「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑨

野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸

column

2022.12.01

「あん餅雑煮」をまだ食べたことが無いのですが、本当においしいのでしょうか?

讃岐の食文化の特異性を語る上で、「あん餅雑煮」の存在を外すことはできません。一般的なあん餅雑煮のレシピは、ダイコン、金時ニンジン、サトイモ、豆腐などを、イリコ出汁で煮込み、白みそで味付けた汁に、あん餅を入れ、最後に青のりを振りかけていただきます。このように、とても一般的な食材を組み合わせただけなのですが、出来上がったあん餅雑煮は筆舌に尽くしがたく、比類ない美味なる食べ物となります。

ただ、入れる具材や味付けは家庭によって異なっており、レシピに正解はありません。実際、どのレシピが美味なのかと疑問に感じ、様々なあん餅雑煮を作って食べてみたのですが、どのような具材を入れるにせよ、麦みそ、赤みそ、すまし汁など、どのよう味付けの出汁にせよ、塩味の出汁に甘いあん餅を入れることで、甘さと塩味のバランスが取れたいずれも甲乙つけがたい一品となりました。

毎年、年末年始にSNSで#あん餅雑煮と検索すると、「今年はあん餅雑煮が食べられない」「実家のあん餅雑煮が食べたい」など、県外で年越しをしている香川県出身者の嘆きが大量にヒットします。「まんばのけんちゃん」や「葉ゴボウの炊いたん」など讃岐を代表する食文化は、いずれも独特の味覚があるのですが、中でもあん餅雑煮は、正月という一年の節目のタイミングで食べること、家族や親せきがそろって食べることなど、記憶に深く刻み込まれた食文化であることを象徴しているのではないでしょうか。

かく言う筆者も、香川県に移り住んで約10年間、あん餅雑煮の存在を知りながらも、口にすることはありませんでした。あん餅雑煮を初めて口にした時の「雑煮のように見えて、実は『ぜんざい』のようなスイーツの如き食べ物がこの世に存在するのか」という衝撃は、今でも忘れることができません。それ以来、冬至から松の内が明けるまでは、毎日と言っても過言ではないくらいあん餅雑煮をいただくような生活になってしまっています。

※様々な調査から、香川県で正月にあん餅雑煮を食べているのは、半数以上の世帯であると推測できます。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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