うどん店とともに歩む、つゆ専門会社

京兼醸造 代表取締役社長 京兼 慎太郎さん

Interview

2018.04.05

右手にうどんつゆ、左手にだしパックを持って。手前が新発売の「天然まぐろ魚醤」

右手にうどんつゆ、左手にだしパックを持って。手前が新発売の「天然まぐろ魚醤」

琴平町の京兼醸造は、1919年に醤油蔵として創業。自社での醸造から協同組合の醤油を仕入れて加工する業態に変わった後は、醤油をベースにした様々な調味料を作ってきた。

3代目社長の京兼慎太郎さん(39)は、ラーメンのたれや中華スープなど数ある自社商品のうち「これぞ」というものを求めて試行錯誤。10年かけて出した答えが、うどんつゆ専門会社だった。だしにこだわり、おいしいつゆを作る。うどん店とともに歩むと決めた。

他社で仕事を経験した後、2002年に京兼醸造に入社。「家業を継ぐのは、親から言われた許嫁と結婚するようなものだと思っていました。好きだとか考える前に一緒にならなくちゃいけない。生まれてくる場所や家は選べません。だからこそ、良いところを見つけよう、楽しくしようと思えた」

自社商品としていろんな調味料を作っていたが「これだけはよそに負けない」というものが欲しかった。讃岐うどんブームでうどんつゆの需要は高かったが「ブームが過ぎたらどうなるんだろう」との不安もあった。通販サイト「京蔵」を立ち上げ商品を売ってみたが、労力のわりに売上は芳しくない。

07年、28歳で初めて香川県中小企業家同友会に参加。「高校はイギリス、大学は大阪で、相談できる友人が近くにいなかった。同友会に入ったことで、みんな悩みを抱えているんだ、こんなに素晴らしい経営者が香川にもいるんだと分かりました」

『日本でいちばん大切にしたい会社』という本にも影響を受けた。本で紹介されていた未来工業や伊那食品工業などの企業に、片っ端から手紙を送って訪問。「多くの経営者から、ビジネスは何を売るかよりも、自分がどう生きるかを決めることが大事だと学びました」

ある時、うどん店へ集金に行くと「うどん屋がつぶれても、あんたのところは醤油を他の店に売ったらええもんな」と言われた。悔しかったが、この先うどんだけでやっていけるのかという店主の不安もよく分かった。京兼醸造にしかできないことは何か。そう考え、うどん店を支え、一緒に発展していけるような会社にしようと決断した。

全国にうどん店は約2万。そのうち200店と取引できたら、利益は出ると試算した。うどんつゆや、煮るだけで簡単にだしが取れる「だしパック」を販売するほか、各うどん店に合わせたオリジナルつゆも作る。

こだわるのは「だし」だ。メーカーの作るだし醤油やうどんつゆは、醤油に既製品のだしを混ぜているものが多いという。京兼醸造は既製品を使わずに、自社でカツオ節やいりこを釜ゆでしてだしを取る。「だしをきちんと取ったつゆは後味が違います。口の中に味の余韻が残るようなつゆになるんです」


うどんつゆ専門会社を掲げて約3年。現在の取引先は300店にのぼる。つゆとだしの製造・販売だけでなく、うどん店のコンサルティングも行う。「麺とつゆだけでうどん店はできません。原価計算、器や店の内装はどんなものがいいのか、経営のノウハウが重要です」。取引先が300あれば、どの地域でどんな味が人気なのか、どのつゆを使うと売上が伸びるのかといったデータが集まる。そのデータを基にうどん店の悩みに応えている。社内に試作や研修ができるスペースも設けた。

「うどん店を開業するなら、一度は京兼へ」。全国のうどん屋さんから頼りにされる会社を目指す。

鎌田佳子

京兼 慎太郎 | きょうかね しんたろう

1979年 琴平町生まれ
1997年 英国四天王寺学園 卒業
2001年 近畿大学 卒業
2002年 京兼醸造 入社
2016年 代表取締役社長 就任

京兼醸造有限会社

住所
琴平町榎井162−3
TEL.0877・75・2285
資本金
300万円
事業内容
うどんつゆの製造・販売
地図
URL
https://kyokane.asia/
確認日
2018.04.05

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