簡単な機器と方法で、薬の血中濃度がわかる

血中濃度測定システム りつりん病院ほか

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2018.12.06

同じ薬を同じ分量飲んでも、薬の効き方は人によって差がある。医療の現場では、血液中の薬物濃度を測定することで薬が有効に働いているかどうかを判断し、個々の患者に適した投与量や方法を設計する手法(TDM)がある。この手法をより簡単に実施するためのシステム開発に2009年から取り組んでいるのが、徳島大学薬学部・土屋浩一郎教授、就実大学薬学科・渡邊政博助教、りつりん病院薬剤科長・阿部武由さんらのチームだ。

それぞれの薬の効果が適切に発揮されるためには、血中薬物濃度が適正な範囲内に収まっている必要がある。(グラフ参照)。患者の血中薬物濃度を測定し、患者個人に合わせて薬の量を調整する方法は1970年代から確立されていた。しかし、測定前の処理が煩雑な上、測定機器も高額なため、なかなか医療現場で普及しなかった。そこで、少量の血液から簡単に測定でき、小型化して個人でも買えるぐらい安価なシステムの開発を目指して研究を始めた。

システムに必要なのは、指先から血液を採取する器具と、一滴ほどの血液から薬物濃度を測定できる機器。そして、濃度のデータからその人に最適な薬の量を解析するソフトだ。私たちが薬を飲むと、服用した回数に応じて血中薬物濃度は高くなっていくが、ある時点で濃度変化が一定になる。この変化を1回の測定値があれば推定できるのがソフトの画期的な点だ。研究では、通常の抗生物質では効かない耐性菌の治療に使われる薬への適用を目指してデータを収集し、精度を高めていった。

現在ソフトが完成し、血液採取する器具と測定機器の試作品もある。阿部さんは「製品化に向けて販売・医療器具申請を担う製造販売会社、ビジネスプランをまとめ製造販売会社への橋渡しを行うビジネスパートナーを探している。できれば地元の企業と連携していきたい。将来的には、より多くの薬について測定・解析できるようにしたい」と意気込む。

薬局などで手軽に血中薬物濃度を測ることができれば、飲み忘れのチェックや必要な量以上に薬を投与することもなくなるため、医療費の削減にもつながると期待する。

【問い合わせ】JCHOりつりん病院
高松市栗林町3-5-9
TEL:087-862-3171(担当:阿部さん)
abe-takeyoshi@ritsurin.jcho.go.jp

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