共感で広がった新たなファンの輪

さぬきシセイ 代表取締役社長 富田 安加里さん

Interview

2023.03.02

物流と冷凍技術の発達で数年前まで冷凍麺に押され気味だった乾麺だが、コロナ禍でステイホーム需要が高まり「安くておいしくて長期保存できる」と見直されつつある。「近年は売れ行きも好調です。全国いろんな乾麺がありますが、世界にも通用する『讃岐』の知名度は極めて大きい。ブランド化に取り組んだ先達の恩恵だと思っています」。

うどんを中心にそうめんやひやむぎの製造も手掛け、原材料は小麦・塩・水のみ。シンプルでごまかしがきかないだけに、おいしさと質にはこだわっている。天日干ししていた乾燥工程を父の代に機械化し、国内有数の生産能力を確立。2022年に取得したFSSC22000は、安全安心への取り組みの証だ。課題は人材不足だが、当面は今の体制で生産能力を高めるべく、設備投資にも力を入れている。

こうした努力が好調な売れ行きを支える半面、小売店の棚の入れ替えに伴って、麺類の流通には「シーズンオフ」がある。市場ニーズの動向も年によって違い、通年でバランスのいい在庫管理はなかなか難しい。余剰分は粉砕して粉に戻したり子ども食堂などに提供したりと、なるべく破棄しないよう努めてきたが、それでも余ることはある。

そんな時、若手社員から「クラウドファンディングで販売してみては」という案が出た。「私たちの業界とは別世界の話だと思っていましたが、共感をキーワードに展開するフォーマットが面白そうで、破棄を回避するだけでなく当社のPRにもなると感じました」。

「食品廃棄を減らそう」というコンセプトの下、前シーズンの余剰品を格安で販売するクラウドファンディングに集まった支援者は1060人。目標支援額30万円を大きく上回る約400万円を、わずか1カ月で達成した。乾麺業界でクラウドファンディングを実施した例は珍しく、同業他社からも多くの関心が寄せられたという。

反響の大きさとともに、通販などの直売販路を持たない同社にとっては、消費者と直接つながる貴重な場となった。「予想以上に多くの賛同が寄せられて驚きましたし、おいしかった、また買いたい、という声が励みになりました。これをきっかけにファンが増えてくれたらうれしいですね」。
独自のメニューブックも制作

独自のメニューブックも制作

「ゆでるのに時間がかかってめんどくさいと敬遠された数年前に比べ、消費者の意識の変化を感じます」と富田さん。保存性の高さ、子どもにも安心して与えられる無添加の安全性を打ち出しつつ、海外への展開も視野にメニュー提案など食べ方を広げる情報発信にも意欲を見せる。「昔ながらの知恵が息づく乾麺の魅力をこれからも大切にしながら、業界全体が元気づいている今のチャンスを生かしたい」と語った。

戸塚 愛野

富田 安加里 | とみた あかり

1974年 高松市生まれ
1992年 高松商業高校 卒業
1996年 中央大学商学部 卒業
     市川甚商事 入社
1998年 さぬきシセイ 入社
2005年 代表取締役社長 就任

株式会社さぬきシセイ

住所
香川県高松市香南町由佐580-1
代表電話番号
087-879-2279
事業内容
乾麺製造・販売
資本金
1,000万円
生産設備
日産 17t(170,000食)
地図
URL
https://sanukishisei.com/
確認日
2023.03.02

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