ソーラー発電所は “安全と信頼”のランドマーク

大同ガス産業 社長 楠本 浩一さん

Interview

2013.05.02

台風も地震も機器の劣化もある。それでも20年間続けられるか……。専門家に覚悟を問われた「高松港メガソーラー発電所」は昨年の12月12日、発電を開始した。

大同ガス産業社長の楠本浩一さん(54)は関連業者と共にチームを組み、1.6ヘクタールほどの土地に7680枚の太陽光パネルを取り付けた。この発電所は1メガワット、一般家庭約300世帯分の発電を見込んでいる。

9月中旬から5週間、残暑の中、社員達による休日返上の突貫工事でできあがった。これだけ出るのか、と思うほど汗を流した。

「ライフラインの一端を担う、メガソーラー発電所の誕生に関われて幸運だ」。建設に参加した社員達が言った。

全国で2社目、香川県で3番目

プロパンガス業者では全国で2社目、香川県では3番目に発電を始めた。投資額は設備に3億円、土地は社有地だ。自然エネルギー買い取り制度は、発電事業が赤字にならないように電力価格を決めているが、去年の暮れに発電を開始して、これから迎える梅雨や真夏を通した年間の発電量はまだ分からない。

パネルにカモメの糞も落ちるし塩害もある。メンテナンス費用が今後どのくらいかかるのかも、まだ分からない。

ライバルも認めた「安全と安定供給」

大同ガス産業の商品はLPガスだ。調理、給湯、冷暖房などを全て電気でまかなうオール電化を展開している四国電力はライバルだ。

嫌がられると思ったが、四国電力グループの四電エンジニアリングに相談したら、同じエネルギー供給者として信頼できると社内で一番の新エネルギー専門家を紹介してくれた。

「儲けるつもりなら手伝いません。メガソーラー発電所はライフラインです」と言われて、確かにその通りだと改めて思った。

高松港湾地区の港湾条例に、発電所設置の規定が無いため手間取ったが、県の企業立地推進課の後押しもあって経産省の許可が下りた。

国も県も四国電力も、創業以来50年間24時間365日、LPガスを安全に安定的に消費者に届けてきた事業者なら、台風が来て停電しても対応できると信頼してくれた。

社員も参加して突貫工事

電気機器の関連企業8社とチームを組んで工事をスタートしたのが昨年4月。7カ月後の11月に完成した。四電エンジニアリングにテクニカルアドバイザーとして、申請資料の指導や施工の進捗状況の確認、発電所の試運転等を依頼した。

「チームに私共も加わりました。配送、営業、検査の男性社員は日曜日もローテーションを組んでくれて、突貫工事でした」。工事現場の斜め前にLPガスの充てん所がある。配送係がガス充てん中の体が空いた時間に手助けに来てくれた。1000枚ずつ届くパネルを荷ほどきするだけで大変だった。出来上がりの形が見えないから、いつになったら終わるのかと思った。苦しかったが辛くはなかった。

工程計画では、7680枚のパネル取り付けに8週間を予定していたが5週間で完了した。奇麗で見事だった。社員達は歓声を上げた。

発電所が社員の意識を変えた

全国で4万社ほどあったLPガス事業社は、2万2千社ほどに減った。「事業の柱はLPガスです。メガソーラー発電所はお客様のもっと身近なガス屋になるためのシグナルです」

目指しているのは、サザエさんに登場する三河屋の御用聞きのように、「今日は何か注文はないですか」と勝手口から入って聞く、親しまれ信頼される企業になることだ。

6年前、顧客ニーズの変化に応じて商品の幅を広げようと、家庭用ソーラー発電パネルの販売を始めた。「ガスを職業としてきた社員達には驚きで、不快感を隠しませんでした」

その社員が変わった。大同ガスの一員であることが幸せだとさえ言ってくれた。高松港メガソーラー発電所は、港に出入りするフェリーや、高松シンボルタワー、JRホテルクレメントから眺めると濃紺の絨毯を敷き詰めたように見える。やがて高松市のランドマークになると思っている。

自然エネルギー買い取り制度

▲高松港メガソーラー発電所の太陽光パネル。年間総発電量は一般家庭約300世帯の年間消費電力に相当する=高松市朝日町  ◆写真撮影 フォトグラファー 太田 亮

▲高松港メガソーラー発電所の太陽光パネル。年間総発電量は一般家庭約300世帯の年間消費電力に相当する=高松市朝日町

◆写真撮影 フォトグラファー 太田 亮

世界3位50基の原発を持つ日本にとって、消費者が費用を負担する自然エネルギー固定価格買い取り制度は画期的だ。化石燃料や原子力に頼らない発電市場が拡大して機器のコストも下がり、通信、制御機能を持つ電力網のスマートグリッドや蓄電池、IT技術の進歩で、規模は小さくても地域の遊休地や荒廃する山林が産業資源になる。

太陽光発電は1キロワット時当たり42円の固定価格で、発電事業は20年間、家庭用は10年間、政府が保証する(2012年度の場合)。買い取り額は13年度には総額3千億円を超える可能性もある(13年2月26日朝日新聞「教えて!電気料金」)。

先行するドイツでは、自然エネルギーが原発を上回り20%に達したが、電力料金に占める消費者負担の割合が10%を超えるレベルになり、買い取り価格の引き下げなどの対策を行っている(12年10月17日ドイツ視察報告書自然エネルギー財団)。

楠本 浩一 | くすもと こういち

1958年 和歌山県生まれ
1981年 東京電機大学理工学部卒業
    松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)入社
1992年 大同ガス産業株式会社入社
2004年 代表取締役社長に就任
写真
楠本 浩一 | くすもと こういち

大同ガス産業株式会社

所在地
高松市伏石町708番地1
TEL:087−869−1313
設立
1962年4月
資本金
1000万円
代表者
楠本浩一
従業員
70人
事業内容
家庭用・工業用LPガスの製造・販売、LPガスプラントの設計・施工・検査、太陽光発電システム販売
確認日
2018.01.04

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