“絶妙なあんばい”でスタンダードに
「パッケージに施された様々な機能で、鮮度や美味しさが保たれているんです」
お菓子やレトルト食品などのパッケージをつくる三和工業の若きリーダー、村上祐次さん(36)は言う。「たかが袋ですが、されど袋です。中身がなければただのゴミかもしれませんが、その袋にどれほどの努力と知恵が詰まっているか。技術が進み、袋が軽くなればなるほど、私たちの想いは重くなっています」
ポテトチップスなどを包む袋。実はそれぞれに機能を持つ、何層ものプラスチック製のフィルムを貼り合わせてつくられている。「現在の袋は5層が一般的です」
商品名などがデザインされた最表面のフィルムは印刷に適し、耐熱性に優れた特性を持つ。その内側には、個々にバリア性や遮光性などの特長を持つフィルムなどが重なり合う。「スナック菓子の大敵は湿気、酸化、そして紫外線です。それらから商品を守り、鮮度や美味しさを保つ。薄くて軽い一枚に、様々な技術が詰まっています」。村上さんは力強く話し、こう胸を張る。
「現在スタンダードになっている袋の中には、私たちが世に初めて出した技術もあるんです」
例えば、スナック菓子の袋の内側は“銀色”がほとんどだ。「昔は透明のフィルムを使っていて、中身が丸見えでした」。スーパーやコンビニへの流通が増え始めた1980年代、商品が紫外線などを浴びないよう「アルミニウムのバリア性や遮光性に注目した社員がいたんです」。パッケージの内側のフィルムに、アルミニウムをコーティングする技術「アルミ蒸着」を施したフィルムを世界で初めて採用した。「魚や野菜、洗剤などを一緒にしても、銀色のアルミニウムが、臭いや湿気と混ざり合うのを防ぎます。この技術はあっという間に業界に広がりました」
フィルムメーカーと共同で“開けやすい袋”に挑んだ。“開ける”ことを重視すると密封性が弱くなり、流通時や中身の品質保持に支障が出てしまう。「試行錯誤を繰り返し、2年がかりで開けやすさと密封性が“絶妙なあんばい”のフィルムを開発しました」。貼り合わせる層の一つとして加えることで、「ほど良い力加減で開けられる袋が誕生しました」。ポリプロピレンを原料とした「易開封CPPフィルム」、やはり今では業界のスタンダードになっている。
「実直」と「利他の心」で
村上さんは当時、入社8年目の営業マン。「やっと主任になれた、くらいでした」。何の準備もないまま、32歳で社長になった。不安しかなかった。「200人を超える社員とその家族の生活を背負っているんだ」という重圧が度々頭をよぎり、当初は逃げ出したくなるような気持ちに苛まれることもあった。だが、そんなことは言っていられない。がむしゃらにやるしかなかった。「とにかく“実直”と“利他の心”。この2つは絶対に見失わずにやってきました」
改めて気づいたことがある。「私の能力だけだと今の三和工業はないと思う。でも、優秀で一生懸命な社員と役員、一人一人の力で会社は成長できている。経営者としてはまだまだだが、人に恵まれる運は持っていたのかも知れない」と頬を緩める。「いつか、『私が社長だったら会社は大丈夫』と思ってもらえるような社長になりたいですね」
成熟……次のステージへ
一部に植物由来原料を使用した『バイオマスフィルム』、ポリプロピレンやポリエチレンなどの複数素材を使用したこれまでのフィルムを、リサイクルしやすいよう単一素材にする『モノマテリアル化』、さらには土に還せる『生分解性プラスチック』など……。「次世代を見つめ、あらゆる方法を駆使して環境問題に対応していきます」。村上さんは力を込める。
「三和工業の伝統は“革新”です。これまで何度も革新的なことを起こしてきた会社なので、できないことはないと自信を持っています。真面目にコツコツ取り組んだ先に革新がある。その気持ちを大事にして頑張っていきます」
村上 祐次 | むらかみ ゆうじ
- 略歴
- 1987年 善通寺市出身
2006年 大手前丸亀高校 卒業
2012年 桜美林大学ビジネスマネジメント学群 卒業
2013年 三和工業株式会社 入社
2020年 代表取締役社長 就任
三和工業株式会社
- 住所
- 香川県善通寺市仙遊町2丁目5番18号
- 代表電話番号
- 0877-75-3606
- 設立
- 1965年5月20日
- 事業内容
- 合成樹脂包装資材の製造および販売
グラビア印刷・ラミネート 他 - 資本金
- 8000万円
- 工場
- 椿谷工場、満濃第一工場、満濃第二工場
- 営業所
- 東京営業所、仙台営業所
- グループ
- 株式会社三和プロセス
- 地図
- URL
- https://sanwa30.co.jp/
- 確認日
- 2024.04.18
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