父親譲りの好奇心 変化恐れず挑み続ける

社会福祉法人 喜勝会 理事長 小出 克元さん

Interview

2021.02.18

特別養護老人ホーム「一宮の里」。 ショートステイ、デイサービスの他、 介護に関する相談や指導も行っている=高松市一宮町

特別養護老人ホーム「一宮の里」。
ショートステイ、デイサービスの他、
介護に関する相談や指導も行っている=高松市一宮町

家族が安心できる施設に

4月に開設する地域密着型特別養護老人ホーム 「胡蝶の夢」=高松市一宮町

4月に開設する地域密着型特別養護老人ホーム
「胡蝶の夢」=高松市一宮町

4月、高松市一宮町に地域密着型特別養護老人ホーム「胡蝶の夢」がオープンする。「地域密着型」とは入所定員が 29 人以下で、自分らしい暮らしが慣れ親しんだ地域で送れるよう、家庭や地域との結び付きを重視する施設のこと。運営する社会福祉法人喜勝会の理事長・小出克元さん(62)は「入所者本人にゆったり過ごしてもらうのはもちろん、ご家族が安心できる施設にしたい」と意気込みを語る。

施設の名称は従業員から案を募って決めた。「『胡蝶の夢』は、夢と現実との間を行き来するといった意味の故事成語。入所者にとって、そんな“桃源郷”のような場所になればと思っています」。幕末から明治維新までを、医学の視点を交えて描いた司馬遼太郎の同名小説がある。「私が司馬遼太郎の大ファンだったことも少なからず影響していますね」と小出さんは笑う。

喜勝会は、特別養護老人ホーム「一宮の里」、ショートステイやデイサービスを提供する「花泉(はなのい)」の他、保育所と託児所も運営。コンセプトに掲げる「笑顔・安心・信頼」を実現するため、最も大切にしているのが「従業員が働きやすい環境づくり」だ。

介護や福祉といえば重労働という印象がある。だが、「いわゆる“サービス残業”は撤廃しました。有給休暇の全消化を目標に掲げ、取得率は 8 割を超えています」。さらに業界では珍しい「成果主義」を導入。経費削減や利用者へのサービス向上などで成果が上がればボーナスに反映させている。5 年前には、ワーク・ライフ・バランスに積極的に取り組んでいるとして、香川県から企業表彰された。「利用者に喜んでもらおうと、『ケーキバイキングをやろう』『ゲーム機を設置しよう』など、従業員自らがいろいろ考えて工夫するようになった」と小出さんは目を細める。

酸化チタンで抗ウイルス

セルコスモによる光触媒施工の様子

セルコスモによる光触媒施工の様子

小出さんには、福祉施設の理事長以外にも様々な顔がある。その中の一つが、建物などに抗菌・抗ウイルス施工を行う会社「セルコスモ」の社長だ。

昨年 4 月、大阪の知人から「こういうものを作ったので使ってみて」と消臭スプレーのサンプルが届いた。主成分は酸化チタン。光に当たると化学反応を起こし、菌やウイルスを無害化することを知り、ピンときた。現在のコロナ禍でニーズがあるのではと考え、「『俺、やるわ!』と販売担当を買って出ました」

酸化チタンの水溶液「光触媒コーティング剤」を壁や天井に吹き付ける抗ウイルス対策。8月から販売・施工を始めると問い合わせが殺到し、公共交通機関、商業施設、病院や学校など、県内だけでもすでに 100 カ所以上の施工実績を誇る。

「何にでも興味を持ち、すぐ実行したくなるタイプなんです。流行っている店を見ると『うらやましいなあ』とか『自分にも何かできないかなあ』と考えますね」。雑貨屋やマンション建設など、これまで様々な事業にチャレンジしてきた。30 代の頃には小売業に惹かれ、「ロードサイド型で低価格のジーンズショップを出したくなりました」。当時人気が出始めていたユニクロの手法を徹底的に研究すると、ジーンズショップ出店計画はさらに発展。ボウリング場、ゲームセンター、マンガ喫茶に居酒屋なども加わった複合施設を、賛同者とともに志度町(現・さぬき市志度)でオープンさせた。改めて自身をこう分析する。「好奇心旺盛な性格は血筋だと思います」

「売れ続ける商品はない」

尊敬する経営者が 3 人いるという。1 人目はウォルト・ディズニー。「みんなに夢を与え、面白いことをたくさん教えてもらいましたから」。2 人目は京セラ創業者の稲盛和夫さん。経営哲学「京セラフィロソフィ」は京セラに勤めた経験もある小出さんの、人生のバイブルになっている。そして 3 人目は……「やっぱり父親ですね」

父・勝さん(故人)は 1970 年、脱サラして婦人服用の生地を扱う繊維問屋「コスモ商事」を創業したのを皮切りに、宝石商や衣料品メーカーなど次々と事業を展開していった。業績が伸びていても、「口癖は『未来永劫、売れ続ける商品なんてない』。これだ!と思う商品が見つかれば、門前払いされてでも『売らせてほしい』とメーカーに通い続けました」。2002 年には福祉事業にも参入し、喜勝会を創設。決して変化することを恐れなかった。「『当たって砕けろ』を地でいく姿は本当にすごかった」と在りし日の父に思いを馳せる。

2 年前に還暦を迎え、「実はそろそろのんびりしようかと思っていたんです」。しかし、懇意にしている 20 歳近く年上の社長から「仕事が楽しく、今が人生で一番充実している」と聞かされ、「私なんて、まだまだだな……と痛感した」と頭をかく。「これからも父親譲りの好奇心で、常に新しいものに目を向け、チャレンジし続けようと思っています」

篠原 正樹

小出 克元|こいで かつもと

略歴
1958 年 高松市出身
1977 年 大手前高松高校 卒業
1983 年 日本大学商学部商業学科 卒業
     京セラ株式会社 入社
1986 年 コスモ商事株式会社 入社
1998 年 せとうちデリバリーサービス株式会社 取締役
2001 年 コスモ商事株式会社 代表取締役
     株式会社セルコスモ 代表取締役
2016 年 社会福祉法人喜勝会 理事長

社会福祉法人喜勝会

住所
香川県高松市一宮町 875 番地
代表電話番号
087-851-9445
運営施設
一宮の里(特別養護老人ホーム他)、花泉(ショートステイセンター他)、わくわく保育所(企業主導型施設内託児所)、胡蝶の夢(地域密着型特別養護老人ホーム・3 月開設)
地図
URL
https://www.kishokai.com/
確認日
2021.02.18

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