技術力磨き 一歩でも前へ

西日本高速道路エンジニアリング四国 社長 矢野 寛さん

Interview

2018.11.01

道路性状測定車「イーグル」(後方右)と、イーグルを進化させた簡易路面調査システム「スマートイーグル」 =高松市楠上町の西日本高速道路エンジニアリング四国楠上社屋

道路性状測定車「イーグル」(後方右)と、イーグルを進化させた簡易路面調査システム「スマートイーグル」
=高松市楠上町の西日本高速道路エンジニアリング四国楠上社屋

恒例の“新技術プレゼン”

全社員が参加する業務改善・改革発表会=高松市

全社員が参加する業務改善・改革発表会=高松市

四国内の高速道路の点検・補修などを行う西日本高速道路エンジニアリング四国には、恒例の一大イベントがある。全社員約400人が参加し、新製品や新技術をプレゼンテーションする「業務改善・改革発表会(業研)」だ。社員らにとって「業研で発表すること」が、日々の大きなモチベーションになっている。

7月に行われた今年の業研で発表されたのは過去最多の99編。「次回は発表が一日で収まりきらないのでは、というのが今の悩みのタネです」。今回初めて、社長として業研を見つめた矢野寛さん(61)はうれしい悲鳴をあげる。

業研から次々と新たな技術が生まれている。高精度のセンサーカメラで、路面のひび割れや轍(わだち)の深さ、平坦性などを測定できる「イーグル」は、簡易型の「スマートイーグル」に進化。専用の車両に加え、ワゴン車のような普通車両でも、システムを積み込むことで同様の検査が行えるようになった。「さらに、解析データをクラウド上に置くことで、より速やかなデータ共有が実現した。システムを簡易にしたことで、高速道路だけではなく、一般道でも使えるような展開を考えています」

高速道路でトンネルを走っていると、壁面に白いタイルが張り巡らされていることに気づく。「車のライトの反射でドライバーの視界を明るくする目的です。しかし、施工から時間が経ち、タイルが剥がれ落ちて車が踏んでしまうといった問題が出ています」。古くなったタイルは落下する前に撤去しなければならない。タイルの周囲をカッターで切断し、一枚一枚剥ぎ取っていくという気の遠くなるような作業だが、やはり新たな技術が重労働の軽減を実現させた。
遠赤外線ヒーターによるタイル撤去=高知自動車道

遠赤外線ヒーターによるタイル撤去=高知自動車道

約250℃に熱した遠赤外線ヒーターをタイルに近づけて加熱し、接着剤を溶かしてタイルを浮き上がらせるというもの。これだと一度に数十枚のタイルを容易に剥ぎ取ることができる。「熱すれば、あんなに簡単に剥がれるのかと、目の付け所に感心した」と矢野さんは唸りながら、こう加える。「アイデアや発想の原点は『現場』にある。いかに現場の不具合を解消し、効率化させていくか。常に『現場力』を高めていかなければならないと思っています」。遠赤外線ヒーターによるタイル撤去は現在、高知自動車道で作業が進められている。

「みんなで先を読もう」

アイデアや発想 原点は現場にある

アイデアや発想 原点は現場にある

出身は愛媛県今治市。愛媛大学工学部を卒業後、「大きな仕事をやってみたい」と1980年、日本道路公団(当時)に入社。東海道沿線を中心とした高速道路建設、保全などに携わり、「現場力」を磨き続けてきた。

好きな言葉は「前向き」。厳しかった先輩から学んだ姿勢だ。「高速道路の用地交渉も設計協議もストップするのはよくあること。でも、そこで立ち止まったままでは何も発展しない。どう打開していくのか、どんな人間関係をつくっていくのか・・・・・・一歩でも前へ行こうという気持ちが何よりも大切だと思う。先輩からは『やってなんぼだぞ』とよく発破をかけられ、時には涙を流しながら食らいついていったものです」。学生時代はラグビーに熱中していた。「まさに『前へ前へ』の精神です。そこから来ているのかもしれないですね」。矢野さんは笑いながら、懐かしそうに話す。

今年6月27日に社長に就任。そのわずか10日後、社内に衝撃が走った。西日本の広範囲を襲った豪雨災害。土砂崩れで高知道上り線の立川橋が崩落した。「最初に聞いた時は、こんなことが起こるのかと驚きました」

自分たちにできることは何なのか。矢野さんはすぐさま社員を招集し、応急復旧の指示を出した。「速やかに交通を確保するために何が必要で、どんな支援ができるのか。社員らには『とにかく、みんなで先を読もう』と呼びかけました」

通行止めになっていた区間は1週間ほどで下り線を使った対面通行ができるようになった。「高速道路は電気や水道と同じで、止まったら大変なことになる。改めて、重要な社会インフラに携わる使命を痛感した」と口元を引き締める。

技術は裏切らない

働き方改革が叫ばれる中、業務の効率化、役割分担、人材の活用など「もっと工夫して業務のやり方を変えていきたい。社長になり、一番に取り組むべき課題だと感じている」と話す。

働き方を変える新技術が今、出番を待っている。「冬用タイヤ自動判別システム」。車のタイヤを高感度カメラで撮影し、溝の形状から冬用タイヤかどうかを判別する。これまでは高速道路のインターチェンジやサービスエリアで、スタッフが一台一台車を停め、目で確認していたが、新システムだと大幅な時間短縮や労力の軽減を期待できる。「このシステムは我が社が得意中の得意としている『画像判読技術』を活用したもの。昨年発表したが、精度をさらに高めたので、全国的に普及する可能性を秘めていると思う。今年は勝負の冬ですね」

技術は決して裏切らない。それが矢野さんの信念だ。「技術力は我が社の原点。人口減少が進む四国に光を当てられるよう、もっともっと技術力を高めていきたいと思っています」

篠原 正樹

矢野 寛 | やの ひろし

1956年 愛媛県今治市生まれ
1975年 愛媛県立松山東高校 卒業
1980年 愛媛大学工学部 卒業
    日本道路公団 入社
2012年 西日本高速道路株式会社 技術部長
2013年 西日本高速道路エンジニアリング四国株式会社 常務取締役
2018年 代表取締役社長

西日本高速道路エンジニアリング四国株式会社

住所
香川県高松市花園町三丁目1番1号
代表電話番号
087-834-1121
設立
1992年10月27日
社員数
402人(2019年4月1日現在)
事業内容
高速道路の建設・維持管理に係る構造物及び設備等の調査・設計・施工管理・点検・補修工事 他
資本金
6000万円
地図
URL
http://www.w-e-shikoku.co.jp/
確認日
2019.09.14

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