キャンプ飯に「魚」で新風を

八栗 専務取締役 寺田圭佑さん

Interview

2022.10.20

1984年創業のゆでエビ製造会社を2001年に事業継承し、生エビ加工、給食向けの切り身や魚介の総菜へとニーズを拡大してきた株式会社八栗。近年「常温販売の魚介商品」「魚介のキャンプ飯」をテーマに、新しい商品を次々と提案している。寺田さんは香川県漁業協同組合連合会で資源管理を担当し、漁業者たちと育んだネットワークを持つ。彼らを通じて高品質な魚介を安定して仕入れられる強みが、商品開発にも大いに生きた。

鮮度が命の魚介は賞味期限が短く、肉に比べると1尾当たりの「食品として使える割合」も低い。輸入不足の影響で高額化の傾向にあり、通販では冷蔵便の送料がかかると敬遠されがちだ。そこで2021年、事業再構築補助金を活用してレトルト加工機を導入し、常温で日持ちする商品を開発した。「レトルト工程でサケなどは骨も軟らかくなり、お年寄りでも安心して食べられます」。フードロス削減にもつながると期待する。

キャンプ飯開発のきっかけは、キャンプ用品卸売業の知人に「フードも手掛けたい」と相談されたこと。市場調査を通じ、コロナ禍中のキャンプブームを受けてフードのニーズも多様化していると知って、中小企業基盤整備機構四国本部の支援の下、今年3月から開発に着手。キャンプに縁がなかった寺田さんも、同機構のマーケティングのノウハウや、キャンプ好きの担当者のアイデアには刺激を受けたという。「本気でキャンプが好きな人の熱意と、水産業界外からの視線が、いい商品づくりを支えてくれました」。
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試行錯誤の末、9月に「アヒージョ」シリーズを発売。魚介や野菜などの具材と調味料をパックした一食完結の冷凍個包装とし、鍋に入れて加熱するだけの手軽さと、魚介のプロの目で選んだ素材のよさが強み。春雨入りなのがユニークで、具材の旨みが溶けたオイルを吸って極上の「〆の一品」になる。

ECサイトでの直販のほか、県内外のキャンプ場や酒屋でも採用。「キャンプ初心者や、従来のキャンプ飯に飽きた人に手に取ってほしい」と語る一方、この分野で競合する水産業者が現れてほしいと期待も込める。「水産業はこれまでキャンプに目を向けて来なかった分、チャンスが眠っています。当社がパイオニアとしてそこを切り拓けたら、みんなで盛り上がっていけるのでは」。肉が強いコンテンツとされるキャンプに、魚で新風を吹き込む挑戦は、始まったばかりだ。

戸塚 愛野

寺田 圭佑 | てらだ けいすけ

略歴
2009年 香川大学経済学部卒業
     香川県漁業協同組合連合会入会
2012年 同組合退職
2013年 株式会社八栗入社

株式会社八栗

住所
香川県高松市春日町1638-1
代表電話番号
087-814-3871
設立
昭和59年4月25日
社員数
20名
事業内容
寿司種/切身/米飯類/贈答品
FAX
087-814-3857
資本金
1,000万円
地図
URL
http://www.yakuri.com/
確認日
2022.10.20

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