“印刷”を少しだけはみ出し 多彩なコンテンツを提供

小松印刷グループ株式会社 社長 小松 秀敏さん

Interview

2025.06.19

高松市香南町の小松印刷グループ株式会社高松本社・工場

高松市香南町の小松印刷グループ株式会社高松本社・工場

「小さく生んで、大きく育てる」

チラシやフライヤーの印刷枚数は年間125億枚。高品質で大量印刷できるオフセット輪転印刷機を24台所有し、「小松と言えば『オフ輪』」と呼ばれるほど。高松市香南町の小松印刷グループは全国有数の総合印刷会社だ。

だが、活躍の舞台は印刷だけに留まらない。小松秀敏社長(54)が、顧客向けに営業品目を案内するチラシ「コマップ」を見せてくれた。カタログ、DM、ポスターなどの印刷部門はもちろん、ホームページ制作、アプリ開発、ドローン撮影、スマホ向け紙製VRゴーグルなどのデジタル関連部門。店舗のコンセプトやテーマを視覚的に訴えるVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)、オリジナルTシャツなどのノベルティ制作に、避難所用の段ボールウォール、さらには御朱印帳制作まで、そこには小松印刷自慢のコンテンツがずらりと紹介されている。「根底にあるのはもちろん印刷です。これまで培ってきた技術を生かしながら、いろいろなところにアンテナを張り、顧客ニーズに応えていきます」
採用ブースキット

採用ブースキット

今は就活売り手市場と言われ、就活セミナーや会社説明会が全国各地で開かれている。そこで登場するのが小松印刷仕様の「採用ブースキット」。タペストリーやテーブルクロス、イスにもPOPを施すなど、「一見堅苦しい採用ブースが華やかに様変わりし、就活生にも好評です」

この採用ブースキット、実は小松印刷自体の採用活動として導入したものだった。それが企業の採用担当者の目にとまり、「『これ、どこでつくったの?』『うちにもつくってくれない?』と評判になり商品化したんです」

小松さんのモットーは「小さく生んで、大きく育てる」。お客さんの「こんなことを考えているんだけど……」という一言をきっかけに一緒になって考え、「例えスタートは小さな柱でも、まずはその柱をいっぱい立てていこうと思っています」。ふとしたきっかけから始まった「採用ブースキット」も次々とアイデアが加わり、順調に太い柱へと育ちつつある。

クリエイティブスタッフは300人

今や印刷以外にも多彩なコンテンツを持つ小松印刷。だが、「実は葛藤があったんです」と小松さんは打ち明ける。

1952年創業の香川を代表する印刷会社。“印刷”に対するこだわりは強かった。「以前は『輪転機が回らない仕事には興味がない』。商品をデザインしても『印刷しないのならつくらない』。そういう考えが根づいていましたね」

しかし、やってきたデジタルの時代。出版物の減少や折込広告の減少、進むペーパーレス化……。小松さんは社長になった10年程前、舵を切ることを決断した。「“印刷”にならなくても売っていこう」
輪転印刷機

輪転印刷機

社内では賛否が渦巻いた。「そこに手を出すと輪転機が回らなくなる、と。でも、そんなことを言っている場合ではありませんでした」

2020年、世界を襲った新型コロナウイルス。全産業全業種とつながる印刷業界は大打撃を受けた。だが、手札が多かったこともあり、「何とか凌ぐことができました。コロナ禍を経て、扱う商品群がさらに広がりました」

小松印刷は、グラフィックデザイナーやイラストレーター、webデザイナーなどクリエイティブスタッフがグループで300人を数える。「様々な発想を形にできる我が社の大きな強みです。お客さんからは『こんなものまでできるの?』と驚かれることも多く、企画力・デザイン力には自信を持っています」と小松さんは胸を張る。

苦労から「決して逃げない」

学生時代はテニスに夢中になり、「本当は体育の先生になりたかったんです」と笑顔で話す。

家業に入った3日後、可愛がってくれていた創業者の祖父が他界した。「継いだことをとても喜んでくれていました。周りからは『生まれ変わりだ』とも言われましたね」
企画力・デザイン力に自信。“印刷”にならなくても売っていく

企画力・デザイン力に自信。“印刷”にならなくても売っていく

業績を伸ばした先代の父からの教えを常に胸に刻む。「『若い頃の苦労は買ってでもしろ』というが、父は『苦労は買ってまでするな。放っておいてもやってくるから』と。そして『でも、決して逃げるな』と」

デジタル化の流れを汲みながらも「紙への印刷」「紙媒体」の力を信じる。「印刷は“記憶に残る媒体”です。例えば教科書がデジタルになっても『頭に残らない』『勉強にならない』『やはり紙じゃないと』という声もあります」

最近は「紙媒体が少しずつ戻りつつある」という話も聞こえてくる。小松さんは「紙への印刷は伝達する貴重な手段であり、決してなくなることのない『文化』だと思う」と力を込める。「その文化を自慢の社員たちと一緒に突き詰めたい。彼らと一緒だと何でもできる気がするんです。“印刷”という業界から少しだけはみ出したりもしながら、会社をもっと発展させていきたいですね」

篠原 正樹

小松 秀敏 | こまつ ひでとし

略歴
1971年 高松市出身
1990年 高松北高校 卒業
1994年 中央大学文学部 卒業
     小松印刷株式会社(現小松印刷グループ株式会社)入社
1997年 取締役製造本部長
2006年 常務取締役
2010年 取締役副社長
2013年 代表取締役副社長
2015年 代表取締役社長

小松印刷グループ株式会社

住所
香川県高松市香南町由佐2100-1
代表電話番号
087-879-1248
設立
1955年8月30日
社員数
580人(グループ計1200人)
事業内容
オフセット輪転印刷、オフセット平判印刷、オンデマンド印刷、紙器加工、企画デザイン
創業
1952年8月
資本金
9000万円
製品内容
折込広告、ダイレクトメール、パンフレット、袋、包装紙、
パッケージ、POP、カタログ、ポスター、カレンダー、ラベル など
関連会社
株式会社ソーゴー、大村印刷株式会社、株式会社コア、大村デジタルイノベート株式会社、
ワタナベメディアプロダクツ株式会社、株式会社未来工房
地図
URL
https://www.komatsuprinting.co.jp/
確認日
2025.06.19

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