人口減少に悩む地域で 学生起業を活性化
1988年から母校・長岡高専で土木工学科の教員を務め、研究の芽の大半はアメリカ発だと気づくや居てもたってもいられず渡米。世界最先端の分子生物学に触れ、「進む道はこれしかない」と確信した。帰国して博士号を取ったのち、再び客員研究員としてアメリカに留学。「1カ月で定説が塗り替わるほど目まぐるしいイノベーションの渦中で、毎日ワクワクした1年でした」
分子生物学の知見を生かした微生物解析を土木分野で実践する研究者は少なかったことから大いに注目を集めたが、学生たちと研究に熱中していたある日、二度目の転機が訪れる。「若手教員たちが、学生スタートアップを刺激する仕掛けを考えているという。当時の私が知る研究室の学生たちは、まだまだ経験も能力も低く育ててやる存在でした。でも若い先生方が注目するのは、ロボコンの世界大会で優勝を争うようなトガった連中。企業課題をどんどん解決し、大人と対等に話せる能力と熱意にあふれ、これはもう到底敵わんと思いましたね」
50歳を迎え研究の限界を感じ始めていたこともあり、以降は学生起業支援とスタートアップによる地域創生に軸足を置く。起業家を次々と生み出す長岡高専の活発な風土を育んだ実績を踏まえ、一関高専では校長に抜擢された。長岡とは一転、アントレプレナーのアの字もない状況からのスタートだったが、人口減少が進み人材流出に危機感を抱く地域の積極的なバックアップを得て、着任2年目で高専生がものづくり技術の事業性を競う「全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト」優勝を導くなど、スタートアップの活性化に貢献した。
若者は同調圧力に屈するな
戸塚 愛野
荒木 信夫 | あらき のぶお
- 略歴
- 1958年 新潟県生まれ
長岡高専卒、長岡技科大学院修了
1985年 民間企業研究所
1988年 長岡高専に教員として勤務
1991年 米イリノイ大学留学
1995年 米ノースウェスターン大留学
2021年 一関工業高等専門学校 校長
2024年 香川高等専門学校 校長
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