マラソン大会をきっかけに地域活性化
スポーツと地域の資源をどう組み合わせればいい?

ビジネス香川編集室

Special

2025.11.20

第77回「香川丸亀国際ハーフマラソン大会」の様子

第77回「香川丸亀国際ハーフマラソン大会」の様子

スポーツで地域活性化とは

2011年に「スポーツツーリズム推進基本方針」が策定された前後から、「スポーツで地域活性化」を目指す動きが各地で加速した。スポーツツーリズムは、スポーツ参加や観戦を目的とした旅行を実施してインバウンドや国内旅行の増加を目指すなど「スポーツで人を動かす仕組みづくり」のこと。スポーツをする人、観る人、支える人という3つの関わり方があり、スポーツをきっかけに地域内外の人たちが交流することが地域活性化につながるといわれている。

スポーツイベントが地域活性化に果たす機能について、大阪成蹊大学経営学部スポーツマネジメント学科講師・丸朋子さんは主に4つを指摘する。経済的な視点ではまず、大会に向けてスタジアム、道路交通網、公共交通機関のサービス向上などインフラが整備される点。次に、地域内外から集まった人たちが飲食、宿泊、物販などで消費して地域経済を潤すこと。地域社会・文化面では、参加や観戦、ボランティアなどで支える“コト”を通して地域の連帯感が生まれコミュニティの再生にもつながる点。また、感動や興奮を体験した都市のイメージが向上する、ひいてはそれが自分たちの街への愛着や誇りにつながるという。

マラソン大会を通して、香川は何を発信する?

様々なスポーツイベントの中でも、全国各地で数多く開催されているものの一つがマラソン大会だ。現在、主なフルマラソンだけでも2024年度は約90の大会が開催され、規模の小さいものを含めるともっと数は多い。その数の多さと、コロナ禍を経てランナーたちが出場する大会を厳選するようになったことなどで近年は定員割れとなる大会も。“選ばれる”大会にするためにどう特色を出していくかが難しい時代になっている。

そんな中、香川で初めてとなる公認の大規模フルマラソン大会「かがわマラソン2026」が2026年3月に開催される。その目的は「香川の魅力を知ってもらい、交流人口の拡大につなげることと地域経済の活性化。県民のスポーツ文化の醸成も図りたい」とマラソン準備室室長補佐・鎌田健さんは話す。

現在、参加者は募集したその日に定員に達し、注目度の高さがうかがえる。「第1回大会だから興味を集めている面もあります。続けていくためには“次も参加したい”と思える大会にしないといけない」と鎌田さん。そのポイントは、マラソンと地域の資源をいかに組み合わせるか。かがわマラソンでは、走りながら見る風景、食、伝統芸能などあらゆる香川の魅力を発信すべく方法を検討し準備を進めている。

ただ「参加した人の評価が高い大会に共通しているのは“応援”なんです」。沿道から応援の声が途切れなかった、ボランティアのおもてなしに癒されたといったSNSでの声は大会の印象を左右するという。そこで、かがわマラソンでは沿道で音楽演奏やダンスなどを披露するボランティア“かがわ盛り上げ隊”を募集したほか、県産品などを味わえるイベントも検討中。「走らない人も興味を持ってもらえる工夫をして、地域のみんなでおもてなしできる雰囲気を盛り上げたい」と鎌田さん。大会を特色あるものにしていくには、地域の人の力も重要となる。

一過性のもので終わらせない

スポーツでの地域活性化を考える際、大会の時だけ盛り上がるのではなく“その後”にどう活かしていくかも重要だ。「大会をきっかけに地域に関心をもった人が核となってコミュニティを盛り上げる、それが地域の課題解決につながるという姿だと理想的」と前出の丸さん。そのためにも、まずは続けることが大切だという。

香川で歴史あるマラソン大会といえば、「香川丸亀国際ハーフマラソン大会」。戦後の復興を目指す1947年に「香川マラソン大会」として開催されてから2026年2月で78回となる。「歴史を重ねる中で主催団体も大会の目的も変わってきました。現在は地域活性化や地元企業への経済効果も目的の一つ」と丸亀市スポーツ推進課副主任・小礒幹太さん。

実際、飲食や宿泊をはじめとした経済効果も大きいが、長年続けてきたことで“私たちの街のイベント”として定着している点も見逃せないという。例年、沿道には約8万5000人の市民が応援に駆け付け、地元企業の協賛も年々拡大。「コロナ禍の時も“中止ではなく延期”とした。それは、受け継いできた歴史を途絶えさせない、丸亀の財産をつなぎたいという思いがあったから」と小礒さんは振り返る。

また、大会には教育的側面も。大手前丸亀高校は、学校全体で生徒が大会ボランティアとして参加。中学3年から高校2年まで事前準備に携わった金子澄香さん(3年)は「多くの人が丸亀に集まることに驚きました。県外に進学したとしてもこのマラソンは丸亀のことを紹介するときの話題の一つ」という。当日の来賓対応をした森下愛さん(3年)は「案内する際に答えられるよう競技場や大会の歴史も調べました」、大東一生さん(3年)は「ランナーからのありがとうという言葉は嬉しい。こういう経験をすると丸亀に愛着が湧いてくる」と話す。

生徒を見守る桒島由里教諭は「地域外の人と交流し、社会とつながる経験は生徒の成長につながる。経験を通して地域のことを知り、愛着を持ってもらい将来はまた地域に戻ってきてほしい」という。


WSワークショップ

●スポーツ大会とどんな香川の魅力を組み合わせて発信すればいいと思いますか。

●スポーツ大会の経済面以外の効果にはどんなものがあると思いますか。

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