香川の石の産業と文化を継承する高校の専門コースを!

香川大学四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構 長谷川修一

column

2023.10.19

香川県は、古来からの石材の産地です。旧石器時代から弥生時代にかけて瀬戸内を席巻したサヌカイト(讃岐岩:安山岩)石器、古墳時代には県内だけでなく畿内地方の石棺に使用された鷲ノ山石(安山岩)や火山石(凝灰岩)、屋嶋城等の古代山城に使用された讃岐岩質安山岩、中世の石造物に使用された天霧石等の凝灰岩、近世から桂離宮の石灯籠等に使用された豊島石(凝灰岩)、江戸時代から大坂城の石垣等に採石され、日本一の石材の庵治石に代表される花崗岩、皇居の東庭の敷石に採取された由良石(安山岩の一種)、世界を魅了したサヌカイト楽器と、讃岐は世界でたぐいまれな多様な石の文化があります。

讃岐では、その時代のニーズと加工技術によって、石の文化の主役となった石材は時代とともに変わりましたが、その伝統は旧石器時代から現代まで脈々と受け継がれてきました。石の文化は石の産業によって支えられてきたのです。しかしながら現在、讃岐の石の産業は存続の危機に見舞われています。豊島石と由良石の丁場は閉山状態で、鷲ノ山を採石・加工する会社は1社のみとなっています。サヌカイト楽器製作の後継者は一人だけです。県内では安い外国産の石材が至る所で使われており、日本一の庵治石の石材業も年ごとに減少し、事業承継が課題になっています。

石の文化を継承するには、石の産業の人材育成が喫緊の課題です。そのためには高校で石の基本的な性質から工芸の基礎を学ぶことができる専門コースが必要ではないでしょうか。高校で石の加工技術の基本を身に着け、大学でデザインとアートを深めることができれば、香川の石の産業を継承し、発展させることができるのではないでしょうか。

香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一

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香川大学創造工学部 教授 長谷川 修一

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