどのように対峙しているのかも紹介します。

水と光がゆらめく絵画《bathtub no.15》の作者・曽谷朝絵(1974-/神奈川県生まれ)は、今回特別展示として、一室を覆う映像インスタレーションによって光と色彩のハーモニーを生み出します。それら有機的な光が幾重にもこぼれていく空間に、私たちの体はゆるやかに包まれ不思議な感覚を抱くことでしょう。ぜひこの体験もお楽しみください。

特別展「高松市美術館コレクション + (プラス)木村忠太とこぼれる光のなかで」

【と き】3月25日(日)まで、月曜休館
【ところ】高松市美術館(高松市紺屋町10-4)
【入場料】一般800円、大学生500円
【関連イベント】ギャラリートーク 3月10日(土)午後2時~、要観覧券

高松市美術館 学芸員 毛利 直子

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