地元食材生かした 旅行者から愛される弁当

高松駅弁 代表取締役社長 関 優一さん

Interview

2011.11.17

列車の旅に欠かせない駅弁。車窓の景色を眺めながら、ほお張るおいしい弁当は道中の楽しみの一つでもある。

高松市浜ノ町の株式会社高松駅弁は現在9種の駅弁を製造し、JR高松駅構内などで販売。駅弁は「冷めてもおいしく」を心掛け、仕出し弁当は温かいご飯を提供する。

代表取締役社長の関 優一さんは、創業から変わらぬ伝統の製法と味を守りつつ、新商品の開発にも意欲的だ。

四国の駅弁第1位

地元高松駅で365日、1日も休むことなく駅弁を販売する高松駅弁。調理は全て自社工場で行う。午前1時から稼動し、7時には出荷ピークを迎え、調理から出荷までほとんどの作業を昼までに終える。

工場内は食材の搬入や焼く、揚げる、煮るといった作業がスムーズにいくよう、器具を配置。配膳室の温度は通年20℃に保たれている。季節によってばらつきがあるものの、1日に1千~5千個の弁当を出荷。

「高松駅に加えて、丸亀—観音寺間、丸亀—琴平間を走る特急列車で車内販売をしています。全国の百貨店やスーパーの駅弁フェアに出品することも」と、関さん。JR四国が企画した「第1回四国の駅弁ランキング」では、同社の「讃岐たいらぎ弁当」が1位に、「たこ飯」が4位に輝いた。

たいらぎ弁当は、瀬戸内産のタイラギ貝をぜいたくに使用。炊き込みご飯にのせた味付けの違う3枚の貝柱は、上品な味わいと歯応えが抜群。甘辛く煮た貝の「ひも」が味のアクセントに。地ダコをふんだんに使ったたこ飯は、うまみが凝縮されている。

「駅弁は県外からの観光客、ビジネス客が口にするため、『どうすれば親しんでもらえるか』を重視しています。できるだけ県内産の食材を使いたいですね」

子どもには、食べた後も水筒が使える「アンパンマン弁当」、サラリーマンには、車体をイメージした容器の「マリンライナー弁当」も人気だ。

同社では、駅弁のほか行楽や会議用、昼食弁当、催事用料理の調理、配達も行っている。

味付けはシンプルに

「旅行者は各地でいろいろな駅弁を食べていますから、ほかと比べておいしいものでなければ。味勝負ですよ」と関さん。

調味料はしょうゆ、塩、砂糖、酢、酒といった基本的なものだけを使う。これまで綿々と続いてきた、駅弁の伝統的な調理法だ。「味付けの仕方で、弁当を長持ちさせることもできます。確立された方法に小細工する必要はありません」。創業から60年余り。「昔ながら」が生きている。大量仕入れ、大量生産はしない。

「大量に仕入れた食品を詰めれば原価は抑えられる。でもそれはしたくない。一品一品手作りで、手間をかけた駅弁にしたいんです」

駅弁は常温で食べるのが一番おいしいように作る。昼食用弁当は、配達直前にご飯をよそい、温かいうちに届ける。愛される弁当の秘けつだ。

お土産に「ぴっぴ」

弁当の新しいおかずを考えていたときに生まれたのが、 「揚げぴっぴ」だ。揚げたうどんに味付けをしたぴっぴは甘味、しお味、しょうが味の3種類。かりんとうとはまた違った食感で、子どものおやつやお茶請けにぴったり。本場の讃岐うどんで作ったお菓子は、県外へのお土産にも喜ばれる。

「こちらの味付けもシンプルですが、いくら食べても飽きのこない味です」。ぴっぴ用のうどんはもちろん、そのまま食事用にも使える。弁当工場の隣にうどん工場を設け、製麺から自社で行う。近頃は、麺の卸しも手掛ける。

「揚げぴっぴ」は四国と岡山のJRの駅、高速道路のサービスエリアなどで販売中。多いときには1日1千個を売り上げる人気商品になった。

地産尽くし弁当を

現在店頭に並ぶ駅弁は9種類。年間20の新商品を考案し、試作品を作るものが5つ、そのうち商品化するのは1つほど。商品化までこぎ着けてもヒット商品誕生までの道のりは遠い。「思い入れのあるものでも売れるとは限らない。そのギャップは大きいんです」

今後の目標は、食材を全て県産品でまかなう弁当を作ること。「香川県産にこだわると、食材の安定供給が課題です。課題をクリアしつつ、タイラギ貝やイイダコ、アナゴのように香川ならではの食材を発掘したいですね」。昔から変わらない「懐かしい味」と、新たな魅力が詰まったもの。県内外問わず、駅弁を楽しんでもらうために作る。

売上は、駅の利用客数に影響される。香川の観光活性も需要だ。弁当食べたさに観光客が押し寄せる。これからはそんな時代が来るかもしれない。

関 優一

株式会社 高松駅弁

住所
香川県高松市浜ノ町8-12
代表電話番号
087-851-7711
設立
1943年
社員数
63人
事業内容
駅弁の製造・販売
資本金
4500万円
沿革
1943年 高松駅弁当株式会社 設立
1963年 株式会社高松駅観光デパート 設立
1985年 高松駅弁当株式会社と株式会社高松駅観光デパートが合併し、株式会社四国観光弘業を設立
1999年 新本社、工場新築落成
株式会社高松駅弁に改称
地図
URL
http://www.jr-shikoku.co.jp/ekiben/index.htm
確認日
2011.11.17

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