「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑯

野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸

column

2023.07.06

讃岐の食文化を端的に表現してください。(前編)

讃岐の食文化に携わっていると、とても多くの方からこの質問を投げかけられます。讃岐の食文化は、ある意味とても複雑で、端的に表現することはとても難しいといえます。ただし、讃岐の食文化にはストーリーがあり、それを理解した上で、讃岐の食文化の2大要素である、「米を極限まで節約」と「明確な晴(ハレ)と褻(ケ)の存在」の考え方を把握すると、ある一定の理解にたどり着けるのかと思います。今回、前後編に分けて、讃岐の食文化を端的に表現してみたいと思います。

1 米を極限まで節約する食文化

讃岐の食を語る上で、香川県の少ない降水量という気象条件と、狭い土地という地理的条件をはずすことができません。古事記には、香川県が「飯依比古」と表現されるように、古くからの米どころであったことが推測できますが、限られた農地、そして、干ばつと降雨により、米の収穫は安定しませんでした。そこで、温暖で乾燥した気候を生かした冬場の麦作と、夏場の稲作を組み合わせた二毛作が完成されていました。

現在、讃岐の郷土料理として、讃岐うどんが筆頭に数えられますが、これは、米の代わりに麦を活用してきた食文化の名残と言えます。長年培われた食文化は、「うどんをはじめとする麦類の消費量の多さと、米の消費量の少なさ」(全国家計調査(総務省統計局))という統計結果に表れています。

また、讃岐の食文化では、ご飯料理、要は「味付けご飯」のバリエーションの多さも特徴です。そして、米を使った郷土料理である、押し抜き寿司、ばら寿司、炊き込みご飯等には、「米以外の食材をたくさん使用し、米を極限にまで節約したレシピ」という一貫したコンセプトが存在します。

押し抜き寿司では、外からはご飯しか見えないように、中心部にたくさんの具材を入れます。炊き込みご飯では、驚くほどたくさんの野菜を入れてご飯を炊きます。正月にいただく「あんもち雑煮」も、「もちに小豆を入れることで、米を節約する」という視点でとらえると、この延長にあるとも考えられます。

長年にわたり、米を極限まで節約してきた結果、讃岐の食文化は、さぬうどんやあんもち雑煮に代表される、他の地域に類を見ない独特の文化へと進化したのだと考えられます。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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