無限のフィールドで 「できない」に挑む

レクザム 副社長 住田 博幸さん

Interview

2018.01.04

「屋島レクザムフィールド」の愛称で昨年4月にリニューアルオープンした高松市屋島競技場=高松市屋島中町

「屋島レクザムフィールド」の愛称で昨年4月にリニューアルオープンした高松市屋島競技場=高松市屋島中町

新たなフィールドに照準

キャッチコピーは「フィールドは無限大」。主力の電子機器や、医療用機器の設計開発、金属加工、スキーブーツや地ビール製造など、文字通り無限のフィールドを舞台とするレクザムは昨年、創業以来初となる売上500億円の大台を大きく上回った。「前年は4000万円ほど足りなかった。次こそはと狙っていました」。副社長の住田博幸さん(70)にとって「500億」は特別な数字だった。
リスクのないところに利益は生まれない 屋島レクザムフィールド会議室

リスクのないところに利益は生まれない
屋島レクザムフィールド会議室

入社以来、技術者として開発現場の最先端でものづくりに邁進してきた。副社長になった2000年、会社をもっと飛躍させたいと「日本一の中小企業になる」という大きな目標を掲げた。

「売上だけが全てではないが、『日本一なら500億だろう』と数字を定めました。中国、タイ、チェコなど海外にも拠点が広がり、ひょっとしたら『日本一』に近づけたのかもしれませんね」

目標をクリアした住田さんだが、ものづくりへの情熱は一向に冷めていない。一昨年、愛媛県西条市のパナソニック系列の工場を買収。延べ床面積8万m²超の広大な工場で、“水素”の新事業に乗り出した。「水素の貯蔵から、水素を活用する燃料電池などの応用製品まで、一大拠点を目指して水素サプライチェーンを確立していきたい」
昨年10月に新工場が落成した 蘇州隆祥電子有限公司 中国・江蘇省

昨年10月に新工場が落成した
蘇州隆祥電子有限公司
中国・江蘇省

さらに中国・雲南省では「これまた全然違うことをやり始めました」。豚や魚の養殖などに使われる飼料の新しい添加物として“酵母”に着目した。「これまでは病気を防ぐために抗生物質などが使われていたが、酵母はそれに替わる安全安心な添加物。食に関わることなので将来の市場性も高いと見ています」

年間5000トンの酵母をつくるプラントを2年前から建設。今年から本格的に製造を始める。「まずは中国で販売し、東南アジアや欧米にも広げたい。酵母は食品や化粧品にも応用できるので、今後脚光を浴びてくる。3年後の中国での株式上場が目標です」

古希を迎え、「後継者にきちんとバトンタッチするのが私の次の仕事」と話しながらも、「言うこととすることが全く違いますよね」と笑い、新たなフィールドに目を輝かせる。

創業家の右腕として

「空を自由に飛びたいと思っていたんです」。少年時代の夢はパイロット。高松高専を卒業後、航空会社を目指したこともあった。だが1971年、23歳の時にたまたま隆祥産業(現レクザム)創業者の岡野馨社長と出会って見初められ、「気がつくと辞令が出ていて、そのまま入社しました。ご縁というのはそういうものなのでしょうね」

合成樹脂材料の卸しなどが主軸だった会社に、電子工学の新たな血を注ぎ込んだのが住田さんだった。入社して最初に手掛けたのはボイラー制御装置。失敗を繰り返しながらも1年以上かけて、トランジスタを使ったオール電子式コントローラーを業界に先駆けて開発した。「自分がつくったコントローラーで大きなボイラーが動き出し、炎をあげて燃え始めた。あの時の感動は今でも忘れられません」

眼科医院などで視力を測る検眼器は、後発メーカーながらも海外で高いシェアを誇る。光学や画像処理などの独自技術を駆使し、目の屈折率や眼圧を瞬時に測定する。「以前チェコを訪れた時、町のメガネ屋さんをふと覗いたら、レクザム製の検眼器が置いてあった。『うお~、こんなところにもあるんや』と興奮して涙が出そうになりました」

磨き上げた技術が形になり、お客さんに使われて役に立つ。それがものづくりの醍醐味だと住田さんは話す。「始まりは岡野さんとの偶然の出会いでしたが、今思えば結果オーライ。この会社ではいろんなことに挑戦させてもらえました」

現社長は3代目の岡野晋滋さん。半世紀近くにわたり、右腕として創業家を支え続けている。

次代の技術者たちへ

「屋島レクザムフィールド」の愛称で生まれ変わった高松市屋島競技場。6000人を収容できるスタンド、瀬戸内海をイメージした青色のトラックや、サッカーやラグビーもできる天然芝のフィールドに、大型ビジョンも備える。「多くの人に幅広く利用してもらい、親しみのある競技場になってほしいですね」
メインスポンサー契約を結んだ レクザムの岡野晋滋社長(左)と カマタマーレ讃岐の 山下幸男社長(当時)

メインスポンサー契約を結んだ
レクザムの岡野晋滋社長(左)と
カマタマーレ讃岐の
山下幸男社長(当時)

県営野球場は「レクザムスタジアム」、県民ホールは「レクザムホール」。ネーミングライツ(命名権)などの地域貢献活動もまた、レクザムにとってのフィールドの一つだ。今年はさらに、財政基盤の強化を目指すカマタマーレ讃岐のメインスポンサーに名乗りを上げた。「レクザムの本社は大阪だが、製造拠点は創業者の地元でもある香川です。お世話になった故郷を何とかして盛り上げたい。それに、レクザムの名前が表に出ることは社員の励みにもなります」

会社の土台を築いてきた香川工場は今年、操業開始50周年の節目を迎える。「10月には社員と家族による記念の大運動会を、この屋島レクザムフィールドでやりたいと計画しています」

リスクから逃げない。できないと言わない。技術者としてその信念だけは曲げず、「できない」に挑み続けてきた。次代を担う若き技術者たちへ、こうメッセージを送る。「リスクなくして利益はない。チャレンジなくして新製品は生まれない。失敗を恐れずあきらめず、常に挑戦していってほしいですね」

篠原 正樹

住田 博幸 | すみだ ひろゆき

略歴
1947年 高松市生まれ
1968年 高松工業高等専門学校(現香川高専高松キャンパス)電気工学科 卒業
    地元百貨店勤務を経て
1971年 隆祥産業(現レクザム)入社
1985年 取締役 電子事業部長
1989年 常務取締役 香川工場長
2000年 取締役副社長 生産本部長
写真
住田 博幸 | すみだ ひろゆき

株式会社レクザム

住所
香川県高松市香南町池内958
代表電話番号
087-879-3131
設立
昭和35年1月
社員数
1,320名 [2023年4月現在]
事業内容
エレクトロニクス応用製品(電子コントローラ、医療機器他)、半導体製造装置関連機器、自動車部品、精密機械加工品、スキーブーツ、地ビール、乾燥剤などの開発・設計・製造・販売
所在地
本社:大阪市中央区南本町2-1-8
TEL.06・6262・0871
香川工場:高松市香南町池内958
TEL.087・879・3131
設立
1960年1月
代表者
代表取締役社長 岡野晋滋
資本金
4,880万円(レクザムグループ総資本金 91億円)
事業内容
エレクトロニクス応用製品(電子コントローラ、医療機器他)、半導体製造装置関連機器、自動車部品、精密機械加工品、スキーブーツ、地ビール、乾燥剤などの開発・設計・製造・販売
グループ会社
レクザム電子四国、レクザム金属岡山、
蘇州隆祥電子・深圳先隆電子・
保山九隆酵母・昆明隆祥化工(中国)、
レクザムタイランド、レクザムチェコ 他
地図
URL
https://www.rexxam.co.jp
確認日
2023.09.21

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