開発力と品質力で“つねに前へ”

カナエテクノス 社長 上坂 史郎さん

Interview

2021.07.01

3月に竣工した本社第3工場=観音寺市大野原町

3月に竣工した本社第3工場=観音寺市大野原町

OEMで暮らしを支える

“高品質”の中枢を担う品質管理部の試験室

“高品質”の中枢を担う品質管理部の試験室

観音寺市の海岸線に広がる工業団地の中に、カナエテクノスの大きな製造工場はある。主力商品はウェットティッシュ、フェースマスク、除菌シートなど、不織布に有効成分を染み込ませたスキンケア製品や化粧品。年間に200種類以上をつくり、国内外の大手化粧品メーカーや製薬メーカーに販売している。商品リストには欧米の世界的な有名ファッションブランドもある。

OEM(相手先ブランドによる生産)なので「カナエテクノス」の社名は表には出ない。だが実は、私たちの暮らしの身近なところに「カナエテクノス製」の商品はある。国内有数の生産能力を誇り、業界内で圧倒的な存在感を放っている。「OEMのハイレベルな要求に応えられるだけの開発力や品質力には自信をもっています。私たちにしかできない技術もたくさんあります」と社長の上坂史郎さん(49)は胸を張る。

“ハイレベル”を保つための武器の一つに「DI(De-Ionized)WATERシステム」がある。ウェットティッシュなど手がけるほとんどの製品には“水”が欠かせない。「90℃以上の熱水をつねに循環させ、製品に使う際に冷却します。国内の同業者はほとんど取り入れていない独自のシステムです」。水は停滞していると菌が繁殖しやすいが、「工場のラインが止まっている休みの日でも、熱水だけは循環し続けています」

さらに今年3月、新たな武器が加わった。4カ所目となる大型工場が竣工。取り扱いが極めて難しい高濃度アルコールなどを使う商品もつくれるようになった。「同じことを繰り返していてもダメ。成長を続けないと取り残されてしまいますから」。上坂さんには、ある目標がある。現在、売上の8割をOEM製品が占めるが、「委託生産を続けながらも、将来的にはODM(取引先に商品を企画提案し、設計や製造まで行う)の割合を増やしたい。自社製品にもチャレンジしたい。提案型企業にならないと生き残れないと思っています」

“つねに前へ”。会社の土台を築き、2年半前、若い自分を社長に抜擢してくれた先代の森哲男さん(現相談役)から引き継いだ信念が、そこにはある。

骨を埋める覚悟で

自社開発した高機能フェイスマスク「四季の和(なごみ)」

自社開発した高機能フェイスマスク「四季の和(なごみ)」

カナエテクノスは、医薬品の製造や卸し、包装資材などを扱う株式会社カナエ(大阪)の製造の一部を担う形で、1986年に創業した。初代社長が森さんで、不織布を使った医薬部外品の認可を国内で初めて取得するなど成長を続けた。

上坂さんはカナエの社員だった。専ら営業畑を歩んだが、「実は営業はやりたくなかったんです。でも、上司に『お前は営業の顔をしている』と言われて……。その時は会社を辞めようかと思いました」。しかし、人と会って話すことで、人物像が見え、性格が見え、生き様が見えてくる。それが面白くてたまらなかった。半年が経った頃には「もう営業しかやりたくない、となっていましたね」

若くしてカナエの営業部長になり、グループ会社のカナエテクノスに出張することも多かった。「当時からカナエテクノスの従業員が好きだった。みんな素直で一生懸命で責任感が強くて」。森さんにも可愛がられ、2014年に取締役として呼ばれ、一昨年、2代目社長にと白羽の矢が立った。「全くの想定外でした」と苦笑する。生まれも育ちも大阪で香川にゆかりはなく、当時も単身赴任中。社長を引き継ぐ際、森さんから言われたのが「腰かけのつもりだと、従業員はついてきてくれないぞ」

昨年、妻を大阪から香川に呼び寄せた。「すっかり骨を埋める覚悟です。この会社はみんなの会社。だから、みんなと一緒に成長していきたいと思っています」

モットーは「今を楽しむ」

大学生だった19歳の時、生死をさまよう交通事故に遭った。バイクで交差点に入ったところ、右折してきた軽トラックと正面衝突。そこから意識はなく、目を覚ました時には病院のベッドの上だった。両足は複雑骨折、肋骨も4本折れ、「手術には15時間かかったそうです。医師からは『生きているのが不思議』、親からも『死んだと思った』と言われました」。ケガは無事完治し、事故を境に「悔いが残らないよう『きょうを楽しもう』『今を生きよう』という気持ちが生まれました」。それは、プライベートでも仕事でも関係ない。「きょうできることを明日に延ばさない。もしかしたら、明日は来ないかもしれませんから」

カナエテクノスの「カナエ」は、古代中国で使われた三本足の器「鼎(かなえ)」に由来する。「ビジネスで大切な『ヒト』『モノ』『カネ』を表していると聞いています。どれ一つ欠けてもダメですから」。中でも上坂さんが大事にするのは「ヒト」だ。「社員も家族も幸せを感じられる会社にするのが私の使命。香川の仲間と、一緒に楽しく前を向いて、新たなことにどんどんチャレンジしていこうと思っています」

篠原 正樹

上坂 史郎|うえさか しろう

略歴
1972年 大阪府四條畷市生まれ
1990年 上宮高校 卒業
1994年 立命館大学産業社会学部 卒業
     流通・小売業を経て
1998年 株式会社カナエ 入社
2014年 株式会社カナエテクノス 取締役
2018年 常務取締役
2019年 代表取締役社長

株式会社カナエテクノス

住所
香川県観音寺市柞田町丁93番地27
代表電話番号
0875-56-0850
事業内容
化粧用品、医薬品、医薬部外品、医療用具、衛生用品、介護機器等の製造・販売 他
資本金
2億4000万円
地図
URL
https://www.k-technos.com/
確認日
2021.07.01

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