安全を保障する侵入監視機器で 世界をめざす

パル技研 社長 薮内 廣之さん

Interview

2013.03.21

新製品の開発は企業成長の要だが、資金も人材も時間もない中小企業にとって社内開発は高くつく。

冷蔵庫や洗濯機などにマイコンが使われ始めたころ、電子制御機器開発を外部委託するニーズが地元香川県下の企業にあることに気づいた。

1992年に創業したパル技研は、電子制御機器の小ロット受託開発を軌道に乗せ、大学と共同研究して測定検査装置を開発し、きわめて精度の高い画像侵入監視ユニットへ進化させた。

社員は経営者の立ち居振る舞いを見て意欲を燃やす。技術者集団を率いる社長の藪内廣之さん(57)は、技術力に社員の熱い意欲をプラスして、発電所や石油貯蔵施設、自衛隊基地、海外で同様に国家戦略の根幹となるエネルギー基地・施設、軍事施設など高い安全保障が求められるセキュリティ監視機器市場を目指す。

ビジョン実現の仲間

▲社員一同から贈られた「念ずれば花ひらく」の石碑を嬉しそうに抱く薮内廣之さん

▲社員一同から贈られた「念ずれば花ひらく」の石碑を嬉しそうに抱く薮内廣之さん

大手家電メーカー向け工場機械の自動化システム、ファクトリーオートメーション製作会社のエンジニアだった。バブルが崩壊した。仕事が減って仲間が辞めた。

マイクロコンピューターはまだ中小企業の製品に普及していなかった。電子機器の技術者がいない。何とかならないか。地元企業の声が聞こえた。

「中小企業の電子機器の開発部門になろう」。35歳のとき会社を辞めて、起業した。3年前に結婚して子供が生まれた直後だった。妻は反対しなかった。

資本金1000万円は預金と、先に会社を辞めた仲間3人が応援してくれたお金を充てた。お客さんも社員もともにビジョンを実現する仲間だから、社名は、英語で仲間を意味するパルとした。

最初は手の採寸装置

4人で会社を始めたが給料が支払えない。3人の仲間は会社が軌道に乗るまで出来高払いのアルバイトで協力してくれた。工場は持たず開発と設計に限定した。

会社を立ち上げて6カ月、大手スポーツ用品メーカーがオーダーメードのゴルフ手袋製造を自動化するため、地元大手電機メーカーから、手の採寸装置開発の注文が来た。

「出来ないと会社の将来はありません。チャンスだと思い自信はないけど引き受けました」。手袋の寸法は、24センチ・26センチ・28センチといった型に合わせて測るが、サイズが同じでも指の長さや手の甲の厚みは異なる。

デジタルカメラの画像処理技術で、測定データをコンピューターで形にするキャド(CAD=コンピュター支援設計)システムに入力すれば、皮革の裁断と縫製が自動化できる。

カメラには寸法を測る目的には必要ない指先の影も写るので実寸と合わない。画像は2次元だから、3次元である手の甲の周囲は測れない。光を放射して測定するレーザーセンサーとカメラ画像の2つのデータを組み合わせた。試行錯誤を積み重ね、完成までに1年ほどかかった。

1年目の売り上げは900万円。この先どうなるか、不安だった。

顧客が鍛えた

手袋の寸法測定装置の工夫が、冷凍食品など食品関係の検査装置につながった。工場の生産ラインには、製品の数や形、傷や汚れなど、人の目で検査する工程は多い。

カメラで写したデータを、コンピューターに入力して検査する画像処理技術を開発、目視検査を自動化して会社は軌道に乗り始めた。

顧客に恵まれ、鍛えられ、育てられた。社員たちは、印刷物などの検査装置で世界一の技術とトップシェアを持つ顧客企業の新技術に魅せられ、発注した企業の難しい要求に応えて技術力も人間力も大きく成長した。

収支のすべてをガラス張りにする経営が、技術者集団の意欲を一層燃やした。

徳島大と共同開発

業績は伸びた。新技術開発の環境を充実させ事業の柱を増やすため、99年からいろんな大学と共同して開発に取り組んだ。

手がけている研究開発は10件。が、成果が見込めそうなものは2件。「成功の秘訣は成功するまでやり続けることだ」と言われるが、見極めは難しい。

2003年に始めた徳島大学と共同した「変位計測システムの開発」は、09年にマイクロ波センサーとして製品化に成功した。光ではなく電波を使うので雨や霧、雪の中でも誤差が少なく、距離の計測や不審者の侵入を検知できる。

画像侵入監視ユニットは、東京大学生産技術研究所で開発した物体追跡技術「時空間MRFモデル」とパルお得意の画像処理技術を融合させた高性能の監視装置だ。

既設の監視カメラに組み込むと監視業務を無人化できる。夜でも悪天候でもくっきり侵入者をとらえる。警備員に知らせるとともに、モニター画面に拡大しながら映し出し、自動追尾して、侵入者が通った跡を表示する。「かがわ中小企業応援ファンド事業」の助成金500万円を活用して昨年、製品化した。

「念ずれば花ひらく」

▲安全確認など幅広い用途が期待されるマイクロ波センサー ▲監視カメラに組み込むと侵入者を自動的に監視してくれる画像侵入監視ユニット=機器の写真は、左右とも(株)パル技研提供  ◆写真撮影 フォトグラファー 太田 亮

▲安全確認など幅広い用途が期待されるマイクロ波センサー
▲監視カメラに組み込むと侵入者を自動的に監視してくれる画像侵入監視ユニット=機器の写真は、左右とも(株)パル技研提供

◆写真撮影 フォトグラファー 太田 亮

マイクロ波センサーの用途は幅広い。たとえば、船からコンテナを積み下ろしする港湾クレーンは操作席から足元が見えないが、マイクロ波センサーを使えば、足元の安全を確認できる。発電用大型プラントや石油貯蔵施設など屋外での広範囲の監視に最適だ。

画像侵入監視ユニットは、高度な保安が要求される施設を守る警備会社に注目された。その警備会社の監視システムに画像侵入監視ユニットを組み込むための共同開発が、間もなく始まる。

社屋ビル横に、社員から贈られた仏教詩人坂村真民(さかむら しんみん)の詩「念ずれば花ひらく」の石碑が建つ。

「宝物です。社員がエールを送ってくれました」

昨年6月、マイクロ波製品の海外向け輸出の専門商社(株)ピーエフエヌと資本提携した。磨き上げたマイクロ波と画像処理の監視技術を世界の戦略施設に売り込む準備は着々と進んでいる。

薮内 廣之 | やぶうち ひろゆき

1956年 さぬき市(旧志度町)生まれ
1974年 香川県立高松工芸高等学校(電気科)卒業
    日鐵建材株式会社(現・日鐵住金建材株式会社)入社
1979年 四国電子機器株式会社入社
1992年 株式会社パル技研を設立、代表取締役に就任
写真
薮内 廣之 | やぶうち ひろゆき

株式会社 パル技研

所在地
高松市林町2217番地2(インテリジェントパーク内)
TEL:087-864-3388
FAX:087-864-3386
設立
1992年9月
資本金
1000万円
代表者
薮内廣之
従業員数
38名
売上高
3億8000万円(2012年6月期)
事業内容
マイクロ波センサー応用システム開発・製造販売
産業用電子機器の受託開発・製造販売
画像処理システム開発・製造販売
沿革
1992年 高松市に「株式会社パル技研」設立
主に産業用電子計測・制御システムを開発
1999年 品質システムISO9001認証取得
「中小企業創造促進法」に基づく企業に認定
2006年 中小企業庁の新連携支援事業に認定
2007年 高松市林町の香川インテリジェントパークに本社移転
2008年 デジタル技術検定 文部科学大臣賞受賞
確認日
2018.01.04

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