「超量産拠点」の新たな価値を打ち出す

オリエンタルモーター 常務執行役員・高松カンパニー執行役員社長 五十嵐 淳さん

Interview

2025.07.03

故郷の山形県鶴岡市には、オリエンタルモーターの大きな事業所がある。工業高校で学んだ五十嵐さんは早くから「ここで働きたい」と憧れ、卒業後にその思いを叶えた。「動力用モーターはさまざまな産業分野に広く関わる製品ですから、社会貢献ができると意気込みました」

技術研究所に配属されて商品設計の基礎を身に付けるかたわら、夜は会社の支援制度を活用して千葉工業大学工学部へ。電気系をはじめとする業務に直結する学びを深め、技術者として本格的なキャリアを踏み出した。

技術者からマネージャーへ

軸足は、マイコンで電流をコントロールし、モーターに給電して動かす「駆動回路」の設計。意欲的な若手に仕事を任せていく社風のもと、1998年に20代後半で担当する商品の設計責任者になった。同社製品にはサーボモーター、ブラシレスモーター、ステッピングモーターなどさまざまな種類があり、モーターの種類によって回路も異なる。商品企画に沿って特徴や使いやすさ、回路のサイズや熱設計、信頼・安全性、どんな部品を使うか、不備があった場合の原因追究やリカバリまで、あらゆる責任を持って決定する立場だ。「今ほどインターネットが発達していない時代で、情報は自ら見つけに行く必要がありましたから、技術者同士の会話にヒントを得たりして…。大きな責任感を学べた、私にとって最初のターニングポイントです」

30代半ばで、ハードウェア・ソフトウェア計13人のチームを率いる設計部門のリーダーに。設計の現場を愛していたが、以降は部下を育てる側として背中を見せることを意識するようになった。一方で、客先で提案する技術営業的な業務も経験するなど、業務の幅を着実に広げる。「お客さまに満足していただくのが重要なのに、設計の視点だけではひとりよがりに陥りがち。お客さまと直接接する営業経験がもたらす別の視点が、新しいアイデアにつながると気づきました」

初の海外駐在経験は40代。当時ボストンに研究開発拠点があり、現地エンジニアや営業と連携して「グローバルにニーズを拡大するためには何をつくるべきか」をマーケティング的に分析する半年を過ごした。帰国後は、設計部門から製造部門まで全ての品質活動を統括する品質担当役員を務めた。
休日は瀬戸内の海景色でリフレッシュ

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+αの価値を示す旗印に

これまでは柏やつくばなど関東エリアでの勤務が中心で、今年1月の高松カンパニー執行役員社長就任が、初の西日本。高松事業所は、医療装置・半導体製造装置など微細な用途に使われるステッピングモーターの製造が軸。生産性と量産技術の向上によってコスト競争力を高める意欲が他拠点以上に強い、同社事業所の中では一番の「超・量産拠点」だ。

モーターはシンプルだが機械になくてはならない動力源。その製造を担い顧客のビジネスを支える拠点として「継続と発展」を掲げる。「モーターそのものの改良とともに、付加価値を高めて幅を広げるのが今後の課題。スピーディーでリーズナブルだけではない+αの価値を示したい」と語り、モーターのみではなく付属パーツも含めた提案で顧客のアッセンブル時間短縮に貢献するなど、柔軟なビジネスモデルを模索する。

設計者としての専門性と、他拠点や技術営業、品質保証の仕事を通じて広げた視野が自身の強み。「国内の営業ネットワークは手厚く業界での認知度も高いが、BtoB中心で一般市民にはあまり知られていないし、海外にもまだPRの余地がある。異業種連携も視野に、ブランディングも重視しつつ、活気があり品質水準の高い高松事業所の技を磨いて世界に発信していきたい。各地で培ったパイプを生かしながら高松事業所がポテンシャルを発揮するために、方向性を示して背中を押すのが私の役目です」と意気込んでいる。

戸塚 愛野

五十嵐 淳 | いがらし じゅん

略歴
1971年 山形県生まれ
1990年 オリエンタルモーター入社
    技術研究所に配属
1995年 各種モーター駆動用ドライバの開発・設計に従事するかたわら千葉工業大学工学部を卒業
2018年 執行役員(品質保証統括部長)
2020年 常務執行役員(MC事業統括部長・商品統括部長)
2025年 常務執行役員(高松カンパニー執行役員社長・DX推進担当)

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