社会貢献するために仕事がある

日本航空高松支店 支店長 小田和彦さん

Interview

2019.03.21

警察官だった父親の影響で、警察官になると決めていた。ところが、その父のアドバイスで民間企業への就職活動をすることに。「JALの面接では、飛行機にも旅行にも興味がないと正直に言いました。ただ、社会インフラを担っている会社だから、ここでの仕事を通して社会貢献したいという考えを伝えました」

企業という“道具”を使って社会に役立つことをする。中国事業推進部に在籍していたときは、インバウンドの勉強会を発案・主宰した。当時は今ほどインバウンドが注目されていない時代だったが、民間交流を進めるため仕事を通して知り合った人や友人などに声をかけ、旅行業界だけではなく家電、化粧品、流通などさまざまな企業や団体からメンバーを集め、密度の濃い議論をした。それらをまとめ「中国訪日旅行需要喚起に関する提言書」として2010年に観光庁長官に提出。提言には、ビザの要件緩和、コールセンターを設置して言葉のバリアフリー化を進める、免税に関することなどが盛り込まれていた。
「民間企業の有志だけで、自社の利益を超えてどれぐらいのことができるのか試したかった。この提言書だけでビザが緩和されたわけではありませんが、少しはインバウンドを増やすことに貢献できたと思います」

訪日外国人が増えるメリットとして経済効果がよくいわれるが、小田さんには別の思いがある。「『観光』というと単なるレジャーと捉えられることが多いんですが、中国の古い書物「易経」には『観光とは知らない土地を見て自分の固定概念を改め、その土地に対する見方を変えること』とある。だから、日本に対していいイメージを持っていない人にもとにかく来て、本当の日本人の姿を見てほしい。そうすれば見方が変わると思います」

どんな人と出会い、何を感じるか

ヒクソン杯国際柔術大会で娘さんと

ヒクソン杯国際柔術大会で娘さんと

人の価値観や生き方は、人生の中でどんな人と出会ったかによって大きく変わる。大大学時代は中曽根康弘元総理の私邸で書生として寝食をともにし、そのブレーンといわれる人達とも接する機会があった。「中曽根さんからは、政治家の運転手からアメリカ副大統領になったクエール氏の話を聞きました。『お前もとにかく勉強しろ』と言われたことを今も心に留めています」

ある評論家からは、意見を主張するときは命がけでないといけないと教えられた。「彼の著書で表現力の大切さも学びました」。部下たちをやる気にさせるのは、コミュニケーションと表現力。「誰でも言っているような言葉を、いかに自分の言葉にして説得力をもたせるか。“表現すること”が支店長の仕事だと思います」

高校では空手、その後はブラジリアン柔術とずっと続けている武道の仲間からも刺激を受けている。「学校の勉強や仕事に必要なスキルの勉強ではなく、心遣いや倫理観といった生きるために必要な教養が高い人も多い。彼らと話をしていると、ビジネスの世界とは違う価値観に触れられます」

新たな勉強会を

「赴任するまで、高松空港にうどんだしの蛇口があることを信じていませんでした」

「赴任するまで、高松空港にうどんだしの蛇口があることを信じていませんでした」

 着任して5カ月。都市の利便性と自然の豊かさがバランスよく融合している香川は居心地がいいと感じている。そんな香川にいる間に、以前のような勉強会を発案したいと考えている。「航空会社だから観光に関することか、災害の時の輸送にかかわることか。具体的には決めていませんが、新たな分野に挑戦してほかの企業や団体を動かすきっかけをつくりたいですね」

石川恭子

小田 和彦 | おだ かずひこ

1969年 佐賀県生まれ
1988年 佐賀私立龍谷高校 卒業 
1991年 拓殖大学政経学部 卒業
    日本航空株式会社 入社
    大阪空港支店貨物郵便部
1994年 東京空港支店第三旅客部
1997年 経営企画室付 東京商工会議所派遣
1999年 東京支店国際旅客販売部
2007年 中国事業推進部マネジャー
2009年 国際提携部マネジャー
2014年 株式会社ジャルカード特約店営業部部長
2018年 日本航空高松支店支店長

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