「にがりと行く、ちょっといい未来。」へ

仁尾興産 社長 高橋 寛栄さん

Interview

2026.03.05

入浴剤のumiral「BATH SALT」を手に=三豊市仁尾町の仁尾興産本社

入浴剤のumiral「BATH SALT」を手に=三豊市仁尾町の仁尾興産本社

肌は潤い、体は芯からポカポカに

仁尾興産は「にがり」製造で日本一を独走中のトップランナーだ。生産量は年間約1万トン、国内シェアは実に6割を超える。

にがりとは、海水から塩を取り出した後、塩化マグネシウムの濃度を引き上げて固形化したもの。豆乳を固めて豆腐をつくる「凝固剤」などに使われている。「にがりがないと日本中の豆腐屋さんが困ってしまいます。責任重大ですが、日本の宝である“豆腐文化”や“和食文化”を守るためにも頑張っていきたい」と社長の高橋寛栄さんは力強く話す。

豆腐の凝固剤だけではない。仁尾興産では道路の凍結防止剤や融雪剤、グラウンドの砂埃防止剤、工場の排水処理剤など、様々な工業用や化学工業用の製品も扱っている。そして、まだ他にもある。

「お肌は潤い、体は芯からポカポカになります」

高橋さんは4年前、「もう一度、にがりが持つ可能性を見直そう」と社内プロジェクトを立ち上げた。県の産業技術センターに協力してもらい、「サーモグラフィーなどを使って実験を繰り返し、にがりには、保湿、保温、血行促進など様々な効果があることを実証しました」
バスソルト

バスソルト

データが裏付ける確かなエビデンスをもとに、にがりを使ったライフケアブランド「umiral(ウミラル)」シリーズを開発。温浴効果の高い入浴剤「BATH SALT」と、手肌がしっとり潤うハンドクリームを全国500店舗以上のバラエティショップやネット通販などで販売している。「夏場向けのひんやりしたミント系の入浴剤や、ボディスクラブも新たに開発しました。にがりには、抗菌効果、肌のバリア機能アップ、便秘の解消など様々な効能があるんです」。高橋さんは目を輝かせながら説明する。「これからも、にがりの可能性をもっともっと追求していこうと思っています」

誰よりも強い“仁尾興産愛”

仁尾興産の創業は1919年。地元の名士、塩田忠左衞門氏が塩田による製塩業「仁尾塩田」を立ち上げたのが始まりだ。その後、71年の塩田廃止後に、にがりメーカーへ転身、現在の「仁尾興産」になった。

創業100年超。その間ずっと創業家の「塩田家」が会社を繋いできた。だが高橋さんは「仁尾町生まれですが、塩田家とは何の関わりもありません。短大を卒業後、普通にOLとして仁尾興産に入りました」

1989年に入社し、そこから35年余り。昨年6月、創業家以外で初の社長になった。「確かにプレッシャーはあります。でもそれ以上に、仁尾町の皆さんに対して『私で良いのかなぁ』という思いがありますね」

仁尾興産と言えば、地元が誇る一大老舗企業だ。高橋さんが入社した頃は、にがり製造以外にもヒラメやハマチの養殖、ボウリング場やパチンコ店やマリーナ、さらには太陽熱発電をテーマに開かれた博覧会「仁尾太陽博」の跡地につくった遊園地「仁尾サンシャインランド」の運営など、多角的に事業を展開していた。「でも、事業のほとんどは赤字でした。一時は本当に“暗黒時代”。給与はカットされ、昇給も賞与もなし。そんな時代が10年くらい続き、『仁尾興産はいつ潰れるんや……』とまで噂されたこともありました。これほど悔しいことはなかったですね」

“仁尾興産をもう一度、仁尾町になくてはならない会社にする”

そんな確固たる思いがあったと高橋さんは当時を振り返る。
仁尾興産が運営するカフェ「にがり衛門」で 提供されている豆腐と塩を使ったランチ

仁尾興産が運営するカフェ「にがり衛門」で
提供されている豆腐と塩を使ったランチ

「父もかつて仁尾興産で働いていました。幼い頃、会社の宿直室で寝泊まりしたり、社員さんとバーベキューをしたり花火大会に連れていってもらったり……とても可愛がってもらったんです。おそらく“仁尾興産愛”がDNAにすり込まれていたんでしょうね」

会社は立て直しを図るため、新たな代表を立て、赤字部門を整理し、にがりを事業の軸にした。高橋さんは化成品事業部長や経営企画本部長として、当時の社長をずっと支え続けた。「誰よりも私が一番“仁尾興産愛”が強いと思います」。高橋さんは笑顔で話す。

「FSSC 22000」引っ提げ、海外市場へ

仁尾興産では今年、食品安全マネジメントシステムに関する最高位の国際規格「FSSC 22000」を取得。高橋さんは「今後は欧米など海外市場も視野に、にがりメーカーとしての真のポジションを確立させたい」と意欲的だ。「にがりはとても繊細で、少しでも変わると美味しい豆腐にならない。課せられた使命が大きい分、やりがいも大きいですね」
「にがりメーカー」としての真のポジションを確立させたい

「にがりメーカー」としての真のポジションを確立させたい

仁尾興産が掲げるキャッチフレーズは、“にがりと行く、ちょっといい未来。”

「にがりは決して主役ではありませんが、ちょっと加えることで商品が良くなったり、体が健康になったりする。まさに『にがりみたいな会社』になるのが目標です」。高橋さんは力を込める。「その先にあるのは社員と、社員の家族の幸せです。社員とともに、にがりとともに、ちょっといい未来を目指して成長していきたいと思っています」

篠原 正樹

高橋 寛栄 | たかはし ひろえ

略歴
1968年 三豊市仁尾町出身
1987年 観音寺第一高校 卒業
1989年 四国学院短期大学 卒業
     仁尾興産株式会社 入社
2022年 香川大学大学院地域マネジメント研究科 修了
2025年 仁尾興産株式会社 代表取締役 就任

仁尾興産株式会社

住所
香川県三豊市仁尾町仁尾辛1番地
代表電話番号
0875-82-3456
設立
1919年12月14日
社員数
60人(2025年6月現在)
事業内容
にがり商品製造・販売
冷凍冷蔵倉庫事業
不動産事業
飲食事業
資本金
9750万円
グループ
NAVIO株式会社(化成品卸売業)
地図
URL
https://www.navio.ne.jp/
確認日
2026.03.05

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