“応援の力”でつくる地域のウェルビーイング

百十四銀行 頭取 森 匡史 さん

Interview

2024.08.15

高松市亀井町の百十四銀行本店ビル

高松市亀井町の百十四銀行本店ビル

“応援”が生み出す不思議な力

熱戦が続く夏の甲子園。球児たちはスタンドからの大声援に背中を押され、時に私たちの想像を超える思いもよらないプレーを見せてくれる。

今年4月、百十四銀行の頭取に就いた森匡史さん(57)が注目するのが、この“応援の力”だ。「勢いや流れを呼び込み、底知れない力を与える。応援には不思議な力がありますよね」
百十四銀行卓球部を応援する森さんら

百十四銀行卓球部を応援する森さんら

森さんが“不思議な力”を目の当たりにしたのが、昨年11月に松山市で行われた実業団日本卓球リーグだ。創部60年以上の伝統を誇る百十四銀行卓球部は、強豪・豊田自動織機と対戦した。「2部から1部への昇格をかけた大切な最終ゲームでした」

高校時代、卓球の県大会で優勝した経験もある森さんはチームの大ファンで現在は特別顧問。行内から応援を募って駆けつけ、声の限り叫び続けた。すると……「ギリギリのところでボールが入るんです。逆に相手はわずか数センチ、台を越えてアウトになる。『応援の力ってやっぱりあるんだ』と実感しました」。どちらが勝ってもおかしくない白熱の一戦を制したのは百十四銀行。見事、リーグ1部昇格を果たした。
「応援はビジネスにも通ずると思うんです。取引先の企業や個人をあらゆる場面で応援し、支えていく。私たちが応援することで、お客さまの思いもよらない力を生み出したい。“応援の力”で、地域を元気にするという地方銀行最大の使命を果たしていきたいと思っています」

つながる“ウェルビーイング”

昨年発表した「長期ビジョン2030」。百十四グループの2030年のあるべき姿を描いたもので、『地域経済活性化』『人生100年時代への対応』『地域社会のデジタル化』など6項目を重要課題「マテリアリティ」として設定した。「これまでの中長期計画は“銀行がこうありたい”というものが中心だった。でも今回は全て“お客さま”が主語。“顧客目線”を徹底し、計画を練りました」

6つのマテリアリティの中でも特に力を入れたいと語るのが『多様な人材が活躍・成長できる環境の整備』、すなわち「行員のウェルビーイングです」
「銀行の日」の7月1日、来店客を迎える森さん

「銀行の日」の7月1日、来店客を迎える森さん

一見、“銀行がこうありたい”に向かう目標設定ではないかと感じるが……「いや、そうじゃない」と森さんは口調を強め、こう続ける。「行員が生き生きと働くのが百十四の何よりの原動力。行員のウェルビーイングなくして、お客さまに良い提案はできません。行員の働く環境をしっかり整え、お客さまを“応援”できる実力をつけてもらう。行員のウェルビーイングが、そのままお客さまや地域社会のウェルビーイングにつながるんです」

D&I(ダイバーシティ・多様性とインクルージョン・受容性)推進による職場づくり、行員の前向きなチャレンジを支援する研修や、成長部門への若手幹部登用、遠隔地勤務手当の支給、一度会社を辞めてもスムーズに復職できるキャリアリターン制度など、多様なやり方で多様な人材の育成を目指していく。

時代の流れに抗って

頭取就任と同時に「デジタルイノベーション部」を新設。文字通りデジタルを駆使してイノベーションを創出し、「データに基づいたセールスを生み出していきます」

バンキングアプリの活用でスマートフォンから24時間、振込や残高照会が可能になり、「忙しい中、時間をやりくりして来店しなくてもよくなります」というのもお客さまの利便性を突き詰めた結果だ。

また、あるキャンペーンを始める際、これまでは「全方位に向けて情報を発信していました」。だが、それではあまりにも非効率だった。「このキャンペーンはどのようなお客さまにマッチしていて、どのようなメリットが受けられるのか。過去に蓄積してきた顧客データを分析することで、企業や個人などそれぞれの特性に合ったマーケティング戦略が立てられる。必要な情報を、必要とするお客さまに、効率良く届けられるようになる。その他の様々な試みも全て“顧客目線”を貫いています」
時代の流れに抗い、ウェルビーイングな地域社会を創造していく

時代の流れに抗い、ウェルビーイングな地域社会を創造していく

神戸や大阪の支店勤務だった頃、店舗の再編に携わったことがある。「再編される店舗で取引があった経営者さまからは『大きな店舗に統合されると、私なんか相手にされなくなるのでは』『ずっと良くしてもらっていたのに……これを機にもう取引をやめようか』などと告げられました」。決して忘れることのない記憶だ。「合理化という銀行側の目線になっていないか。本当にお客さまの気持ちに寄り添えているのか……」。あの時抱いた思いは今でも常に心にあり、森さんを奮い立たせている。

自治体や様々な企業が「地域を元気にしよう」とあの手この手を繰り出すが、「そういう取り組みのあらゆるシーンに関わり、しかも一番近くでスピーディーに対応できる。それが私たちの一番の強みだと思っています」と森さんは自信を見せる。「人口が減り、働き手が減り、企業の事業所も減っています。『そんな時代だ』『仕方がない』と言うのは簡単です。でも、私は言いたくない。時代の流れに抗い、地域のみなさんと一緒にウェルビーイングな社会を創造していきたいですね」

篠原 正樹

森 匡史 | もり まさし

略歴
1966年 多度津町出身
1985年 丸亀高校 卒業
1989年 慶應義塾大学商学部 卒業
     株式会社百十四銀行 入行
2013年 明石支店長
2016年 融資部 部長補佐
2018年 秘書室長
2020年 営業戦略部長
2021年 執行役員経営企画部長
2022年 取締役常務執行役員
2024年 代表取締役頭取

株式会社百十四銀行

住所
香川県高松市亀井町5番地の1
代表電話番号
087-831-0114
設立
1878年11月1日
社員数
1963人(2024年3月31日現在)
事業内容
銀行業
総資産
5兆8,058億円
総預金
4兆7,652億円(譲渡性預金を含む)
貸出金
3兆4,331億円
資本金
373億円
店舗数
133店舗(本支店100、出張所22 他)
店舗外ATMコーナー140カ所
地図
URL
https://www.114bank.co.jp/
確認日
2024.08.15

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