ものづくりの喜びと誇り 学生たちに伝えたい

四国職業能力開発大学校 校長 中山 喜萬さん

Interview

2016.12.01

省エネレース「ワールド・エコノ・ムーブ」に出場した燃料電池自動車と=丸亀市郡家町の四国職業能力開発大学校

省エネレース「ワールド・エコノ・ムーブ」に出場した燃料電池自動車と=丸亀市郡家町の四国職業能力開発大学校

燃料電池で走るエコカーレースで2年連続準優勝。木で作った壁の強度を競う大会で総合優勝。数々のものづくりの競技会で全国にその名を轟かせているのが、丸亀市の四国職業能力開発大学校(愛称・四国ポリテクカレッジ)だ。「知識だけでなく、実践を通して技術を学ぶのが我が校の最大の特長です」

一昨年から校長を務める中山喜萬さん(68)もまた、ものづくりに魅せられた一人だ。かつては研究者として松下電器産業(当時)や大阪大学で最先端の技術を追い続けてきた。「社会の技術革新のスピードは極めて速い。学生には技術の変化に対応できる人材に育っていってもらいたいですね」

技術をみっちり学んだ四国ポリテクカレッジの卒業生は、企業で即戦力として活躍できるというのが最大のウリで、ここ数年の就職率は100%を誇る。中山さんは「ここで学んだことに誇りを持てるような大学校にしていきたい」と、将来の技術を担う若者たちと共にものづくりの道を突き進んでいく。

東大など抑え、優勝

燃料電池で走るエコカーレースで2年連続準優勝。木で作った壁の強度を競う大会で総合優勝。数々のものづくりの競技会で全国にその名を轟かせているのが、丸亀市の四国職業能力開発大学校(愛称・四国ポリテクカレッジ)だ。「知識だけでなく、実践を通して技術を学ぶのが我が校の最大の特長です」

一昨年から校長を務める中山喜萬さん(68)もまた、ものづくりに魅せられた一人だ。かつては研究者として松下電器産業(当時)や大阪大学で最先端の技術を追い続けてきた。「社会の技術革新のスピードは極めて速い。学生には技術の変化に対応できる人材に育っていってもらいたいですね」

技術をみっちり学んだ四国ポリテクカレッジの卒業生は、企業で即戦力として活躍できるというのが最大のウリで、ここ数年の就職率は100%を誇る。中山さんは「ここで学んだことに誇りを持てるような大学校にしていきたい」と、将来の技術を担う若者たちと共にものづくりの道を突き進んでいく。
全国総合優勝した「木造耐力壁ジャパンカップ」=9月、静岡県

全国総合優勝した「木造耐力壁ジャパンカップ」=9月、静岡県

四国ポリテクカレッジは毎年、技術を競う様々な大会に積極的にエントリーしている。今年9月には「木造耐力壁ジャパンカップ」に出場した。木の良さを最大限生かした耐力壁の実用性を競うもので、強度、設計、構造、創意工夫やコストパフォーマンスなど技術の総合力が試される大会だ。住宅関連企業や工学系の有名大学など全国から10チームが参加した。「東京大学はプロの大工とチームを組んで勝負に出てきました。でも、バランスよく得点を重ねた我が校のチームが総合優勝を果たしました。私も本当にうれしかった」

昨年7月に開かれた「若年者ものづくり競技大会」では、ITネットワークシステム管理部門で第1位にあたる金賞(厚生労働大臣賞)を受賞した。手作り燃料電池自動車の省エネレース「ワールド・エコノ・ムーブ」では2年連続で準優勝に輝いた。

「競技会に出て、ある程度の成績を収めた学生はとてもたくましくなります。目に見える結果に大きな自信がつくんでしょうね」

「カーボンナノチューブ」を追求

船が大好きな少年だった。「小さい頃から船の絵ばかり描いていました。大きな船を造る仕事に就きたいとずっと思っていました」

大阪府立大学に進み、電気工学を学んだ。造船会社に就職したかったが、担当教授に強く勧められ、松下電器産業の研究所に入った。「ここで技術の最先端を追究していく面白さに目覚めました」

大容量の記憶素子「ホログラムメモリー」の開発などを手掛け、研究者としてのキャリアがスタートした。「仮説を立てて実験で検証し、理論的にサポートする。競争相手も多く、自分がリードできていれば良いが、先を越されると悔しい。そういう世界です」

7年後、母校の大阪府立大に助手として戻り、その後、シカゴ大学の研究員や大阪大学大学院の教授などを務めた。「学生たちと共に取り組む研究は毎日が悪戦苦闘でした。思うような結果が出るのは半年に1回あれば良い方。それを苦にしていたら研究者なんて続けられません」

20年間にわたり没頭した研究がある。「カーボンナノチューブ」だ。カーボンナノチューブとは、炭素原子が網目のように結びついて筒状になった、髪の毛の5万分の1程の「炭素の繊維」だ。筒の巻き方で導電性が変わり、空気中でも750度の熱に耐え、鋼鉄の20倍を超える強度と柔軟性を併せ持つ。将来、ナノロボットから宇宙エレベーターのケーブルまで広く活用できるのではと、世界的にも注目されている最先端の新素材だ。「研究者というのは誰も足を踏み入れたことのない領域へ行きたいものです。サイエンスとして学問の確立と、実社会で事業化されるまで品質を上げること。この両輪を常に目指してきました」

生口島でミカンづくり

カーボンのナノ工学という新しい学問分野に道筋をつけ、2013年に定年退職した。

「海が見えるところで暮らしたいという夢があったんです」。退職後、大阪から瀬戸内海に浮かぶ広島県の生口島に移り住み、ミカンやレモンを作りながらのんびり島暮らしを始めた。すると、大阪大学から「四国ポリテクカレッジで後進にものづくりの精神を伝えてほしい」と声が掛かり校長になった。「まだお役に立てるんだろうか」と不安もあったが、「やはり僕は学生たちと接しているのが好きな人間なんだなあと改めて気づかされました」

授業のある平日は丸亀で寝泊まりする。週末は生口島の自宅に戻り、ミカンづくりに精を出す日々だ。

世界の中で生きている

実習に取り組む学生たち

実習に取り組む学生たち

「今ですら定員割れする年もあります。将来を展望すると、そう明るくはないんです」

少子化に伴う18歳人口の減少に加え、3年後には文科省が実践的な職業教育を行う専門職業大学(仮称)を立ち上げる計画もある。

どうすれば選ばれる大学校になるのか。中山さんが強調するのは「独自性」だ。
実習に取り組む学生たち実習に取り組む学生たち
「例えば香川大学に情報系の職業コースができればネームバリューではかないません。それに、香川大学と同じような授業内容で競う必要もないと思っています」

現在、「校長プロジェクト」と題して様々な試みにチャレンジしている。教員が一方的に教えるのではなく、学生たちが能動的に課題に取り組む「アクティブラーニング」や、学生が望む授業がきちんと行われているかどうか、教員を検証する評価システムも作った。「社会が要求している技術や人材はどういうものなのか、常にアンテナを張っておかなければなりません。学科のスクラップ&ビルドなど、変化をいとわず、合理的に教育訓練の質を高めていこうと考えています」

卒業生のほぼ半数は香川の企業に就職している。学生たちには地元経済への貢献を期待する一方で、こんなメッセージを送る。

「香川で勤めていても、アジアや世界の中で生きているという意識を持っていてほしい。広い視野で社会を見つめられる伸びしろのある人材になっていってほしいですね」

編集長 篠原 正樹

中山 喜萬 | なかやま よしかず

1948年 岡山県生まれ
1972年 大阪府立大学工学部 電気工学科 卒業
    松下電器産業 入社
1979年 大阪府立大学工学部 助手、講師、助教授
1992年 シカゴ大学 文部省在外研究員
1995年 大阪府立大学工学部 教授
2000年 大阪府立大学大学院 工学研究科 教授
2006年 大阪大学大学院工学研究科 教授
2013年 大阪大学 名誉教授
2014年 四国職業能力開発大学校 校長
写真
中山 喜萬 | なかやま よしかず

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構香川支部 四国職業能力開発大学校(四国ポリテクカレッジ)

所在地
丸亀市郡家町3202
TEL:0877-24-6290/FAX:0877-24-6291
専門課程(2年)
生産技術科
電子情報技術科
電気エネルギー制御科
住居環境科
応用課程(2年)
生産機械システム技術科
生産電子情報システム技術科
生産電気システム技術科
地図
確認日
2018.01.04

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