“現場知る強み”活かし 地域・お客さまを元気に

香川銀行 頭取 有木 浩さん

Interview

2025.12.18

高松市亀井町の香川銀行本店

高松市亀井町の香川銀行本店

「地域・お客さまへ元気を届けたい」

「銀行には様々なことが求められている。引き出しがたくさん必要です」。今年6月、香川銀行の第11代頭取に就いた有木浩さん(60)はこう話す。

掲げる目標は「地域・お客さまを元気にする」。それは預金や融資など金融に関わることだけではない。今、特に力を入れているのが「職業紹介」だ。「頭取就任後、取引先に挨拶回りする中でよく耳にするのが『人手不足』です。『仕事はあるけど、人がいないため仕事を受けられない』と……」
取引先による外国人採用面接の様子

取引先による外国人採用面接の様子

香川銀行では4年前から職業紹介事業をスタート。今年4月からは特定技能外国人の紹介業務も始めた。

「インドネシアの送り出し機関との提携やローカル銀行との連携により、まずは県内を中心に介護事業者へ紹介しています」。昨年開催したインドネシアでの採用面接会を通じて、8月には12名が入国。介護事業者へ橋渡しした。

今後は「インドネシア以外の国にも広げたいし、専門的な知識や技術を持った高度人材にも広げたい。トラック運転手など他職種にも広げていきたい」と意欲を見せる。
“地域・お客さまを元気にする策”はまだまだある。女子ハンドボールチーム「香川銀行シラソル香川」もその一つ。有木さんは専務時代の2年前からチームのGMを務めている。「展開が速く、激しいぶつかり合いなど迫力もたっぷり。私はハンドボールの経験はありませんが、とても魅力的なスポーツです」
県勢初となる国スポ・ハンドボール競技成年女子で優勝した 「香川銀行シラソル香川」=今年10月、滋賀県彦根市

県勢初となる国スポ・ハンドボール競技成年女子で優勝した
「香川銀行シラソル香川」=今年10月、滋賀県彦根市

シラソルは今、絶好調。昨年12月に行われた実業団や大学などハンドボールの日本一を決める「日本ハンドボール選手権大会」で初優勝すると、今年10月の国民スポーツ大会(国スポ)でも初優勝。女子は11チームが参加する国内トップリーグの「リーグH(エイチ)」では12月12日時点で首位に立っている。「選手たちは銀行員として仕事もしながら、地域のイベントに参加したり、小中学生を指導したりと頑張ってくれています。スポーツには地域を元気にする力があります」

スペイン語でシラソル(Girasol)はヒマワリ、ソル(Sol)は太陽。「チームからオリンピック選手を出すのが大きな目標。地域を明るく照らす存在でありたいですね」。有木さんは楽しそうに話す。

目の当たりにした過疎の悲哀

有木さんの地域を思う気持ちは少年時代に遡る。

生まれは三豊市詫間町の志々島。瀬戸内海に浮かぶ周囲3.8kmの小さな島だ。映画「男はつらいよ」の舞台にもなり、島民は最盛期には1000人を超えていたが、今は20人弱。有木さんが幼稚園の時に島の小学校は閉校になった。「両親は教員で、母親の故郷の高瀬町へ移りました。「『なぜ引っ越さないといけないの?』と、つらく感じたのを覚えています」

人が減り、働く場所がなくなり、ふるさとが衰退していく。「人口減少と過疎の悲哀を目の当たりにしましたね」

大学時代は経営学部で中小企業や地元商店街の活性化策について学び、卒業論文でもテーマにした。「地域住民や高齢者が住めるスペースを商店街の中に確保して……など、いろいろ調べてまとめました。銀行員を志す、一つのきっかけになったと思います」

地域を元気にしたい。有木さん自身の根底に、その思いがある。

現場で鍛え上げたキャリア

支店勤務が長く、丸亀、松山、岡山など7支店で支店長を経験。いわゆる“最前線”でキャリアを重ねた。「“現場”しか知らないんですが……」と苦笑するが、「でも、現場のことが分かるのが、私の強みだと思っています」

現場で揉まれてきた。特に印象深いのが20代の5年間を過ごした徳島支店時代。お客さまの期待に応えられず上司にフォローしてもらい、「情けない。早く一人前になりたい」と感じた苦い思い出もあれば、「高松に進出したい」という飲食店の開業プランや資金プランを一から組み立てた成功体験も。「とても濃い5年間でした。銀行員としての基礎を築いた貴重な現場をたくさん経験できました」
「一期一会」。お客さまと向き合い、その時々に全力を尽くす

「一期一会」。お客さまと向き合い、その時々に全力を尽くす

行員にもいろんな現場を見てほしいと2年前に始めたのが「海外研修」。ベトナムやフィリピン、インドネシアなど東南アジア諸国で、研修を受けたり顧客企業が出している工場や営業所などを訪ねたりする。「経済成長している国の活気あるエネルギッシュな雰囲気を味わって、刺激を受けてほしいと思っています」。約5年をかけて法人営業担当者300人に行う予定だ。「今ちょうど半分終わったくらい。『現地のがむしゃらさにびっくりした』と話す行員も多いですね」

好きな言葉は「一期一会」。高校時代、恩師が「青春時代は二度と来ないぞ」と繰り返し言っていたが、「当時は『また言いよるわ』くらいにしか聞いていなかった。今改めて、その言葉の重みを感じています」と、しみじみと話す。

「出会いを大切にして、その時々に全力を尽くす。一番大事なのは『お客さまと向き合うこと』。現場を知る強みを活かし、私自らが動いて、みんなと一緒に頑張っていきます」

篠原 正樹

有木 浩 | ありき ひろし

略歴
1965年 三豊市出身
1984年 高瀬高校 卒業
1989年 立命館大経営学部 卒業
     株式会社香川銀行 入行
2004年 国分寺支店長
2019年 取締役岡山支店長
2020年 常務取締役営業本部長
2023年 専務取締役企画本部長
2025年 代表取締役頭取

株式会社香川銀行

住所
香川県高松市亀井町6番地1
代表電話番号
087・861・3121
設立
1943年2月1日(香川無尽株式会社)
資本金
141億円
総資産
2兆3,759億円
預金
2兆881億円
貸出金
1兆7,133億円
店舗数
90店舗(本支店83、出張所6、インターネット支店1)
(2025年9月末時点)
地図
URL
http://www.kagawabank.co.jp/
確認日
2025.12.18

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