新しい介護を通じて地域の核に

社会福祉法人 大豊福祉会 代表 秋山 健さん

Interview

2025.06.05

父は医療法人を設立し、医療経営に情熱を注ぐ医師だが、子どもたちに同じ道を強いることはなく、「自由なキャリアを描けばいい」という方針のもとで育った。大学卒業後は大手化学メーカーに就職したものの、次第に「自分の手でビジネスを切り拓き、社会に貢献したい」という思いが強まり、28歳で新たな挑戦を決意。父の経営するグループが介護分野へ注力している中、自らもその一翼を担うべく、転職を決めた。

別天地での再スタート。接客経験もなく、福祉の世界は自分にとって未知の領域だったが、いざ介護士として現場に入ると、その印象は大きく変わった。「施設に入ることをネガティブにとらえる人もいる中で、誰もが前向きになれるよう、環境を整えて心身を支え、日々の生活に彩りをもたらす、それが介護という仕事。社会の重要なインフラであり、自分が求めていた場所にとても近いと感じました」

資格を取得して現場業務に従事し、施設管理や新規事業の立ち上げを経験。介護施設運営のノウハウを学んだ後、2023年からはグループ系列の社会福祉法人大豊福祉会で理事長を務めている。「最初に現場を学んだのもここでした。今度は経営者として、ハードな仕事と思われがちな業界のイメージを刷新したい」と語る。

現場で実感した「利用者の幸福を追求する」大切さを理念に掲げ、個室と共有リビングを備えた「ユニットケア」を導入。「効率重視型」ではなく、利用者のペースに合わせてスタッフが動く「入居者目線」のケアを実践し、生活空間の設計から食事の提供方法に至るまで、利用者がこれまでの暮らしの延長として自然に馴染めるよう配慮した。継続的な取り組みが評価され、香川県内で唯一、ユニットケアのリーダー研修施設にも選ばれた。

また、買い物に不自由を感じる入居者のために地域商店と連携し、24時間利用可能なセルフレジの売店を開設。入居者が最期まで安心して施設で過ごせるよう、24年からは看取りにも力を入れている。

こうした取り組みを支えるのは、スタッフのモチベーション向上と環境改善だ。個別面談やアンケートを通じて経営参加意識を高め、プロジェクトミーティングで課題を共有。さらに、介護業務に特化した自社開発アプリ『円香』を活用することで、事務業務の大幅な効率化を実現している。アプリの他施設への展開も視野に入れているという。

「介護の本分は地域を支え、地域の人たちとともに課題を解決していくこと。社会福祉法人だからこそできる地域密着の運営を活かし、質の高いサービスを通じて地域の核となる法人を目指したい」。秋山さんはそう展望を語った。
セルフレジ売店で好きなお菓子を購入する入居者

セルフレジ売店で好きなお菓子を購入する入居者

戸塚 愛野

秋山 健 | あきやま けん

略歴
1988年 香川県生まれ
2007年 香川誠陵高等学校 卒
2011年 早稲田大学政治経済学部 卒
    三菱化学株式会社 入社
2018年 医療法人社団健愛会 常務理事
2023年 社会福祉法人大豊福祉会 理事長

社会福祉法人 大豊福祉会

住所
香川県観音寺市大野原町大野原7010
代表電話番号
0875-54-2211
設立
2013年9月
社員数
スタッフ数 80名
地図
URL
https://www.ootoyo.jp/
確認日
2025.06.05

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