「アートが溶け込む生活」

日本銀行高松支店 支店長 稲村 保成

column

2025.12.04

大崎山園地に展示されている「またきまい」

大崎山園地に展示されている「またきまい」

香川に赴任する前、日常の中で気持ちを切り替えるひとときといえば、もっぱら音楽を聴くことでした。しかし、香川に来てからは、新たにアートが加わりました。これほど生活の間近にアートがあるのは、私にとって初めてのことです。

ある晴れた週末、坂出市にある大崎の鼻へ出かけた後、帰り道に五色台の大崎山園地に立ち寄り、そこで「またきまい」という素敵な作品に出会いました。「またきまい」は香川県の方言で「また来てください」を意味し、作品は海に浮かぶ瀬戸内の島々を歩く姿を表現しているとのことです。確かに、眼下に広がる美しい島々を眺めていると、まさに作品が示すように、今すぐにでもその島々を跨いで行きたくなる気持ちになります。
鴻池朋子氏の作品「リングワンデルング」における途上の小道

鴻池朋子氏の作品「リングワンデルング」における途上の小道

また、瀬戸内芸術祭の期間中に大島を訪れて、そこでも素晴らしい作品群と出会いました。その中には、ハンセン病にかかった方々がかつて山を切り開いて作った山道(周回路)を、復活させた作品がありました。その山道は、瀬戸内の美しい景色が広がる場所にありますが、思いのほか険しく、歩くのは決して楽ではありません。病により視覚に障がいのあった方も過去に歩いた山道であったということで、時折瀬戸内の景色が見えるたびに、言葉では言い表せない感情が湧き上がります。

香川で過ごす日々を通じて、アートは心を癒すだけでなく、ときに心を揺さぶる力を持っていること、そして心に残る大切な学びも与えてくれることを実感しています。

日本銀行 高松支店 支店長 稲村 保成

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日本銀行 高松支店 支店長 稲村 保成

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