専門家でありゼネラリスト

高松高等検察庁 検事長 小川 新二さん

Interview

2018.04.05

今年1月に着任。「内陸の栃木生まれなので、身近に海のある暮らしが新鮮。海を見るとうれしくなってしまいます。天気によって全く違う景色になるのも面白いですね」。鉄道と旅行が好きで、高松に来てからは週末ごとに四国4県を回っている。「鉄道だと車窓を楽しめるし、車移動よりもいろんな人と触れ合える機会が多い」
約30年前のアメリカ留学時に家族と

約30年前のアメリカ留学時に家族と

一番の趣味はクラシック音楽の鑑賞。高校2年の時、カラヤンが指揮するベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演を聴きに、放課後すぐ電車に飛び乗って東京まで行ったことが思い出深い。大学時代はアルバイト代でオペラを見に行ったり、名曲喫茶に行ったり。集めたレコードは500枚以上になった。「4年に一度の高松国際ピアノコンクール開催時に赴任できるなんて、幸運でした」

事件の真相は人の話から

中学・高校と歴史好きの少年で、古代ギリシャや古代ローマに関する小説、歴史書をたくさん読んだ。本を読むうちに法律が社会の中で果たす役割や、時代によって法律はどう変わっていくのかに興味を持ち、大学は法学部に進学。実践的に法律を扱う仕事がしたいと、司法試験を目指した。

中でも民法に興味があったため、弁護士か裁判官にと考えていたが、司法修習で検事志望に変わった。「証拠を集めて分析、そこから何が言えるのか突き詰めて考え、事件の真相を解明する。それが性分に合っていました」

1984年、検事に任官してからは札幌、旭川、東京、広島、前橋の地方検察庁などで勤務してきた。検事は法律のスペシャリストであると同時に、ゼネラリストであることも求められる。例えば、橋桁の落下事故を担当した時は橋梁工学、医療過誤事件は臨床医療、特別養護老人ホームの不祥事では厚生行政、原発事故は原子力に加え地震や津波のメカニズムと防災についても学んだ。

本を読んだり、専門家に話を聞いたりするが、鵜呑みにせず自分で考えて真実を見極める。「その時々で専門家に負けないだけの勉強をするのは大変ですが、達成感もあります。自分以上に詳しい人はいないと思えるまでやり抜く。どんな職業でも大切なことは同じではないでしょうか」

司法制度の改革にも深く関与。2010年に東京地検の公判部長を務めた時は、始まったばかりの裁判員裁判の陣頭指揮をとった。30代でアメリカの陪審裁判を研究していたことが役立った。法務省の仕事も長く担当。矯正局長を務めた時は、受刑者の再犯防止や刑務所と地域社会の共生を推進した。

心掛けているのは、先入観を持たないこと、丹念に話を聞くこと、現場に行くこと。「私たちは何も知らないんです。人に語ってもらうことでしか、事件の真相にたどり着けない」

真実を問い続ける

ITの進展で検事の仕事も大きく変わったと感じている。「でも『真実は何かを問い続けること』が仕事の基本であることに変わりありません」。変化に応じて、どうすれば真実を解明できるかを考え、社会の期待に応えていく。
昨年、ケンブリッジ大学で開催された国際会議で

昨年、ケンブリッジ大学で開催された国際会議で

「四国は特殊詐欺の被害が多く、DVやストーカーなどの被害も増えています。被害者支援や再犯防止のためには警察、検察など関係機関が連携しないといけない。数年前から始めている児童虐待防止の取り組みに加えて、これらも進めていきたい」(鎌田 佳子)

小川 新二 | おがわ しんじ

1957年 栃木県矢板市生まれ
1975年 宇都宮高校 卒業
1982年 司法修習生(早稲田大学法学部 卒業)
1984年 検事任官
2000年 法務省刑事局参事官
2006年 法務省刑事局公安課長
2010年 東京地方検察庁公判部長
2011年 福島原子力発電所事故調査・検討委員会事務局長
2013年 岐阜地方検察庁検事正
2015年 法務省矯正局長
2016年 最高検察庁監察指導部長
2017年 最高検察庁公安部長
2018年 高松高等検察庁検事長

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ