
大引・根太のシロアリ被害
平地の少ない男木島では、山肌に張り付くように石垣を築き、家々が建てられています。細い路地と階段道。車や重機は入りません。家の新築や改修は本土と比べ大きな困難を伴います。男木の家屋は、島民が協力し合って修繕を繰り返しながら、大切に住み継いできたのです。
昨年7月、家の改修工事に着手しました。明治26年、築132年の主屋の改修は予想を超えて難渋しました。
まず、資材や機材、廃棄物の運搬。急坂や石段を避けて運ばなければなりません。かなり遠回りになります。それでも狭い傾斜道ですから人力頼みとなります。また、大工さんたちの作業時間は、フェリーの時間に大きく制約されます。結果、工事期間は当初予定を大幅に上回りました。
古民家の改修は作業が進むごとに課題が表れます。梁や桁、大引や根太のシロアリ被害。壁土の剥落、面戸の欠落、屋根裏の蜂の巣、積もり積もった埃塵への対応。床下に現れた大きな貯蔵穴の処置。納屋の天井裏の大量の松葉の処分、古い唐臼の存廃などなど。
貯蔵穴では悩みました。埋めるか否か。穴底の水は湧水か流入水か。排水の必要性とその方法。工事全般を担ってくれた泉さんが、近隣の事例を調べ、なんとか方策を見出してくれました。古民家の改修に正解はありません。課題ごとにより良い方法を見つけるしかないのです。
島の若い人たちの間では、DIYが離島暮らしの基本的な技術となっています。古民家改修に関する知識や実践が、自然と地域コミュニティの中に蓄積、共有され、新たな移住者の古民家の利活用を心と経費の両面から支える力になっています。
半年に及んだ改修工事は、さまざまな課題に柔軟かつ粘り強く対応してくれた泉さんらプロ職人の方々と、暖かく見守り、手助けや助言をくださった島の人たちのお陰で完了しました。この家を次の世代に引き渡すまで、しっかり守り、大事に使っていこうと思っています。今回の顚末も、島での古民家の維持存続の参考事例になれば幸いです。

床下の貯蔵穴(芋穴)
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