初の生え抜き理事長 地域とお客さんと共に歩む

高松信用金庫 理事長 大橋 和夫さん

Interview

2019.09.05

マスコットキャラクターのブルドック犬「サーブ」と。  「サーブ」は現在投票が受け付けられている「ゆるキャラグランプリ」に参戦中。  ぜひ投票をお願いします!=高松市瓦町の高松信用金庫本店

マスコットキャラクターのブルドック犬「サーブ」と。

「サーブ」は現在投票が受け付けられている「ゆるキャラグランプリ」に参戦中。

ぜひ投票をお願いします!=高松市瓦町の高松信用金庫本店

その思いがあればいい

高松信用金庫(高信)は1949年の創立以来、日本銀行や財務省の出身者がトップを務めてきた。創立70周年、令和元年という節目の年に初めて誕生した生え抜き理事長が大橋和夫さん(61)だ。「これまでの理事長は錚々たる顔ぶれで、高信のブランド力を高めてくれました。私が引き受けることでマイナスにならないかと、何度も自問自答を繰り返しました」と打ち明ける。しかし、入庫以来40年余り、営業の最前線をがむしゃらに走り続けた大橋さんには自負があった。

「私を育ててくれたお客さんや、地元香川の発展を思う気持ちは誰にも負けない」

その思いがあればいいんじゃないか。そう思えた瞬間、覚悟が固まった。「家族以上にお客さんが喜んでくれたのがうれしかった。お客さんにも生え抜きの理事長を望む気持ちがあったんだと実感しました。就任してまだ2カ月余りですが、引き受けてよかったと思っています」

大橋さんはこれまで、高信の目玉事業を次々と立ち上げてきた。「私はただアイデアを出しただけ。職員らが知恵を絞り、うまく肉付けしてくれました」
女性のビジネスを支援する「キャリスタ塾」

女性のビジネスを支援する「キャリスタ塾」

女性の創業を支援する「キャリスタ塾」は、事業計画書づくりなどを教える一般的な起業塾とは違い、「目的は創業の一歩手前の“きっかけ”づくり。夢や悩みを共有し、創業の機運を高めるコミュニケーションの場です」。塾生は約100人で、30人が起業の夢を実現させた。「規模は小さくても地域に根づいた企業を育てたい。事業が生まれることで雇用も生み出せます」

職業体験やスポーツ教室、親子旅行など様々な催しに会員を招待する「キッズクラブ」は0歳から18歳までが対象。子ども名義の専用の預金通帳をつくれば誰でも参加できるユニークな事業だ。「香川を好きになってもらえるよう、文化や歴史など地元にゆかりのあるイベントを毎回企画しています」。子どもの頃に地元を好きになれば、県外に進学しても帰ってきてくれるかもしれない。県外で香川の魅力を発信してくれるかもしれない。発足から3年足らずで会員数は3500人を超えた。「郷土愛に満ち溢れた子どもをいかに育てるか。地道な取り組みですが、これからもコツコツ続けていきたい」

今月2日、高信は「SDGs」を宣言した。国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に積極的に取り組むもので、地域経済の発展や地域貢献などを重点項目に挙げる。信用金庫は、どこでも営業できる銀行とは違い、定款で営業エリアが決められている。「高信のエリアは香川県限定。香川の発展なくして高信の未来はありません。もちろん収益も大事ですが、地域活性化のための投資もやっていかなければと思っています」

お客さんのために偉くなる

「たかまつしんきんキッズクラブ」の活動の様子

「たかまつしんきんキッズクラブ」の活動の様子

高松商業高校卒業後、高信に入り、理事長にまでのぼりつめた。大橋さんの口癖は「俺も出世するから、お前も出世しろ」。常々、部下に繰り返してきた。“出世”にこだわったのには理由がある。

営業で飛び回っていた頃、「融資してほしい」と頼ってくる企業がいくつもあった。しかし、何度稟議を上げても通らない。いくら支店長に掛け合っても首を縦に振ってもらえなかった。「お金という『経済の血液』を扱う仕事。この企業を支援したい、という思いだけでは通用しない。上司を説得するだけの理論武装も必要だし、“権限”も必要だと痛感させられました」

お客さんのために偉くなる。目標を定めた大橋さんは資格や知識を得るため、「法務や財務など、なりふり構わず勉強しました」。同僚から「あいつ、出世欲に芽生えたな」と陰口をたたかれても気にしなかった。

「『出世なんてどうでもいい』という職員もいますが、私は『サラリーマンである以上、上を目指せ』と言いたい。それは決して自分だけのためじゃない。その先にはお客さんがいるんです」。キャリアに権限がついてくれば、仕事の幅はさらに広がる。「学歴もスキルもない、雑草のような私が舵取り役になった。『自分たちでもやれる』という良いモデルケースになれたんじゃないかな」と大橋さんは笑う。

目指せ!三“感”王

合併、再編、異業種参入など金融業界は大きな変化の真っただ中にある。「厳しい時代だからこそ改めて、地域に根差した信金の原点に立ち返るべき」と口調を強める。「ネットを介し非対面で完結する取引も増えている。でも、あくまで私たちの軸は対面、フェイストゥーフェイス。『非効率じゃないか』という声もあるが、そんなスタイルを求めるお客さんのために生まれたのが信金なんですから」

銀行を主とする客は組織の規模やブランド力からくる安心感などに魅力を感じ、信金を主とする客は人につく、というのが大橋さんの考えだ。「じゃあ“人”を磨かなければなりません」

人間力を磨くため、「3つの“感”を意識してほしい」と話す。些細なことでも興味を持って『感心』する。自ら体験し『感動』する。そして、あらゆることに『感謝』する。「人間力を高め、お客さんと共に成長していく。職員にはぜひとも、“人生の三感王”を成し遂げてほしいですね」
「香川の発展なくして高松信金の未来はない」

「香川の発展なくして高松信金の未来はない」

篠原 正樹

大橋 和夫|おおはし かずお

略歴
1958年 高松市生まれ
1977年 高松商業高校 卒業
     高松信用金庫 入庫
2001年 丸亀支店長
2004年 栗林支店長
2009年 観音寺支店長
2011年 常勤理事
2015年 常務理事
2019年 理事長

高松信用金庫

住所
香川県高松市瓦町1丁目9番地2
代表電話番号
087-861-0111
設立
1949年5月23日
社員数
401人(2022年4月末、常勤役職員数)
事業内容
預金業務・融資業務・内国為替業務・外国為替業務・有価証券投資業務
地図
URL
https://www.takashin.co.jp/
確認日
2023.09.21

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ