「考える縫製」で世界を狙う

川北縫製 代表取締役 川北繁伸さん

Interview

2019.03.21

カットソーに使うニット生地の端が丸まる様子から、ブランド名を「CURLY&Co.」にした

カットソーに使うニット生地の端が丸まる様子から、ブランド名を「CURLY&Co.」にした

川北縫製(さぬき市)の男性向け衣料品「CURLY&Co.(カーリーアンドコー)」は、全国65店舗のセレクトショップで販売されている。同社は東京・南青山で直営店の「The Weft(ザウエフト)」も運営する。

一時は価格競争に敗れて受注が激減し、代表取締役の川北繁伸さん(51)は廃業も考えた。自分が作りたいものから、相手が作ってほしいものへと商品をシフトし、経営を立て直した。
CURLY&Co.の2019年春夏物。 The Weft(東京都南青山)と全国65店舗のセレクトショップで購入できる。 中四国はINSIST(愛媛県松山市)や、onfleek(岡山市北区)など

CURLY&Co.の2019年春夏物。
The Weft(東京都南青山)と全国65店舗のセレクトショップで購入できる。
中四国はINSIST(愛媛県松山市)や、onfleek(岡山市北区)など

1963年、祖父が手袋製造業として川北縫製を創業。68年に分社し、父がカットソー、叔父が手袋の縫製(現・ダイコープロダクト)を引き継いだ。

当時は衣料品メーカーの下請けとして、OEM(相手先のブランド名で製品を作ること)が主な仕事だった。川北さんが入社した93年には高松市内にも工場を持ち、80人のスタッフがいた。ところが時代は質より量へ。「このステッチがいいでしょと、技術の高さを売りにしても全く響きませんでした」。協力会社との付き合いがなくなり、高松の工場も閉め、2000年にはスタッフが3人に。

川北さんは縫製を辞めて、食品の販売をしようと考えた。知人の紹介で、北海道で野菜の有機栽培をする人に会いに行った。「有機栽培を長年続けてきたから商売になった。手間暇かけたことは報われる。なぜ縫製を辞めるのか」。そう言われて「やっぱり川北縫製を続けたい」と思った。

OEMがだめなら自社製品をと、オーダーメードTシャツの製造を始める。採寸して一人ひとりの体形に合わせたTシャツを1枚3千円で販売。手ごろな価格が受けて、3年間で2000パターン作った。「人気もあるし、作っていて楽しいけれど、時間もコストもかかる。商売にはなりませんでした」

そこで、BtoCからBtoBへ売り先を変える。セレクトショップとタッグを組んで服を作ることにした。高松のある洋服店で働いていた伊藤裕之さん(41)がデザインを考え、川北縫製で作ったカットソーがよく売れた。伊藤さんはものづくりの現場で働きたいと、08年に川北縫製へ入社。現在もデザイナーを務めている。

川北さんと伊藤さんで作り上げたのが、自社ブランドの「CURLY&Co.」。肌触りと着心地の良さが特長だ。インターネット販売はうまくいかなかった。「実物を見て触ってもらわなければ、うちの良さは伝わりません」。全国の有名セレクトショップ10社を招いて展示会を開くと、6社が取り扱いを決めてくれた。あとはバイヤーの口コミで、販売店が増えていった。

2013年に「The Weft」を出店。店名は「横糸」を意味する。「製造現場、販売店、お客様。みんなの協力があって商品が作れるし、どんな立場であっても横並び、対等だという気持ちを込めました」

「OEMから自社ブランドの製造になっても、言われたことをやるだけなら現場の仕事は以前と変わりません」。企画、製造、販売に携わるそれぞれのスタッフが川北縫製らしさとは何かを考える。

川北さんは海外進出の準備も進めている。「日本製品は品質が高くて当たり前と思われています。さらに何が提案できるかを考えています。海外でも評価してもらい、ブランド価値をさらに高めたい」

鎌田 佳子

川北 繁伸|かわきた しげのぶ

略歴
1967年 さぬき市生まれ
1986年 三本松高校 卒業
大学卒業後、他社での修業を経て
1993年 川北縫製 入社

有限会社 川北縫製

住所
香川県さぬき市大川町田面98-2
代表電話番号
0879-43-3224
設立
1963年
社員数
24人(パート含む)
事業内容
衣料品の製造・販売
地図
URL
https://www.kawakitahousei.jp/
確認日
2019.03.12

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