50年先を見据えて

マキタ 代表取締役社長 槙田 裕さん

Interview

2016.09.15

創業100年以上の歴史があるマキタ。船舶用エンジンの製造と販売を行う。小型船舶向けのディーゼルエンジンでは、世界トップシェアを誇る。今年6月、槙田裕さん(32)が代表取締役社長に就任した。創業者の曽祖父、祖父、父に続く4代目だ。
子どもの頃の夢はサッカー選手になること。小学2年から始めて、中学時代に四国の選抜チームに入ったこともある。中学卒業と同時に香川を離れ、神奈川の桐蔭学園に進学した。部員60人のサッカー部に所属し、レギュラーを目指して練習に励んだ。

部活動でつらかったのは、厳しい練習ではなく試合に出られないことだったと言う。努力しても実らない悔しい思いをした。そんな中で努力の「質」が磨かれた。「がむしゃらに練習しても意味がない。何十球とシュートするよりも、集中して10球だけ打つ。何が足りないのか自分を客観視して、足りないところを補う努力ができるようになりました」

その甲斐あって、2年生の時に出場したインターハイで活躍することができた。だが、上には上がいるんだとレベルの違いを感じ、自分はプロにはなれないと諦めがついた。
家業を意識し始めたのは大学に入ってから。卒業後は大学院に進学し、経営について学んだ。大企業の第一線で活躍する人、起業を目指す人など社会人に交じって学ぶ場は刺激的だった。

修了後は三菱商事の船舶部で3年間勤務。2013年、香川に帰ってきた。「約300人の中小企業です。みんな家族みたいなもの。社是の『和衷協力』という言葉のように同じ思いを共有して、一体となって取り組むことを意識しています」

入社の翌年、常務に就任し経営全般に携わるようになった。それまで番頭の役割を果たしていた当時の専務が、体調不良で退職することになったからだ。「79歳まで会社のために頑張ってくれた専務の思いに触れて、自分の意識も変わりました」

父の實会長が社長を退く決意をしたのは、裕さんの姿にかつての自分を思い出したからだと言う。「マキタに入社した時、変えた方がいいところを父に提案したんです。父が入社した時も祖父に同じように意見を言ったらしくて。それで、社長が変わらなければ会社も変わらないと思い代替わりを決めたそうです」

最終的に決断し責任を負うのは裕さんだが、トップダウンではなく、チームとして経営課題の解決に臨む。「大事なことは取締役たちと話しながら決めています。2年前からこういう形に変えて、ある程度成果が出てきました」
これから取り組むことは2つ。アフターサービスを更に充実させることと、改善活動を通して品質と収益の向上を図ること。製造業には改善活動が必要だと言う。毎日、一人10分生産効率が上がるようにすると、年間で約40時間。300人分で1万2千時間。それは6.25人分の1年間の労働時間に当たる。反対に毎日10分生産効率を下げると、それだけの損失になる。

「日々の積み重ねが大事。改善活動に取り組むことによっていろいろ考えるようになります。考える行為と知識の組み合わせがアイデアを生み、それが会社の競争力になる」

10年のうち8年は不況だと言われる造船業。エンジンを造るマキタは当然その影響を受ける。「景気のあおりに一喜一憂しても仕方ありません。ただ50年後も続いている会社でありたい。毎年、新入社員が定年退職するまで働けるようにと思っています」

今年の新入社員は11人。数ある企業の中からマキタを選んでくれたことが、何よりうれしい。

副編集長 鎌田 佳子

槙田 裕 | まきた ゆう

1984年 8月 高松市生まれ
2010年 3月 慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 修了
2010年 4月 三菱商事株式会社 入社
2013年 4月 株式会社マキタ 入社
2014年 6月 常務取締役 営業統括本部長 就任
2016年 6月 代表取締役社長 就任
写真
槙田 裕 | まきた ゆう

株式会社マキタ

住所
香川県高松市朝日町4-1-1
TEL:087-821-5501(代表)
事業の概要
船舶用ディーゼルエンジンの製造・販売
資本金
1億円
社員数
276名
地図
URL
http://www.makita-corp.com/
確認日
2018.01.04

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