超インテリアの思考

著:山本 想太郎/晶文社

column

2023.12.07

私たちは誰しも住環境に対して、日頃の生活の上で素朴な疑問を持つことがよくあると思います。この本で取り上げているそんな疑問を少しピックアップしてみますと、天井はなんの役に立っているのか、トイレにはなぜフタがあるのか、なぜ壁に絵を飾るのか、なぜ古い建物には抗いがたい魅力があるのかなどですが、著者はここから現代の社会におけるインテリア、建築、都市の変貌を描き出します。そして、タイトルにある超インテリアとはどういった意味があるのでしょうか。著者によると超インテリアは従来のインテリアのようにひとつの室内に閉じ込めたものではありません。インターネットやスマホなど高度な情報ツールを手にした私たちが現在身を置いている環境とは、ネットの地図で必要な種類のお店やそこに行く経路がハイライトされた都市や、コロナ以来特に顕著になったいつでも他の空間とつながってコミュニケーションがとれるプライベートスペースといったようにハードウェアによって縛られず、特定の空間や場所にも制約されない、いわばインテリアを拡張したような環境像、それが超インテリアであると著者は新しい言葉を提唱します。

これから日本社会には明らかにインテリアの時代がおとずれようとしていると、建築の設計が本業の著者でさえ認めざるを得ないといいます。そして、その超インテリア時代の背景にあるものを4つあげます。一番目はソトとウチの解体、二番目は建てるべきではない社会への移行、そして「普通さ」の反撃、最後にコミュニケーションの多様化です。この中で一番注目したいのは二番目にあげた建てるべきではない社会への移行です。総務省の発表では2018年時点での日本の空き家率は13.6%。5年が経過した現在はもちろん増えているし、その上昇率は加速しています。東京都心のオフィスビルも空室率は上昇しているといいます。大型再開発やタワーマンションを建て続けるということは、これからは相当な覚悟が必要であるし、建てるべきではないといいます。これには普通の住宅も含まれます。

リノベーションは新築の劣化版ではないのです。紙幅が尽きたので詳しくは本書をお読みください。

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
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宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

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