「島」が持つ可能性 イノベーションを生み出したい

香川大学大学院 地域マネジメント研究科 研究科長 教授 板倉 宏昭さん

Interview

2012.04.05

「サラリーマン」から「研究者」へ。板倉さんは30代で人生を方向転換した。マサチューセッツ工科大学、東京大学、そして今は香川大学で「地域マネジメント」を研究している。

仕事=プライベート

「休日は高松市の中央商店街をよく歩きます。活性化の代表例ですから」「卵かけごはんに小豆島のオリーブオイルを少し垂らすと深みが出て美味しいんですよ。オリーブのブランド力を高めて事業化を目指す研究を、百十四銀行や野村證券と共同で進めているところです」 

趣味や休日の過ごし方を尋ねると、すべてが仕事に結びついていく。「仕事とプライベートの境界線がないんですよ」と笑う。お気に入りのスポットはどこですか?「島からみるサンポートの灯りが好きですね。瀬戸内海の島々は、新たな産業創出の可能性を大いに秘めていると思うんです」

島から世界へ

「島は高齢化、少子化、人口減少など、世界の将来像の最先端モデルです。ですが、介護や健康、農林水産や観光など成長産業がたくさん詰まっています。ここでうまくいくモデルを作ることができれば、まさに世界に発信できると思うんですよね」。やはり仕事の顔になり、瀬戸内海の島々について熱く語り始めた。

「かつて瀬戸内海は、文化の交流の中心でした。島というと一見閉鎖的に感じますが、外国人や若い女性が次々と訪れている。島にこそ異質性を受け入れる土壌があるんです。『ジモティ』と 『ヨソモノ』が結合して、イノベーションが生まれる可能性が大いにあると思います」

そこで今力を入れているのが「小豆島のオリーブ」だ。サプリメントや保湿性に優れた化粧水、苦みは少しあるけれど善玉ポリフェノールが豊富なオリーブ茶など、付加価値を生み出し、所得向上に繋げ、そして地域を活性化させたい、と力を込める。

「小豆島のオリーブにはどんな成分があって、どう体にいいのかなど、科学的な基準を作るのが、私たち大学の使命です。オリーブの魅力を後押しするストーリー作りのお手伝いができればいいですね」。そしてこう加える。「オリーブでは他県には負けられませんからね」

負けたくない!

物静かな様子。丁寧でゆったりとした口調。しかし、ちょっと意外な一面があった。「昔から車好きなんですよ」。サーキットレースに出場できる 「国内A級ライセンス」を持っている。以前は、茨城県の筑波サーキットでジムカーナ(コースにパイロンを立てて行うタイムトライアルのスラローム競技)などにも出場していた。「実は負けず嫌いな性格なんです」

車の魅力を尋ねると、板倉さんらしいユニークな答えが返ってきた。「車は右に行こうと思えば右に、左と思えば左にと、思い通りにいけるでしょう?仕事はなかなか思い通りにいきませんから、気分転換になるんです(笑)」

10周年に向けて

地域マネジメント研究科は、全国的にも珍しい地域のビジネススクールとして2004年に開校。その立ち上げ当時から携わってきた。現在は遠隔講義が受けられるスペース(徳島大学で実施中)を東かがわ市等で準備している。

「開校10周年に向けて四国のビジネススクールとして、地域のリーダーを育てるという目標に貢献していきたいですね」

板倉 宏昭 | いたくら ひろあき

略歴
1962年 8月 神奈川県藤沢市生まれ
1987年 4月 日本IBM株式会社 入社
1996年 6月 マサチューセッツ工科大学 経営大学院
       修士課程修了
2000年 9月 東京大学大学院 博士課程修了
2000年10月 東京大学先端科学技術研究センター
       協力研究員
2004年 4月 香川大学大学院地域マネジメント研究科
       教授
2011年 4月 研究科長

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