事件の真相は人の話から
中でも民法に興味があったため、弁護士か裁判官にと考えていたが、司法修習で検事志望に変わった。「証拠を集めて分析、そこから何が言えるのか突き詰めて考え、事件の真相を解明する。それが性分に合っていました」
1984年、検事に任官してからは札幌、旭川、東京、広島、前橋の地方検察庁などで勤務してきた。検事は法律のスペシャリストであると同時に、ゼネラリストであることも求められる。例えば、橋桁の落下事故を担当した時は橋梁工学、医療過誤事件は臨床医療、特別養護老人ホームの不祥事では厚生行政、原発事故は原子力に加え地震や津波のメカニズムと防災についても学んだ。
本を読んだり、専門家に話を聞いたりするが、鵜呑みにせず自分で考えて真実を見極める。「その時々で専門家に負けないだけの勉強をするのは大変ですが、達成感もあります。自分以上に詳しい人はいないと思えるまでやり抜く。どんな職業でも大切なことは同じではないでしょうか」
司法制度の改革にも深く関与。2010年に東京地検の公判部長を務めた時は、始まったばかりの裁判員裁判の陣頭指揮をとった。30代でアメリカの陪審裁判を研究していたことが役立った。法務省の仕事も長く担当。矯正局長を務めた時は、受刑者の再犯防止や刑務所と地域社会の共生を推進した。
心掛けているのは、先入観を持たないこと、丹念に話を聞くこと、現場に行くこと。「私たちは何も知らないんです。人に語ってもらうことでしか、事件の真相にたどり着けない」
真実を問い続ける
小川 新二 | おがわ しんじ
- 1957年 栃木県矢板市生まれ
1975年 宇都宮高校 卒業
1982年 司法修習生(早稲田大学法学部 卒業)
1984年 検事任官
2000年 法務省刑事局参事官
2006年 法務省刑事局公安課長
2010年 東京地方検察庁公判部長
2011年 福島原子力発電所事故調査・検討委員会事務局長
2013年 岐阜地方検察庁検事正
2015年 法務省矯正局長
2016年 最高検察庁監察指導部長
2017年 最高検察庁公安部長
2018年 高松高等検察庁検事長
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